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626・総本山の意志(???side)
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西の地方に存在する地下に隠された遺跡。そこにはダークエルフ族が過去の技術の恩恵を受けて暮らしていた。普通であれば暗く閉ざされた地下も魔導具のおかげで疑似太陽によって明るく照らされ、吹き抜けからは風が吹いてくる。水も魔導具によってなんの問題もなく使用する事が出来る為、生活においてはそれほど苦労する事もなかった。もちろん数に限りはあるし、メンテナンスと簡単な修復程度しか行う事は出来ない。魔石を取り換えれば動くものも存在するが、基本的にブラックボックスなのだ。だからこそ彼らは魔導具を大切に扱う。これらがなければ風も水も光も火もほとんど得られないからだ。故に尚更羨み妬み欲する。
本物の光を。いつ壊れ修復不可能になるかわからない魔導具に頼る事もなく、空の青。草の匂いを全身に感じながら生活する日々を。……そして、過去に失ってしまった栄光の歴史を再びこの手に。
そんな夢を見ながら暮らしている彼らの中でも過激派と呼ばれる派閥は戦う力を磨き、遺跡の中に眠っている強力な魔導具を研究し使用可能な状態まで修理してきた。各地に拠点を作り上げ、生活圏を大きく広げたのも全て彼らの功績であり、食糧不足に陥る事がない安定した生活も彼らの研究成果あっての事だった。
だからこそ自然と過激派はダークエルフ族全体を統べる程の勢力となり、彼ら無しでは種族の生活は成り立たないというとこまで来ていた。
そこから力を着々と蓄えられて準備も進めてきた結果、地上への侵攻を行った。当初は順調に盤面を動かしている……そう思えたものの、結果は芳しくない。敵の強さもさることながら、古代の技術を生み出して作られた複製体の反逆。兵器に頼ってきたせいで発生した練度不足。そして最大の誤算は裏切った複製体のせいで明かされた拠点から奪われた地図のせいだった。
ティリアースの中でも権力や欲にまみれた者達の中に入り込んで手に入れた拠点も次々と破壊されていってジリ貧に陥ってしまった。他国ではまだ問題ないが、ティリアースでは既に壊滅に近い状態で撤退を余儀なくされていた。各国の拠点も少しずつ制圧されて行く中。過激派の上層部は激しい怒りを抱いていた。
「まさかこのような事態になろうとは……」
過激派のトップ十人による話し合い。開口一番出された言葉は今の自分達がどれほど頭を悩ませているか簡潔に表したものだった。
「今はまだ民衆達を抑えているがそれもいつまでもつか」
地下では情報を得る術が極端に少ない。それ故に偶に自分達の都合が良いように戦況を掲示板に掲載し、住民達の不満の緩和を図っていた。まだ問題はない。が、いつ聖黒族がこの場所まで辿り着くかわからない……そんな不安を抱えているからこそ出てきた言葉だった。
「『オーロラフラッシュ』でティリアースを遠距離砲撃するのはどうだ?」
「あれは未だに照準が甘い。もう少し時間があれば……」
再び頭を抱えそうになる者達とは対照的に残った者達は気に求めていなかった。それは過激派の中でも研究に打ち込んでいた者達だ。
「安心しろ。既に算段はついている。よもやここまでくるとはな」
「……随分余裕そうだが、何か手はあるのか?」
待っていましたとばかりに目を輝かせて立ち上がった男は生気に溢れた表情をしている。お通夜ムードの周囲とは大違いだ。
「ティリアースの馬鹿共を焚き付けたお陰で良い時間稼ぎになった。あの複製体が聖黒族に接触するのも時間の問題だった。最悪、遺物の復元が終わらないまま攻められていた可能性があるからな」
「回りくどい言い方はやめろ。遺物など、散々復元してきただろうが」
若干苛立った様子で机を叩いた男を横目にわざとらしく肩をすくめて研究者は話を続ける。
「みんなも覚えているだろう? 私達が初めてあの遺物に出会った時の感動を。あれほどの力を手にすれば、我らは世界を統べることが出来るだろう」
「……まさか、あの兵器の復元に成功したのか?」
どよめきが広がる。それを待っていたと言うかのように宣言した男は優越感に溢れていた。
「そうだ。かつて龍と呼ばれる古代種がいたとされる神話の時代に作り出されたとされる古の兵器――『グランジェ』」
ごくりと唾を飲み込む音。元々彼らが過激派となったのは遺跡で見つけた数々の魔導具のお陰だった。生活に便利なものから戦いを有利に進める為のものまで様々だ。彼らがここまでの力をもつことができたのも遺跡から発掘された遺物あってこそだ。
「最終調整中で十全に力は出せないが、それも間も無く終わる。『グランジェ』が扱えるようになれば――」
「我がダークエルフ族の悲願達成は近い。そういうことだな」
頷くと同時に感嘆の声が上がる。何度も負けてきた彼らは今更失うものなどない。そう割り切れる程度には屈辱に塗れて生きてきた。
だからこそ信じている。最後には自分達が勝利を掴むのだと。最終決戦前に切り札は今ここに揃った。それは天に愛された種族である自分達を祝福しての事だと信じて疑わず。
本物の光を。いつ壊れ修復不可能になるかわからない魔導具に頼る事もなく、空の青。草の匂いを全身に感じながら生活する日々を。……そして、過去に失ってしまった栄光の歴史を再びこの手に。
そんな夢を見ながら暮らしている彼らの中でも過激派と呼ばれる派閥は戦う力を磨き、遺跡の中に眠っている強力な魔導具を研究し使用可能な状態まで修理してきた。各地に拠点を作り上げ、生活圏を大きく広げたのも全て彼らの功績であり、食糧不足に陥る事がない安定した生活も彼らの研究成果あっての事だった。
だからこそ自然と過激派はダークエルフ族全体を統べる程の勢力となり、彼ら無しでは種族の生活は成り立たないというとこまで来ていた。
そこから力を着々と蓄えられて準備も進めてきた結果、地上への侵攻を行った。当初は順調に盤面を動かしている……そう思えたものの、結果は芳しくない。敵の強さもさることながら、古代の技術を生み出して作られた複製体の反逆。兵器に頼ってきたせいで発生した練度不足。そして最大の誤算は裏切った複製体のせいで明かされた拠点から奪われた地図のせいだった。
ティリアースの中でも権力や欲にまみれた者達の中に入り込んで手に入れた拠点も次々と破壊されていってジリ貧に陥ってしまった。他国ではまだ問題ないが、ティリアースでは既に壊滅に近い状態で撤退を余儀なくされていた。各国の拠点も少しずつ制圧されて行く中。過激派の上層部は激しい怒りを抱いていた。
「まさかこのような事態になろうとは……」
過激派のトップ十人による話し合い。開口一番出された言葉は今の自分達がどれほど頭を悩ませているか簡潔に表したものだった。
「今はまだ民衆達を抑えているがそれもいつまでもつか」
地下では情報を得る術が極端に少ない。それ故に偶に自分達の都合が良いように戦況を掲示板に掲載し、住民達の不満の緩和を図っていた。まだ問題はない。が、いつ聖黒族がこの場所まで辿り着くかわからない……そんな不安を抱えているからこそ出てきた言葉だった。
「『オーロラフラッシュ』でティリアースを遠距離砲撃するのはどうだ?」
「あれは未だに照準が甘い。もう少し時間があれば……」
再び頭を抱えそうになる者達とは対照的に残った者達は気に求めていなかった。それは過激派の中でも研究に打ち込んでいた者達だ。
「安心しろ。既に算段はついている。よもやここまでくるとはな」
「……随分余裕そうだが、何か手はあるのか?」
待っていましたとばかりに目を輝かせて立ち上がった男は生気に溢れた表情をしている。お通夜ムードの周囲とは大違いだ。
「ティリアースの馬鹿共を焚き付けたお陰で良い時間稼ぎになった。あの複製体が聖黒族に接触するのも時間の問題だった。最悪、遺物の復元が終わらないまま攻められていた可能性があるからな」
「回りくどい言い方はやめろ。遺物など、散々復元してきただろうが」
若干苛立った様子で机を叩いた男を横目にわざとらしく肩をすくめて研究者は話を続ける。
「みんなも覚えているだろう? 私達が初めてあの遺物に出会った時の感動を。あれほどの力を手にすれば、我らは世界を統べることが出来るだろう」
「……まさか、あの兵器の復元に成功したのか?」
どよめきが広がる。それを待っていたと言うかのように宣言した男は優越感に溢れていた。
「そうだ。かつて龍と呼ばれる古代種がいたとされる神話の時代に作り出されたとされる古の兵器――『グランジェ』」
ごくりと唾を飲み込む音。元々彼らが過激派となったのは遺跡で見つけた数々の魔導具のお陰だった。生活に便利なものから戦いを有利に進める為のものまで様々だ。彼らがここまでの力をもつことができたのも遺跡から発掘された遺物あってこそだ。
「最終調整中で十全に力は出せないが、それも間も無く終わる。『グランジェ』が扱えるようになれば――」
「我がダークエルフ族の悲願達成は近い。そういうことだな」
頷くと同時に感嘆の声が上がる。何度も負けてきた彼らは今更失うものなどない。そう割り切れる程度には屈辱に塗れて生きてきた。
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