転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

文字の大きさ
626 / 676

626・総本山の意志(???side)

しおりを挟む
 西の地方に存在する地下に隠された遺跡。そこにはダークエルフ族が過去の技術の恩恵を受けて暮らしていた。普通であれば暗く閉ざされた地下も魔導具のおかげで疑似太陽によって明るく照らされ、吹き抜けからは風が吹いてくる。水も魔導具によってなんの問題もなく使用する事が出来る為、生活においてはそれほど苦労する事もなかった。もちろん数に限りはあるし、メンテナンスと簡単な修復程度しか行う事は出来ない。魔石を取り換えれば動くものも存在するが、基本的にブラックボックスなのだ。だからこそ彼らは魔導具を大切に扱う。これらがなければ風も水も光も火もほとんど得られないからだ。故に尚更羨み妬み欲する。

 本物の光を。いつ壊れ修復不可能になるかわからない魔導具に頼る事もなく、空の青。草の匂いを全身に感じながら生活する日々を。……そして、過去に失ってしまった栄光の歴史を再びこの手に。
 そんな夢を見ながら暮らしている彼らの中でも過激派と呼ばれる派閥は戦う力を磨き、遺跡の中に眠っている強力な魔導具を研究し使用可能な状態まで修理してきた。各地に拠点を作り上げ、生活圏を大きく広げたのも全て彼らの功績であり、食糧不足に陥る事がない安定した生活も彼らの研究成果あっての事だった。
 だからこそ自然と過激派はダークエルフ族全体を統べる程の勢力となり、彼ら無しでは種族の生活は成り立たないというとこまで来ていた。

 そこから力を着々と蓄えられて準備も進めてきた結果、地上への侵攻を行った。当初は順調に盤面を動かしている……そう思えたものの、結果は芳しくない。敵の強さもさることながら、古代の技術を生み出して作られた複製体の反逆。兵器に頼ってきたせいで発生した練度不足。そして最大の誤算は裏切った複製体のせいで明かされた拠点から奪われた地図のせいだった。

 ティリアースの中でも権力や欲にまみれた者達の中に入り込んで手に入れた拠点も次々と破壊されていってジリ貧に陥ってしまった。他国ではまだ問題ないが、ティリアースでは既に壊滅に近い状態で撤退を余儀なくされていた。各国の拠点も少しずつ制圧されて行く中。過激派の上層部は激しい怒りを抱いていた。

「まさかこのような事態になろうとは……」

 過激派のトップ十人による話し合い。開口一番出された言葉は今の自分達がどれほど頭を悩ませているか簡潔に表したものだった。

「今はまだ民衆達を抑えているがそれもいつまでもつか」

 地下では情報を得る術が極端に少ない。それ故に偶に自分達の都合が良いように戦況を掲示板に掲載し、住民達の不満の緩和を図っていた。まだ問題はない。が、いつ聖黒族がこの場所まで辿り着くかわからない……そんな不安を抱えているからこそ出てきた言葉だった。

「『オーロラフラッシュ』でティリアースを遠距離砲撃するのはどうだ?」
「あれは未だに照準が甘い。もう少し時間があれば……」

 再び頭を抱えそうになる者達とは対照的に残った者達は気に求めていなかった。それは過激派の中でも研究に打ち込んでいた者達だ。

「安心しろ。既に算段はついている。よもやここまでくるとはな」
「……随分余裕そうだが、何か手はあるのか?」

 待っていましたとばかりに目を輝かせて立ち上がった男は生気に溢れた表情をしている。お通夜ムードの周囲とは大違いだ。

「ティリアースの馬鹿共を焚き付けたお陰で良い時間稼ぎになった。あの複製体が聖黒族に接触するのも時間の問題だった。最悪、遺物の復元が終わらないまま攻められていた可能性があるからな」
「回りくどい言い方はやめろ。遺物など、散々復元してきただろうが」

 若干苛立った様子で机を叩いた男を横目にわざとらしく肩をすくめて研究者は話を続ける。

「みんなも覚えているだろう? 私達が初めてあの遺物に出会った時の感動を。あれほどの力を手にすれば、我らは世界を統べることが出来るだろう」
「……まさか、あの兵器の復元に成功したのか?」

 どよめきが広がる。それを待っていたと言うかのように宣言した男は優越感に溢れていた。

「そうだ。かつて龍と呼ばれる古代種がいたとされる神話の時代に作り出されたとされる古の兵器――『グランジェ』」

 ごくりと唾を飲み込む音。元々彼らが過激派となったのは遺跡で見つけた数々の魔導具のお陰だった。生活に便利なものから戦いを有利に進める為のものまで様々だ。彼らがここまでの力をもつことができたのも遺跡から発掘された遺物あってこそだ。

「最終調整中で十全に力は出せないが、それも間も無く終わる。『グランジェ』が扱えるようになれば――」
「我がダークエルフ族の悲願達成は近い。そういうことだな」

 頷くと同時に感嘆の声が上がる。何度も負けてきた彼らは今更失うものなどない。そう割り切れる程度には屈辱に塗れて生きてきた。
 だからこそ信じている。最後には自分達が勝利を掴むのだと。最終決戦前に切り札は今ここに揃った。それは天に愛された種族である自分達を祝福しての事だと信じて疑わず。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...