転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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669・表彰前の謁見

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 リティアの町を見て回る事に決めた私達は時間を掛けて城へと向かう。やはりアルファスとは違って漁師なんていないし、潮風の匂いもしない。道は広いし、行き交う人々の数も多い。私達の町とは何もかもが違うこの都市を十分に満喫して城の門の方に辿り着く。フードを取って門に近づくと、魔人族の番兵がビシッと敬礼をしてくれた。

「エールティア様、ファリス様とお連れの皆様。お待ちしておりました。どうぞお通りください」
「ありがとう。お仕事ご苦労様」

 通りすがらにしっかりと語らいてお疲れ様、とねぎらいの言葉をかけつついよいよ城の内部へと入っていくのだった。

 ――

 相変わらず城の中は全体的に城を基調として明るくまとまっていて、調度品も落ち着きを見せている。
 私達が来訪した事が伝わっているのだろう。魔人族の男性が一人駆け足でこちらに近寄ってきた。

「ようこそお越しくださいました。女王陛下もお二方がいらっしゃるのを楽しみにお待ちしております……のですが……」
「まさか事件でも起こったの?」

 若干言いにくそうにしている男性にファリスは何かあったのではないかと勘ぐっているようだ。だけど彼の態度から察するに違うかもしれない。

「いえ、事件というよりもお二人に褒賞を授けるだけでは面白くないからと大規模な式典をする事になりまして……。今から一月後のビーリラにて盛大な催し物をされるとのことです。こちらも今は準備に追われていまして、女王陛下も多忙を極めている状態なのです」

 冷や汗を流しながら説明してくれた彼にファリスは少し憤っているようだ。私としてはやっぱりな……と思った。後々の事を考えるとダークエルフ族との戦いが終わった事を大々的に宣伝した方が良い。それには私達がいる時に限るだろう。何度も招待するような面倒な事を抑えるやり方もあの御方らしい。出来れば先に知らせて欲しかったけれど。

「普通もっと早く伝えるべきことではないかしら?」
「申し訳ございません。ワイバーンを使って追加の手紙を届けたのですが、その頃には既に旅立ってしまったと……」

 確かに手紙を貰ってすぐに鳥車を使って行ったっけ。多分入れ違いになったのだろう。こういうところに不便を感じるけれど、こればっかりは仕方がない。何を言っても陛下の決定には逆らえないのだから。

「……わかりました。それで、陛下への御目通りは叶うのかしら?」
「御二方が望むのならいつでも通せとお言葉をいただいております。必要であれば今すぐにでもご案内いたしますが、如何されますか?」

 予想外の答えが返ってきて私も一瞬沈黙してしまう。てっきりしばらく会うことは出来ないと言われるかと思っていただけにどうしようか悩む。
 ファリスの方に視線を向けてもどうするか決めていないようで、少し迷っているようだった。普段なら私に判断を委ねてきそうなものだけど、それだけ彼女も陛下にお会いしたいということかな。

「女王陛下もお忙しい身ですし、しばらくはこのリティアで身体を休めようと思います。また半月後に改めてお伺い致しますと陛下に伝えてもらってもよろしい?」
「かしこまりました。必ずお伝え致します」

 別に急がなくていい。それに今はお父様もここの別邸を使って王城に通っているし、久しぶりにお話をするのも悪くない。ジュールには悪いけれど、偶にはお父様とゆっくり過ごしたいという気持ちもあるしね。

「……わたしも、同じようにしてもらっていい?」
「勿論です。女王陛下はファリス様の事も気にかけておられますので、日時を指定して頂ければ長く時間が取れるとお喜びになると思います」

 やけに丁寧な話し方をする彼は緩やかな動きで上半身を倒して片手を後ろに回して残った方を胸にそっと添える。恐ろしいほどに自然な動きだ。ここまでされてはこちらも悪い気はしない。元々戦後処理で忙しいところだろうし、ほとんど会う時間は取れないかも……って思っていたしね。
 ひとまず半月後に御目通りが叶うのだから今は引いておこう。それまでの間、ここの生活を満喫するのも悪くない。ちょっとしたご褒美みたいなものだと考えればいい。

「あの……私達はどうすれば……?」

 城を出て一度リティアにある邸宅に行こうと決めた私にククオルは不安そうな顔をしていた。そういえば彼女達もいたっけ。
 すぐさまと思っていたからあまりお金を持ってきていないのだろう。……全く、そんな心配する必要ないのに。

「ファリスの警護もあるのでしょう。しばらくは同じ場所で暮らしてもらうけれど、何か問題ある?」

 ぶつけた疑問にククオルは何の迷いもなく頷いていた。先程までの不安げな表情から一変して嬉しそうな顔を浮かべてオルドや雪風を見ていた。

「ティアちゃん……ありがとう」
「当たり前のことじゃない。私達は友達なのだから。それに、聖黒族はみんな家族みたいなもの。でしょう?」

 ウインクすると一層喜んで飛び跳ねるファリスに苦笑いが浮かんだ。ファリスがどう思っているか知らないけれど、私にとっては家族であり、貴重な過去とのつながりを感じる存在なのだ。多少便宜を図っても悪くはない。
 それに……ここでじゃあまた後で! とか言えるほど薄情ではないつもりだしね。
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