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672・女王陛下との面談
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お父様と話し合ってから時間が過ぎて半月。今日は女王陛下との謁見日だ。ファリスや護衛のみんなと一緒に登城すると、そこには私達に戦勝祝いの式典を行うと伝えてくれた魔人族の男性がいた。
「ようこそお越しくださいました」
丁寧な物腰は執事長のそれと引けも取らない。他にも後ろに二人ほど従者を引き連れているようで、半月前とはかなり違っていた。
多分私達が登城する動きを誰かに確認させていたのだろう。そうじゃないとこの迅速な行動に説明がつかない。それかこちらの隠密の誰かが知らせたとかね。
「出迎えご苦労様。案内してくださる?」
「もちろんです。こちらへどうぞ」
前とは違ってきちんと城に行く事を伝えているからかそのまま謁見の間へと案内してくれた。久しぶりに登る階段に少しずつ緊張が高まっていく。何しろ女王陛下とお会いするのは年末年始ぐらいしかない。こんな風に呼び出される事だって片手で数える程度しかない。
柄にもなく緊張するのも仕方ない……と思う。
謁見の間は扉はなくて入ってくる人からは中に誰がいるか丸わかりになっている。まるで何か出来るものならやってみろと言っているかのようだ。
「ルティエル女王陛下。エールティア・リシュファス。只今参りました」
「……わ、わたし――ファリスも参上致しました」
「エールティア、ファリス。二人ともよく来てくれた。ガンドルグ王との会合以来だな。さあ、面を上げてもっと顔をよく見せて欲しい」
近くまで来てこちらから話しかけ、スカートの端を持って頭を下げる。緊張しているファリスも私の見様見真似で同じ事をしてくれていた。
陛下は優しい声音で私達の頭を上げるように促してくれる。そのまま姿勢を正すと、凛とした女王陛下が柔らかい笑みを湛えていた。
雪風、オルド、ククオルは遥か後方。出入り口付近に待機している(と思う)からこの近い空間に三人だけのように錯覚しそうになる。
「二人の活躍は聞いている。片やダークエルフ族の本拠地に乗り込み、古の兵器を破壊し、中枢を担っている者を倒す事に成功。片や古くからの友人であるシルケットを助け、古の巨人の侵攻を阻止し、打ち砕いた。……ともに二人がいなければなし得なかった成果だ」
まるで自分のことのように嬉しそうに語る陛下のお言葉に、自分のしたことが途端に誇らしくなってくる。今までの努力が報われた気分にすらなってしまう。
「ありがとうございます。ですが、わたし一人では出来ませんでした。リシュファス家の兵士や彼らと一緒に戦ってくれた人達。オルドやワーゼル、ククオルにユヒト……共についてきてくれた人達のお陰でなし得た成果です」
ファリスの強く訴えかける言葉に陛下はきょとんとした表情で眺め、すぐに面白いものを見たかのように笑い出した。
「くすくす。こういう時は大抵己の戦果を誇るものだがな。まさかエールティアも同じ事は言うまい?」
楽しげに視線を移した女王陛下に思わず言葉が詰まってしまった。私の場合ファリスと違って分担はしたけれど協力はしなかった。正直彼女のようには言えないのが本音だ。
少し迷った結果――
「……私はファリスとは違います。戦いも互いに助け合うものではなく、役割分担するような形でした。互いに自らの役割をこなした結果、古の兵器を落とし、破壊する事が出来ました。確かに大部分は私が引き受けましたが、彼らも己の持ちうる最大限の力を捧げてくれたと信じております」
「ふふふ、なるほど」
楽しそうに笑ってくれている陛下はうんうんと頷いていた。
「実に面白い。貴公らを試すような真似をして済まぬ。だが余は知っておきたかったのだよ。やがて余の跡を継ぐであろう者が何を考え、どう行動したのかをな」
ちらりと私の方を見る陛下の顔はにんまりと笑っている。どうやらどんな答えを返してくれるか気になっていただけみたいだ。心臓に悪い。
「二人とも、改めて礼を言おう。ティリアースを含めたあらゆる国々がこうして存在し続けられること。それはひとえに言ってそなた達の活躍があってこそだ。よくやってくれた」
女王陛下の穏やかな声音が胸に沁みいってくるように感じる。ファリスは嬉しそうだったり悲しそうだったりで複雑にしている。
「ありがとうございます」
「ふむ……不服か?」
「いいえ、ただ、ここにいない二人にも聞かせてあげたかった言葉でしたので」
それは多分、ワーゼルとユヒトと呼ばれている二人の事だろう。私はよく知らないけれど、ファリスにとっては気に留める程大切な存在に昇格したに違いない。仲間と共に喜びを分かちあいたい……そんな感情が湧き上がる程、彼女は成長していた。
「ふふ、ならばそなたが余の言葉を伝えると良い。エールティア、ファリスの両名に仕え、共に戦った者達の名を心に深く刻み込もう。まことに大儀であった、と」
私を含めてくれたのはここでファリスだけにというのもおかしい事になるからだろう。図らずも誉め言葉を戴いた訳だけど……帰ったらヒューとジュールにも伝えてあげよう。きっと喜んで……くれると……いいな……。
「ようこそお越しくださいました」
丁寧な物腰は執事長のそれと引けも取らない。他にも後ろに二人ほど従者を引き連れているようで、半月前とはかなり違っていた。
多分私達が登城する動きを誰かに確認させていたのだろう。そうじゃないとこの迅速な行動に説明がつかない。それかこちらの隠密の誰かが知らせたとかね。
「出迎えご苦労様。案内してくださる?」
「もちろんです。こちらへどうぞ」
前とは違ってきちんと城に行く事を伝えているからかそのまま謁見の間へと案内してくれた。久しぶりに登る階段に少しずつ緊張が高まっていく。何しろ女王陛下とお会いするのは年末年始ぐらいしかない。こんな風に呼び出される事だって片手で数える程度しかない。
柄にもなく緊張するのも仕方ない……と思う。
謁見の間は扉はなくて入ってくる人からは中に誰がいるか丸わかりになっている。まるで何か出来るものならやってみろと言っているかのようだ。
「ルティエル女王陛下。エールティア・リシュファス。只今参りました」
「……わ、わたし――ファリスも参上致しました」
「エールティア、ファリス。二人ともよく来てくれた。ガンドルグ王との会合以来だな。さあ、面を上げてもっと顔をよく見せて欲しい」
近くまで来てこちらから話しかけ、スカートの端を持って頭を下げる。緊張しているファリスも私の見様見真似で同じ事をしてくれていた。
陛下は優しい声音で私達の頭を上げるように促してくれる。そのまま姿勢を正すと、凛とした女王陛下が柔らかい笑みを湛えていた。
雪風、オルド、ククオルは遥か後方。出入り口付近に待機している(と思う)からこの近い空間に三人だけのように錯覚しそうになる。
「二人の活躍は聞いている。片やダークエルフ族の本拠地に乗り込み、古の兵器を破壊し、中枢を担っている者を倒す事に成功。片や古くからの友人であるシルケットを助け、古の巨人の侵攻を阻止し、打ち砕いた。……ともに二人がいなければなし得なかった成果だ」
まるで自分のことのように嬉しそうに語る陛下のお言葉に、自分のしたことが途端に誇らしくなってくる。今までの努力が報われた気分にすらなってしまう。
「ありがとうございます。ですが、わたし一人では出来ませんでした。リシュファス家の兵士や彼らと一緒に戦ってくれた人達。オルドやワーゼル、ククオルにユヒト……共についてきてくれた人達のお陰でなし得た成果です」
ファリスの強く訴えかける言葉に陛下はきょとんとした表情で眺め、すぐに面白いものを見たかのように笑い出した。
「くすくす。こういう時は大抵己の戦果を誇るものだがな。まさかエールティアも同じ事は言うまい?」
楽しげに視線を移した女王陛下に思わず言葉が詰まってしまった。私の場合ファリスと違って分担はしたけれど協力はしなかった。正直彼女のようには言えないのが本音だ。
少し迷った結果――
「……私はファリスとは違います。戦いも互いに助け合うものではなく、役割分担するような形でした。互いに自らの役割をこなした結果、古の兵器を落とし、破壊する事が出来ました。確かに大部分は私が引き受けましたが、彼らも己の持ちうる最大限の力を捧げてくれたと信じております」
「ふふふ、なるほど」
楽しそうに笑ってくれている陛下はうんうんと頷いていた。
「実に面白い。貴公らを試すような真似をして済まぬ。だが余は知っておきたかったのだよ。やがて余の跡を継ぐであろう者が何を考え、どう行動したのかをな」
ちらりと私の方を見る陛下の顔はにんまりと笑っている。どうやらどんな答えを返してくれるか気になっていただけみたいだ。心臓に悪い。
「二人とも、改めて礼を言おう。ティリアースを含めたあらゆる国々がこうして存在し続けられること。それはひとえに言ってそなた達の活躍があってこそだ。よくやってくれた」
女王陛下の穏やかな声音が胸に沁みいってくるように感じる。ファリスは嬉しそうだったり悲しそうだったりで複雑にしている。
「ありがとうございます」
「ふむ……不服か?」
「いいえ、ただ、ここにいない二人にも聞かせてあげたかった言葉でしたので」
それは多分、ワーゼルとユヒトと呼ばれている二人の事だろう。私はよく知らないけれど、ファリスにとっては気に留める程大切な存在に昇格したに違いない。仲間と共に喜びを分かちあいたい……そんな感情が湧き上がる程、彼女は成長していた。
「ふふ、ならばそなたが余の言葉を伝えると良い。エールティア、ファリスの両名に仕え、共に戦った者達の名を心に深く刻み込もう。まことに大儀であった、と」
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