4 / 17
第4話:告白の代償
しおりを挟む
佐藤涼太は、桜の木の下で、美咲の笑顔を前に言葉を詰まらせていた。2014年の大学キャンパス、花見の夜。告白の言葉が喉まで出かかった瞬間、目の前にあの半透明のモニターが現れた。
「選択してください。この過去に留まる? 現在に戻る?」
カウントダウンが始まる。10、9、8…。
「ふざけんな! 今、邪魔すんなって!」
涼太の叫びは、夜風に混じって桜の花びらと一緒に散る。美咲がキョトンとした顔で振り返る。
「涼太? どうしたの? 急に叫んで…」
「いや、なんでもない! ちょっと、えっと…」
焦る涼太の視線は、モニターと美咲の間を行き来する。5、4、3…。このまま過去に留まれば、告白できるかもしれない。あの時、ビビって何も言えなかった自分を変えられる。でも、現在に戻ったら? 2045年の自分――独身で何か後悔を抱える49歳の佐藤涼太に、すぐ戻ってしまう。
「涼太、大丈夫? 顔、めっちゃ真剣なんだけど」
美咲の声が柔らかく響く。その笑顔が、涼太の心を締め付ける。あの時、この笑顔を守れなかった。もう一度、チャンスが欲しい。
2、1…。
「くそっ!」
涼太は勢いで「この過去に留まる」をタップした。モニターがパッと消え、電子音が耳元で小さく響く。桜の花びらがヒラヒラと落ち、夜の静けさが戻ってくる。
「…涼太? 何、独り言?」
美咲が心配そうに覗き込む。涼太はハッとして、深呼吸した。
「美咲、俺…ずっと言えなかったことがある」
心臓がバクバクする。10年前、言えなかった言葉。今、ここで。
「俺、ずっとお前のことが好きだった」
一瞬、時間が止まったように感じた。美咲の目が大きく見開かれ、桜の木の下で彼女の頬がほんのり赤くなる。
「え…涼太、急に何!? って、うそ、ほんと?」
美咲が照れ笑いを浮かべ、髪をいじる。涼太はゴクリと唾を飲み込んだ。やった。言えた。10年間、胸に刺さってたトゲが抜けたみたいだ。
「ほんとだよ。ずっと…お前と一緒にいたかった」
美咲は少し黙って、地面に落ちた花びらを見つめる。それから、ゆっくり顔を上げた。
「涼太、ありがと。…私も、実はさ、涼太のこと、いいなって思ってた時期、あったよ」
「え、マジで!?」
「うそ、ちょっと恥ずかしいから、そういう言い方やめてよ!」
美咲が笑いながら涼太の肩を軽く叩く。二人の間に、初めての温かい空気が流れる。涼太は胸が熱くなり、思わず笑顔になった。この瞬間、変えられた。過去を変えられたんだ!
だが、その時、遠くで亮平の声が響いた。
「おーい、涼太! 美咲! いつまでイチャついてんだよ、戻ってこい!」
仲間たちの笑い声が聞こえる。涼太と美咲は顔を見合わせて笑い、シートに戻る。花見は盛り上がり、夜が更けていく。涼太は心から思う――これでいい。これで、人生変わるよな?
翌朝、涼太は大学の寮のベッドで目を覚ました。窓から差し込む朝日が、懐かしい匂いと一緒に部屋を満たしている。携帯を見ると、2015年4月2日。花見の翌日だ。
「…ほんとに過去にいるんだな」
昨夜の告白が頭をよぎる。美咲の笑顔、仲間たちの冷やかし。あれが現実なら、今日はどうなる? 美咲と話して、付き合うことになるのか?
携帯にメッセージが入っている。亮平からだ。
「よお、涼太! 昨夜の告白、マジすげえな! 美咲、朝からなんかソワソワしてたぞ。昼、サークル室で話すってよ!」
「マジか…!」
涼太は飛び起きる。急いでシャツを着替え、サークル室へ向かった。キャンパスは桜が満開で、学生たちの笑い声が響く。心が軽い。こんな気持ち、29歳の自分じゃ味わえなかった。
サークル室に着くと、美咲が窓際で本を読んでいた。涼太を見るなり、ちょっと照れた笑顔を向ける。
「涼太、来た。…昨夜のこと、覚えてるよね?」
「当たり前だろ。忘れるわけない」
二人が照れ笑いする中、突然、部屋の空気が揺れた。まただ。あのモニターが、目の前に現れた。
「警告:過去の変更が確認されました。選択してください。この過去を確定する? 現在に戻る?」
「何!? 警告!?」
涼太の声に、美咲が驚いて振り返る。
「涼太? どうしたの、また変な感じ?」
モニターのカウントダウンが始まる。10、9、8…。涼太の頭が混乱する。過去を確定? ってことは、この告白が新しい現実になるってこと? でも、2045年の自分はどうなる? あの「後悔してる」49歳の涼太は、消えるのか?
5、4、3…。
「待てよ、ちょっと考えさせてくれ!」
モニターは無情にもカウントを続ける。涼太の選択は、過去と未来をどう変えるのか――。
「選択してください。この過去に留まる? 現在に戻る?」
カウントダウンが始まる。10、9、8…。
「ふざけんな! 今、邪魔すんなって!」
涼太の叫びは、夜風に混じって桜の花びらと一緒に散る。美咲がキョトンとした顔で振り返る。
「涼太? どうしたの? 急に叫んで…」
「いや、なんでもない! ちょっと、えっと…」
焦る涼太の視線は、モニターと美咲の間を行き来する。5、4、3…。このまま過去に留まれば、告白できるかもしれない。あの時、ビビって何も言えなかった自分を変えられる。でも、現在に戻ったら? 2045年の自分――独身で何か後悔を抱える49歳の佐藤涼太に、すぐ戻ってしまう。
「涼太、大丈夫? 顔、めっちゃ真剣なんだけど」
美咲の声が柔らかく響く。その笑顔が、涼太の心を締め付ける。あの時、この笑顔を守れなかった。もう一度、チャンスが欲しい。
2、1…。
「くそっ!」
涼太は勢いで「この過去に留まる」をタップした。モニターがパッと消え、電子音が耳元で小さく響く。桜の花びらがヒラヒラと落ち、夜の静けさが戻ってくる。
「…涼太? 何、独り言?」
美咲が心配そうに覗き込む。涼太はハッとして、深呼吸した。
「美咲、俺…ずっと言えなかったことがある」
心臓がバクバクする。10年前、言えなかった言葉。今、ここで。
「俺、ずっとお前のことが好きだった」
一瞬、時間が止まったように感じた。美咲の目が大きく見開かれ、桜の木の下で彼女の頬がほんのり赤くなる。
「え…涼太、急に何!? って、うそ、ほんと?」
美咲が照れ笑いを浮かべ、髪をいじる。涼太はゴクリと唾を飲み込んだ。やった。言えた。10年間、胸に刺さってたトゲが抜けたみたいだ。
「ほんとだよ。ずっと…お前と一緒にいたかった」
美咲は少し黙って、地面に落ちた花びらを見つめる。それから、ゆっくり顔を上げた。
「涼太、ありがと。…私も、実はさ、涼太のこと、いいなって思ってた時期、あったよ」
「え、マジで!?」
「うそ、ちょっと恥ずかしいから、そういう言い方やめてよ!」
美咲が笑いながら涼太の肩を軽く叩く。二人の間に、初めての温かい空気が流れる。涼太は胸が熱くなり、思わず笑顔になった。この瞬間、変えられた。過去を変えられたんだ!
だが、その時、遠くで亮平の声が響いた。
「おーい、涼太! 美咲! いつまでイチャついてんだよ、戻ってこい!」
仲間たちの笑い声が聞こえる。涼太と美咲は顔を見合わせて笑い、シートに戻る。花見は盛り上がり、夜が更けていく。涼太は心から思う――これでいい。これで、人生変わるよな?
翌朝、涼太は大学の寮のベッドで目を覚ました。窓から差し込む朝日が、懐かしい匂いと一緒に部屋を満たしている。携帯を見ると、2015年4月2日。花見の翌日だ。
「…ほんとに過去にいるんだな」
昨夜の告白が頭をよぎる。美咲の笑顔、仲間たちの冷やかし。あれが現実なら、今日はどうなる? 美咲と話して、付き合うことになるのか?
携帯にメッセージが入っている。亮平からだ。
「よお、涼太! 昨夜の告白、マジすげえな! 美咲、朝からなんかソワソワしてたぞ。昼、サークル室で話すってよ!」
「マジか…!」
涼太は飛び起きる。急いでシャツを着替え、サークル室へ向かった。キャンパスは桜が満開で、学生たちの笑い声が響く。心が軽い。こんな気持ち、29歳の自分じゃ味わえなかった。
サークル室に着くと、美咲が窓際で本を読んでいた。涼太を見るなり、ちょっと照れた笑顔を向ける。
「涼太、来た。…昨夜のこと、覚えてるよね?」
「当たり前だろ。忘れるわけない」
二人が照れ笑いする中、突然、部屋の空気が揺れた。まただ。あのモニターが、目の前に現れた。
「警告:過去の変更が確認されました。選択してください。この過去を確定する? 現在に戻る?」
「何!? 警告!?」
涼太の声に、美咲が驚いて振り返る。
「涼太? どうしたの、また変な感じ?」
モニターのカウントダウンが始まる。10、9、8…。涼太の頭が混乱する。過去を確定? ってことは、この告白が新しい現実になるってこと? でも、2045年の自分はどうなる? あの「後悔してる」49歳の涼太は、消えるのか?
5、4、3…。
「待てよ、ちょっと考えさせてくれ!」
モニターは無情にもカウントを続ける。涼太の選択は、過去と未来をどう変えるのか――。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる