君と跳んだ未来の約束

らいむ

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第6話:未来の断片

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佐藤涼太は、2015年の大学寮の部屋で、透明なカードデバイスを握りしめていた。窓から桜の花びらが舞い込み、机の上のデバイスが放つホログラムの光が揺れている。画面には、冷たく光る二つの選択肢。

「未来を確認する」「この過去を続ける」

カウントダウンはない。急かされない分、逆に重圧を感じる。涼太の頭には、昼間の幻覚――スーツ姿で疲れた顔の29歳の自分がちらつく。あれは警告なのか? それとも、ただの気のせいか?

「未来を確認したら…2045年の俺がどうなってるか、わかるんだよな」

美咲との幸せな日々が始まったばかりだ。サークルでの笑顔、カフェでの他愛ない会話、手を繋いだ夜の桜並木。あの後悔だらけの29歳の人生を変えられた。でも、未来を見たら、この幸せが壊れるかもしれない。

涼太はデバイスを握る手に力を込めた。知りたい。知らなきゃ、前に進めない。

「…よし」

震える指で、「未来を確認する」をタップした。

瞬間、デバイスから眩い光が放たれ、部屋が白く染まる。だが、身体が浮く感覚はない。代わりに、ホログラムが広がり、まるで映画のような映像が目の前に浮かんだ。


そこは2045年の東京。新宿の高層ビル街、ガラス張りのマンション。涼太が第2話で訪れた、49歳の自分の部屋だ。だが、微妙に違う。机の上に花瓶があり、色とりどりの花が飾られている。壁には、笑顔の美咲と涼太の写真。結婚指輪が写っている。

「え…俺、結婚してる!? 美咲と!?」

映像の中で、49歳の佐藤涼太が部屋に入ってくる。スーツ姿だが、以前見た疲れた顔じゃない。穏やかな笑みを浮かべ、誰かに話しかけている。

「美咲、今日のディナー、何がいい?」

美咲の声が響く。少し年を取った、落ち着いた声。

「涼太、また外食? たまには私が作るよ。ほら、昔みたいにカレーでいいよね?」

二人の笑い声が部屋に響く。涼太は胸が熱くなる。美咲と結婚し、幸せそうな未来。過去の告白が、こんな未来を作ったんだ。

だが、映像が突然揺れた。画面がノイズで乱れ、別のシーンに切り替わる。そこは同じ2045年、だが、暗い路地裏だ。49歳の涼太が、ボロボロのコートを着て、うつむきながら歩いている。手には何もない。独身のデータキュレーターの部屋も、美咲の姿もない。

「…なんだ、これ?」

映像の涼太が呟く。「あの時、違う選択をしていれば…」

ノイズが強くなり、映像が途切れる。デバイスから低い警告音が響き、ホログラムが消えた。

「待て、なんだよ! どっちが本当の未来だ!?」

涼太はデバイスを振ったが、反応はない。部屋は静かで、桜の花びらだけが床に落ちている。頭が混乱する。美咲と幸せな未来と、孤独な未来。両方が2045年の可能性として見えた。過去を確定したのに、なぜ二つの未来が?

その時、ドアがノックされた。

「涼太、いる? ちょっと話したいんだけど」

美咲の声だ。涼太はハッとしてデバイスをポケットに突っ込み、ドアを開けた。美咲は少し緊張した顔で立っている。

「な、なんだよ、急に」

「うん、実は…さっき、亮平から変な話聞いたの。涼太、最近、なんか隠してる? 亮平がさ、涼太が一人でブツブツ言ってるの見たって」

涼太の背筋が冷える。亮平に、モニターやデバイスのことがバレてる? いや、でも、あれは自分にしか見えないはず…。

「いや、なんでもないって! ただ、ちょっと考え事してただけ」

美咲は疑うような目で涼太を見るが、すぐに笑顔に戻る。

「そっか。ならいいけど。…ねえ、涼太。私、ほんと嬉しいよ。こうやって、涼太と一緒にいられるの」

その言葉に、涼太の胸が締め付けられる。美咲の笑顔を守りたい。でも、さっきの映像――二つの未来が頭から離れない。

夜、寮の部屋に戻った涼太は、デバイスを手に取った。もう一度、未来を見たい。でも、ポケットから取り出した瞬間、デバイスが光り、モニターが再出現した。

「警告:未来の変動が不安定です。選択してください。過去を再修正する? 現在に戻る?」

「不安定!? 何だよ、それ!」

カウントダウンが始まる。10、9、8…。涼太の心は揺れる。美咲との幸せな未来は本物か? それとも、孤独な未来が待っているのか?
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