奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
40 / 49

時忘れのリゼット

しおりを挟む

 俺とラテナは、魔導具店で買い物を済ませて魔術街の通りをあるいていた。
 貴族の服とお金になりそうなものを質屋に入れてつくったお金で、なんとか買えたものがある。
 
 杖ではない。
 それは指輪だ。

「ふふ、買ってしまったよ、フクロウくん」
「高い買い物でしたねえ。そんなちっちゃいのに……騙されてはいませんか?」

 こたびの購入品であるこの神秘の指輪は、魔法の杖と同じ働きを期待できる新しい魔導具である。
 魔術師の知恵とアライアンスの鋼を鍛える鍛治技術があったから、指輪のサイズで使用に耐えるだけの魔術触媒をつくれたらしい。

 魔術街の空にマジックリングのはまった手を掲げる。
 銀色の輝きをはなつ指輪に、真っ赤な宝石がはまっており、匠の技で形作られた竜が、赤い宝石をくわえていた。

「杖を握るより、いろいろやれそうだ」
「ふくふく、それもそうですね。さては、大幅なパワーアップしているのでは?!」

 ラテナとはしゃいでると、ふと彼女は「あ!」と声をあげた。
 視線の先をたどれば理由はすぐに分かった。

 足を止めて前を見る。
 俺は目を見張った。
 それは複数の感情からくる衝撃だ。

 茶色い短髪、紅い瞳。
 通りかかった男たちをふりむかせる愛らしい顔立ちは、見間違えるはずもない。

「リゼット……」

 思わず口にだしてしまい、ラテナが驚いた顔で俺のほうを見てくる。さながら「何声に出しちゃってんの!」と言いたげだ。

 わずか数メートル先の、扉からタッタッタと軽快な足取りで出てくる彼女は、名前を呼ばれたことで、こちらへふりむいて来た。

「おやおや、どうしたんだい、可愛い少年」

 俺より背が高い彼女は少し膝をおって、紅い目をぱちくりさせた。優しげな笑顔で微笑んでくる。あの時となんら変わっていない。

「えーと……」

 言葉につまり、俺は彼女の爪先から顔までをながめた。

「……前見たときと変わらないなぁって思って」

 俺はあはは、と愛想笑いしながら言ってみた。

 リゼットの姿は変わっていなかった。
 変わっていなかった。

 これは成熟した大人の世辞や挨拶の決まり文句ではなく″何も変わっていなかった″のだ。

 あの頃から2年半経ったのだから、少しくらい変化を感じられてもいいはずなのに。

 困惑していると、リゼットは「ああ…」となにかを察したように苦笑いした。

「あなたも″時忘れ″を見に来たクチね!」
「え? 時忘れ?」

 リゼットは腰に手を当ててニコリと微笑むと、ラテナのほうを向いた。

「私の時間は止まってしまったのよ。同い年の女の子たちはみんな、あなたのお姉さんくらいの姿になってるのに、私だけが12歳のまま」

 ラテナと俺は目を見合わせる。
 
 そんな奇病にリゼットは掛かっていたのか。

「すこしずつ噂が広がってね、今じゃ珍しがってたまに君みたいな以前どこかで会った誰かさんが会いにくるんだよ」

 リゼットは俺の鼻頭を指でかるく押した。
 
 腰を曲げてくるので、緩い服の胸元が実によく見えてしまう。
 俺はちょっと恥ずかしくなりながら、チラチラと視線を走らせる。

「んっん! さあ、ヘンリー、もうこれでいいね? 行くよ」

 ラテナは俺の頭をぺちんっと引っ叩き、手をひっばってくる。

 リゼットは「からかっただけなのに♪」と相変わらずいたずらな笑みを浮かべて、手をピラピラとふった。

 なんだかよくわからない病気になっていたが、俺が思ったよりずっと元気そうだ。
 俺は気になっていたんだ。
 毎日、ミラーにちょっかい掛けられては手を出されそうになっていたからな。
 この分だと元気にやれているんだろう。
 新しい事にも挑戦して……うん、もうリクは彼女を守る必要はないな。

「おーい、リゼットはやく来てよー!」
「みんな先行っちゃうよー!」

 先ほどリゼットと一緒に建物から出てきた少年少女たちが、わーわー言いながらどこかへと駆けて行く。
 リゼットは「今行くー!」とだけ答えて、やれやれ、と肩をすくめた。

「まったく、決闘好きのガキんちょ達はこれだからね~」

 彼女は大人の余裕で首を横にふった。
 と、その時。
 ふと「むむ?」といぶかしむ顔をした。

「おや、少年、それはマジックリングじゃないの? もしかして、君も魔術を勉強してるのかな?」
「まあ……すこしは」

 ラテナの手を振り払い、ギッと睨みつけて引きずるのをやめさせる。

 もうすこし再会を楽しませて欲しい。

「それなら、うちの塾に入らない?」
「塾? なんですかそれ」
「アルカマジじゃ結構一般的な学習指導をする場所、かなぁ。アライアンスじゃ魔術学校と混同されてるから、魔術を教えてもらえる場所って思えばいいかもね! アルカマジから来たすごい先生が魔術のこと教えてくれるんだよ」

 リゼットはそう言うと「お姉さんもどうです?」とラテナのことも誘った。

 めっちゃ積極的に勧誘してくるな。
 
「ね? ね? ほら、とりあえずは決闘を見ていくだけ見て行ってよ! 魔術はみんなで競いあったほうが絶対に楽しいんだから!」

 俺とラテナを交互に見ていうリゼットは、俺たちの手をそれぞれ掴んで走り出してしまった。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

処理中です...