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世間一般の魔術使い 前編
しおりを挟むリゼットに手を引かれていくと、俺たちはこじんまりとした公園にたどり着いた。
都市開発の陰で、そっと朽ちるのを待つばかりのさびた遊具と、石畳の間から生えている雑草で、時代に忘れさられたような寂しげな雰囲気があった。
俺は変な病にかかってしまったリゼットが元気にしているのを見て「静養したら」とか「害はない病なのか」とか、まとまらない事を考えていた。
やがて、忘れられた公園にあつまる年の離れた子供たち──8歳~12歳ほど──のもとに、俺とラテナはやってきた。
「ここが決闘場か」
「そうだね。で、あれがリンボリック先生、ここでの競い合いを監督してる、魔術塾の塾長なんだよ」
人の良さそうな眼鏡をかけた壮年の男。
ローブを着ておらず、魔術師には見えないが腰のホルダーには杖がおさまっている。
あれが新天地で塾を開講した変わり者の魔術師か。
ふむ。
遊びに付き合っている暇はないが、魔術の競い合いは経験値として積んでおいてもいいかもしれない。
国交が開かれたことでアライアンスには魔術がこれまで以上に入ってきている。
父であるウィリアムがそうしたように、騎士団でも魔術を戦う力として習得している者がいてもおかしくない。
というか、いないと思うのは楽観的だ。
「リゼット……お姉さん、リンボリック先生と戦えないんですか?」
口調をあらためて聞いてみる。
倒すなら一番熟達した魔術師である塾長がいいだろう。
「こらこら、リンボリック先生への挑戦権は毎月の決闘大会で優勝した子しか手に入れらないんだよ」
「へえ。それで、これから始まるのが決闘大会なんですか」
「そうとも、少年。ほら始まるよ」
リゼットは広間を指す。
俺と同い年──もちろん外見的意味で──くらいの少年たちが2人ほど向かい合ってたつ。
子供たちにガヤを飛ばされながらも、まんなかの2人の表情は真剣そのものだ。
リンボリックと呼ばれた壮年の男は、小石を投げた。
続いて彼は手に持つ杖を、小石へむけて口元を素早く動かしてなにかをつぶやく。
「高速詠唱か」
ディレイマジックと同じような魔術における、追加のテクニックだ。
師匠もよくやっていたなと思いながら見ていると、小石がパンっと音をたてて弾けた。
瞬間、子供たちが走りだした。
お互いに距離3メートルくらいまで近づくと立ち止まり詠唱をはじめる。
「風の精霊よ、
力を与えたまへ──《ウィンド》」
片方の少年は手をまえにだして、ゆるやかな風をふかせた。
前髪セットしていたら、腹立たしいくらいには髪型が崩れるくらい強い風だ。
対する敵方の少年も、同じく《ウィンド》をとなえて、風を相殺しにかかる。
俺は腕を組んで見守っていると、やがてリンボリック塾長が「そこまで」と言った。
俺は「勝負終わったのか?」とリゼットに耳打ちすると「今のは右の子の勝ちだね」と得意げに言った。
彼女の言ったとおり、リンボリックは右の少年の勝ちを宣言して2人を野次馬の中へ下がらせた。
敗者は肩を落として「負けたー!」と悔しそうに暴れて、すぐにのちにふてくされていた。
「……ラテナ、お前に勝敗わかったか?」
俺は率直に思っていた感想をぐっとこらえて、相棒に意見をもとめる。
「どうでしょうか。右の子の風がやや強かったかな、とは思いますけど」
困惑気味ながらもラテナは答えてくれた。
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