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ホット修練 中編
しおりを挟む──転生から9ヶ月が経過した
季節は冬。
空気は乾き、雪がいまにも降りそうなどんよりとした天気がつづいてる。
庭園には枯れ葉が散らばり、年の終わりを感じた。
俺はすこし背が高くなり、ラテナは春にくらべてモフッとふわふわになっていた。
「こんなものですかね」
「だな」
フクロウ形態のラテナと2人で、俺たちは落ち葉をかき集めた。
「不死鳥の魂よ、
炎熱の力を与えたまへ──《ホット》」
かき集めた落ち葉に手を突っこんで熱をあたえた。
ホットは無限の可能性を秘めている。
″火種を必要としない炎魔術″は、魔導書にザッと目を通しても、この初等魔術くらいだ。
「よし、火がついた」
庭の枯れ葉を発火させる事に成功する。
「やっぱり、直接手を触れるのが一番温度をあげやすいな。でも、遠隔でも最大温度自体は変わらない。早さの問題だな。うーん、まだまだ検証が必要だ」
計画、実行、評価、改善。
俺はホットという初等魔術ひとつをこの世の誰よりも理解するために研究を重ねる。
次の術を試してみることにする。
とはいえもちろん火属式魔術ホットの応用、アレンジバージョンだが。
魔術には追加詠唱というテクニックが存在している。
たとえばこれだ。
「情けの延々、不死鳥の魂よ、
炎熱の力を与えたまへ──
ディレイマジック《ホット》」
詠唱に『情けの延々』を加えることで、魔術の発動を意図的に遅くすることができる。
俺は遅めの《ホット》をかけた落ち葉を置き石のうえにおく。
腕を組んでまつこと10秒ほど。
落ち葉は激しく燃えて、いっしゅんで灰になった。
遅延魔術は成功だ。
それに、もっと面白い結果も得られた。
「対象がちいさく、魔力が集中するとかなり熱量があがるな。よしよし。一点集中させれば枯れ葉くらい燃やせるようになってきた」
着々と技術は上達している。
将来的に空気中の成分を燃やせるかも?
飛躍の可能性は尽きない。
自分のもつ隠されたポテンシャルにほくそ笑み、俺は一息いれることにした。
──パリン
「ん?」
背後で聞こえたガラスが割れる音。
「ああ、なんてこと……! あわわわっ!」
「母さん?」
俺の母カリーナがおぼんに果実水とおやつを乗せてもって来てくれていた。
落ちたケーキは俺の大好物だ。
今はケーキの命が惜しいが、なんとなくカリーナの震える瞳に、怒られる予感がした。
先に謝ることにする。
「母さん、ごめんなさい、これはその、魔術の研究でして──」
「天才だわ! うちの子は天才だわ!」
カリーナは口元を押さえ、大声をあげた。
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