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氷鋼を取りに行く
しおりを挟む酒気をおびた空気ただよう右手をさけて、俺は一直線に受付へむかう。
この時間帯はクエストを終えた冒険者たちが、完了報告をするためにとても混雑する。
「懐かしい顔ぶれがいますね」
「だな。みんなちょっと変わってる」
リクだった頃の知り合い、とりわけ若い冒険者たちは、たくましくなったように思う。
年齢を重ねてる奴らは、イマイチ変化はわからない。髪型が変わったくらいだろうか。
いつもの武器、いつもの顔ぶれ、いつもの装備、いつものこの空気が俺は好きだった。
自分だけ成長できず、取り残された孤独を感じながら彼らを見つめる。
列が進み、俺たちの番がやってきた。
「冒険者登録をお願いします。俺と彼女で」
俺はゼロからのスタートに気怠さと、新鮮さを、感じながら冒険者登録をした。
──数日後
俺とラテナはキララに乗って、ガドルブック山脈ふもとのダンジョンにやってきていた。
騎馬の健脚で王都から数時間の距離にあるこのダンジョンでは、高級な魔力鉱石:氷鋼が手にはいる事で有名だ。
本日はここでお金を稼がせてもらう。
「未だにリゼットにちょっかい掛けてるらしいあの男を一刻もはやく何とかしないと」
鉱脈を発見してピッケルで掘り進めると、すぐに氷鋼の鉱石を見つけられた。
「こんな簡単に見つかるのですね!」
「これは以前に来た場所だからな。ほら、ラテナを団長のところにあずけていた時だよ」
「あぁ……あの時ですか」
暗い気持ちになりそうになる。
「はあ。……ところで、ラテナはあの時、団長に優しくしてもらえたのか?」
気持ちを切り替えるために別の質問をしてみた。
「はい、優しかったですよ。アイガスター団長は私のことは本当にお気に入りだったのでしょうね」
「そうか。ん? これは使えるかもしれないな……」
俺は思いついたことを普段から使っている手記にメモをして残しておく。
「さて、それじゃ氷鋼はこれくらいでいいだろう」
「もっと採れそうですよ?」
「これで十分だよ。ギルドに納品する分とお金に変える分があれば、もろもろ準備できるしな」
俺はあくまで魔術戦をしかけるつもりだ。
ゆえに高価な防具はいらない。
ただ、すこし前にリゼットたちと魔術街をまわったさいに、面白い霊薬や魔導具を見つけられた。
「特に炎魔術を一回無効化できるアレ。アレは最高のアイテムだ」
「そうですか? ヘンリーなら炎なんて怖くないのに」
「他にも使いでがあるって話さ」
俺とラテナは鉱石の入った袋を背負って、ガドルブック山脈をくだりはじめた。
「そういえば、氷鋼ってなんでこんなに高価なんですか?」
「まず、加工が難しいこと。次に熱に極めて強い。ひんやりした肌触りが気持ち良いこと……それと、なんたってフロストドラゴンの巣にしか採取できないからだ。……ん?」
そういえば、ドラゴンに会ってないな。
以前来た時はひどい目にあったっていうのに。
俺がそんな事を思った時だった。
背筋を凍らせるような、咆哮が背後の山肌を撫でるように響いてきたのは。
俺とラテナは慌ててふりかえる。
すると、斜面を滑り落ちるような動きで、滑空する巨大な影が向かってきていた。
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