奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
46 / 49

竜狩り

しおりを挟む
「マジかよ……巣から出てきやがった……」
「へ、ヘンリー?! ヘンリーなら倒せますよね?!」

 ラテナはびっくりした衝動でぽふんっと煙をあげて、フクロウに戻ってしまう。

 俺は慌ててラテナの落とした袋を拾い上げて「逃げろ!」と叫んだ。
 
「ヘンリー、ヘンリーなんで逃げ──」
「勝てるわけないだろ! 相手はドラゴンだぞ!」

 俺はふりかえらず、踏み固められた道ではなく、急な斜面を猛ダッシュでかけおりる。

 ドラゴンは最強のモンスターだ。
 戦って勝てるだなんて聞いた事がない。
 見つかったらなりふり構わず、全力の逃走をするのが人間という種に与えられたゆいいつの選択肢なのだ。

「ダメですよ…ッ! 追いつかれますぅう、いゃぁあああああ!」

 ラテナが鳥肌全開にして悲鳴をあげた。
 
 クソ、ここまで来たのにドラゴンなんかに殺されてたまるか!

 俺は氷鋼のはいった袋をふもとに放り投げて、追ってくるフロストドラゴンをチラ見する。

「グォォオオオオオオッ!」

 怖すぎる。

「ラテナ! さっきの洞窟の入り口にキララをつけとけ!」

 俺は指示を飛ばすとともに、近くの洞窟に転がりこんだ。
 遮蔽物のすくない山肌をドラゴンと追いかけっこするなんて自殺行為だ。
 
「こっちだ!」
「グォォオオオオオオ!」

 ならば、洞窟に自ら戻ったほうがまだいい。
 
 怒りの形相が睨みつけてくる。
 俺は内心ですくみあがりながらも、鋭い牙に捕まることのないように、複雑な洞窟を縦横無尽に逃げた。

 白い息を吐き出しながら、極寒の洞窟をはしり続けていると、道中に天井からつららが生えていることに気がつく。

「落ちてこい!」

 冷素のコントロールをもちいて、俺のあとを追いかけてくるフロストドラゴンに、大きなつららを当てる。

 轟音を鳴らしてふってくるつららは、地面に深々とささり、フロストを食いとめた。

 ドラゴンの動きがとまった。

 俺は一瞬の隙で思考する。

 オリジナルスペル《マスターカット》で首を焼き切れるか?
 いいや、そこまで時間はくれない。
 あれは動いてる対象には使えない。
 ならば、もっと手っ取り早く最大の一撃を放つ必要がある?

 俺は決心して、倒すならばコレしかないと全力で走ってドラゴンに近づいた。

 そして、その鼻頭に手のひらを当てる。

 深呼吸をひとつ。
 ただでさえ冷たい洞窟が、俺のまわりをかこうようにどんどん凍りついていく。
 吐息が真っ白になり、指先の感覚が失われてきたとき、俺は蓄積したすべての熱素を集中させて放射した。

「焼却せよ──《アフターバーナー》」

 俺の右手のひらから炎が溢れて、フロストドラゴンをつつみこんだ。
 途端にあたりの氷が溶けはじめて、ジャワっと蒸気が洞窟を満たす。
 その次に訪れたのは爆風だ。
 俺の手から溢れるようにふくらんだ火炎は、いつしかやりのように真っ直ぐに放射され、やがて色もオレンジから赤、さらに中間に紫色の炎をもつ蒼い勺熱になっていく。

 反動ですこし後退する俺は、これは俺のもつ大半の魔力と引き換えに放つ奥義だ。

 これで殺れなきゃ、俺は死ぬ。

「いけぇぇえ!」
「グロォオォオオ、ォ、オ……──」

 熱っせられた空気の膨らみと、放射された熱の余波で極寒の洞窟は赤くほてっていた。

 俺は全魔力を放ちつくして、膝をおりまげる。
 そして、汗だくになりながら顔をあげた。

 目の前ある氷鋼の鱗表面は溶けていた。
 まっかに蒸しあがったその竜からは、ふたたび動き出す気配は感じられない。

「はあ、はぁ、はぁ……生き残った…」

 俺はなんとかなった事に安心した。
 けれど、熱いし、不安だし、いつまでも洞窟にいたくなかった。

 すぐに洞窟を出ることにした。

 洞窟を出てドッと疲れた肩をおとす。
 すると、遠くから「ヘンリー!」と呼ぶ声が、馬にのってやってきた。

 俺は片手をあげて「なんとかなったー」と無事を知らせるのであった。


 ──────────
        ───────────

 ──5日後

 昨日、前代未聞の事件が起きた。
 それは、冒険者になりたての2人組のブロンズ冒険者が、フロストドラゴンの遺骸を時間をかけて冒険者ギルドに提出したことだ。

 新しく冒険者としてデビューし、瞬く間に伝説的な功績をうちたてて、プラチナ級冒険者となった謎のパーティの名は『赫梟』だ。
 
 まだ幼いひとりの少年と、地味なローブに身を包む2人組らしく、目撃者によればローブのほうは絶世の美少女らしい。

 ひと目見ようと男たちが声をかけるが、全部ちっこいガキが「見せ物じゃない!」と邪魔をしてフードを取ることすら許さない。

 ゆえに、その姿を見たものはすくない。

「ギルド長、よかったんですか?」
「なにがだ」

 新聞の大見出しを眺めながら、コーヒーをすする渋男が片眉をあげる。
 視線を向けられた若い男は、頭をポリポリかけながら『竜狩り』の事ですよ。

「あんなデタラメな話信じて、ブロンズからプラチナまで飛び級させちゃうなんて、ほかの冒険者たちの不満が爆発しちゃいますよ」
「はん、バカか小僧。これが最大の配慮だ。『竜狩り』の二つ名を持つ者をプラチナ級でとめてしまったことは、これから冒険者ギルドに大きな影を落とすかもしれん」

 ギルド長はコーヒーをひと口ふくみ、「苦いな」と言いながら、またひと口すする。

「本当に倒したならいいんですよ。でも、普通に考えてください。死体なんていくらでも偽装できますよ。それに、殺し方が焼き殺したって……意味不明すぎますよ」
「やれ、世の中を知らん小僧だ」

 ギルド長は新聞をたたんでピシャリっと机にたたきつける。
 若い男は背筋をピンッとただした。
 重厚な机にほうられる一枚の手紙。
 封は切られている。

「これはなんですか?」
「アルカマジの冒険者ギルドにこの件について判断をあおいだ。超速鳥便だ」

 若い男は手紙に視線をおとす。
 そして「フォッコ? 誰ですかこれ?」と問い返した。

「アルカマジ本国が探してる家出娘らしい。なんでも魔術の大天才らしくてな。彼女ならば竜を焼き殺せるかもしれない、と向こうの魔術師たちは判断したようだ」
「っ、フードで姿をあらわさないのはそういうことですか!」
「ふむ、十中八九、そういう事だろうな」

 若い男はすべてが繋がったという風に大げさなため息をつく。

「それで、そのフォッコさんをどうするんですか?」
「どうもしない。俺たちが何かして向こうに恨まれるのは嫌だからな。放っておく。ああ、そうだ、かの国から彼女を連れ戻しにシーカーが来るらしい。俺がいなかったらお前が手厚く出迎えてくれ」

 若い男は信頼に応えようと、胸をはり「任せてください!」とドンと胸板をたたいた。
 ギルド長はそういいながら、椅子から腰をあげて窓の外へ顔をむけた。

 通りを歩いていく『赫梟』が見えた。

「厄介なことにならなければいいが」

 彼はそう言いコーヒーを飲み干す。
 そして、渋い顔をして「苦いな」なとつぶやくのであった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

処理中です...