外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる

ファンタスティック小説家

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ジャヴォーダン城の死闘2

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 ──ジャヴォーダン市街

 この世の終末を思わせる景色が、辺境都市ジャヴォーダンの郊外の城に見える。

 黒い雲が、真っ黒い渦を形成していた。

 いまにも、あの空の黒い穴から、恐ろしい魔神が降臨してきそうな予感がした。

 アダンと怪物学会の影響を強く受けているジャヴォーダンの市民たちは、「ああ、また学会がなにか実験を始めたんだ」と、最初は呑気にしていた。

 だが、天空の黒渦を中心に取り囲むようにして、災害の化身たるドラゴンたちが群れをつくる光景には、戦々恐々せざるを得なかった。

「この世の終わりか?」

 ジェノン商会の会長メイソン・ジェノンは、相棒のファングをそっと抱きしめてつぶやいた。これは学会から買ったペットだ。
 「アルバートは、俺たちのこと見捨てないのよな?」と、彼は弱々しくペットに聞く。ペットのファングは自信なく「がるぅ」と鳴く。

「大丈夫です。彼は身内には優しいですから」

 ジェノン商会のメイド、クーニャンはメイソンの傍らで余裕そうに言った。

「俺たちが身内に数えられてればいいけどな」
「ぼっちゃんは、あのアルバート・アダンと肩を並べるビジネスパートナーでしょう。胸を張ってくださらないと商会の威信に関わります」
「ビジネスパートナーなぁ……はは、お前がそう言ってくれるだけで、最後の誇りは捨てずにいられるよ」

 メイソンはファングのリードを引っ張り「家に帰るか」と言って大通りを行く。

 メイソンは思う。

 自分とアルバートが対等だったのは、数年前の話だ。いや、あるいは初めから対等などではなかったのかもしれない。

 今ではジェノン商会は、学会のさまざまな事業の代行運営を任されてるおかげで、5年前と比べて、資本の規模は爆発的に成長している。

 だが、決して対等などではない。
 もし会長である俺が、少しでもミスをすれば、あの青年は代わりを用意するだろう。

 もうあの青年との付き合いも長い。
 彼が気の利く好青年なことは知っている。
 だが、同時に冷酷だとも知っている。

「はあ、頼むから、アルバート、こっちに被害出ない範囲で勝手にやってくれよ」

 諦観の顔でメイソンはつぶやいた。

 長年の付き合いである友人でさえ、それほどに怯えるくらいに、今回のジャヴォーダン城の様相は一線を越えて、ヤバすぎた。

 ────────────────

 ──アルバートの視点

 暗い空の黒渦を頭上に乗せながら、アルバートはドラゴンの背中から地上を俯瞰していた。

 城壁を走りまわって、アイリスは必死にドラゴンたちへ黒杭を投げて、1匹、また1匹と倒していく。

「上手くやるものだな。だが、タネがわかってきたぞ」

 今、堕とされたので合計12体目。
 ただ、ここまでだ。
 どれだけ数がいようとも、ディザスターとして伝説に唄われるドラゴン1体1体の能力が、低くなっているわけではない。

 彼らは1匹で伝説の英雄譚の主役を張る。
 ドラゴンたちは賢く、強い生物なのだ。

 群れていようと、アイリスの不可思議な術を見て学び、どうすれば避けれるのか、黒い雷を受けずに済むのか、頭を使って狩りをする。

 ドラゴンたちは思っていた。

 黒杭自体は、自分たちの巨体には痛くない。
 怖いのは黒い雷だ。
 だが、いつでもあの黒い雷を落とせる訳じゃなさそうだ。
 おそらくは黒い杭が避雷針となっている。
 あれがなくては誘導できないらしい。
 しかも、翼を正確に狙ってくる点を考えれば、黒雷の威力自体も、自分たちを一撃で絶命させる類いの必殺ではない。
 翼を焼き切って、ようやくドラゴンという生物を使い物にならなくさせる程度の脅威だ。

 ならば、黒杭が翼に当たらなければ良い。

 ドラゴンたちは結論を出した。

「学んだか。翼はもっとも天然の魔力アーマーが薄い箇所だが、意識を向ければアーマーを厚くすることは可能だ」

 合計で13匹ほど撃墜されたあたりで、アイリスを追跡するドラゴンたちは、翼に魔力を集中させて、危険な黒杭を弾きはじめた。

「っ、あんたたち生意気ね!」

 アイリスは黒杭と黒雷のコンボが通用しなくなるとわかると、すぐに外壁から離れる。
 第二城壁内に降り立って、近場の城壁を足で蹴り破ると、そのなかへと逃げ込んだ。

 暗い廊下を走る。

 人の気配はない。
 決戦のために職員を避難させたようだ。

 アイリスは廊下を走りながら考える。
 
 今、アルバートは上空1,000m付近で優雅に観戦中だ。降りてくる気配は今のところない。

 彼を倒すには、湖の時と同じように、彼自体に攻撃を届かせなくてはならない。

 だが、あのディザスターの渦を突破するのはあまりにも危険すぎる。辿り着くまえに、先に殺されるのほ自明だ。

 なにも悪魔の身体は無敵という訳ではない。

 本来、悪魔というものは、己の世界の法則で、自分の周りの世界を侵食し、この世界の物理法則を受け付けない権能も持っている。

 そのため、見た目はヒョロッしてるいかにも脆そうな悪魔でも、非常に硬いもの。

 しかし、わたしの場合は″悪魔化″しているだけで、元から完全な悪魔という訳ではない。
 そのため、この世界の法則も多少は受けてしまう。ゆえに火は熱いし、氷は冷たい。

 さっきは、嘘をついたが、高密度の魔力が込められた攻撃──それこそ、ドラゴンブレスに魔術師が魔力を込めたモノなどは割と効かされる。

 さらに言えば、アルバートの持っていた銀色の杖……あれは、まさかわたしが悪魔になることを見越して用意していたの? 

 それほどに、あの銀の輝きは、致命的なダメージを受けさせられる予感を覚える。

 アイリスはアルバートが一体、何手先まで予測して、対策を立てているのか、計り知れない叡智に畏怖していた。

「流石はわたしのアルバート……なんて言ってる場合じゃないわね、これは殺されるわ」

 怖がってるの?
 このアイリス・ラナ・サウザンドラが?
 怯えてる隙なんてないのよ。
 贖罪を為さないと。

 アイリスは、ほっぺたをペチンっと挟んで、現状を打破するための手段を考える。

「それにしても、空軍とか言ってたあのドラゴンの数、いったい何の為に? サウザンドラを倒す為だったとしても過剰すぎるわよね……」

 自問に答える者がいた。
 アイリスは急ブレーキをかけて、廊下の真ん中で足を止める。

「七つの国と貿易をし、最後に人類未到の『真っ暗な大陸』へ手を伸ばしたところまではいいんだが……向こうの先住民たちを怒らせてしまってな、対抗する為に、学会には巨大な軍事力が必要になった」
 
「っ! アルバート、さっそくそっちから降りてきたわけね!」

 廊下の先にアルバートが待っていた。
 左右を固めるようにダ・マンが2体立っている。

「我慢は飽きたんだ。あの鬼神のような強さを誇るアイリスが逃げ回るなんて柄じゃないと思う。もっと積極的に戦いに挑んで欲しい。ほら、湖の時みたいに、すべてを蹴散らして、まっすぐと、最短距離で来るとたすかる」
「そうしたいのは、山々だけど、今回は質量の壁が厚すぎるわ」
「頼む、城の中を荒らされるのは好きじゃない。それに、せっかく、竜師団を起動させたんだ。一回起こしたら、年間の維持費だけでとてつもない金が浪費される。リソースは無駄にしたくない。もっと広く使おう」
「ふんだ! あんなバカげた軍団まともに相手するわけないじゃない!」

 アイリスは「えいっ!」とその場で地団駄を踏むように床を踏みつけて、廊下に穴を開けると、下の階へと逃げた。

「っ、他人の城だからって……追え」

 ダ・マン2体が第二形態に移行して、廊下の穴への降りていく。追跡開始だ。
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