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第一章 殺人鬼の不幸

大商人の娘たち その4

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 夜中、クリスが姉妹たちのために下手くそな料理をしている間に、これからのことを決める。

 私は風呂場に姉妹をたたせ、指をたてる。

「ネフィ、エイミー、そしてパス。君たちはこれからフラッツヴェルヴではなく、レザージャックを名乗っていきるんだ。私の作品になるその日まで」
「はい、先生!」
「わかったー、きちがい先生ー」
「わかりました、狂った先生」

 三者三様のひどいへんじ。
 されど妙なところでニュアンスが被っている。

「先生はダメだ。狂ったとか、イカれた、きちがいもダメ。私のことはこれからエイデンさん……いや、ご主人様と呼ぶんだよ、ネフィ、エイミー、パス」

「えー、クリスおねえちゃんは、せんせい、ってよんでたのに、ネフィたちはよばせてくれないんだっ!」

 ネフィが頬を膨らませ、そっぽをむいてしまう。

 目が死んでいない。これではダメだ。

 よし、とりあえずはこのネフィの目を殺すことからはじめるか。

「これから君たちには体を洗ってもらう。私は不衛生なものが嫌いだ。
 おぞましくて、近づくことさえはばかられる。そんな者にこの家に住まわれるのは、我慢ならない」

 私はコートを脱ぎ、シャツの袖をまくしあげながら、姉妹たちの体をじっと観察。

 金持ちの娘だけあってみなりは清潔。

 だが、アグレウスを殺した時に、返り血をわずかに浴びており、屋敷の崩壊のせいね、土ぼこりも付着しているだろう。

 最悪なのはネフィだ。

 顔は腫れて、涙の軌跡がのこる。
 フリルのついた水色のドレスは、下半身がぐっしょ濡れて、ドレスの袖は鼻水や血がついている。

 即刻の対処が必要だ。

「エイミー、パス、君たちは服をぬぎ脱衣所で待っていろ」

「えー、エイデンさんもそういうことするのかー」
「あなたも父と変わりませんね。パスは失望しました」

「勘違いしないでくれ、じゃり娘どもよ。私は生きた娘の肉体などにさしたる興味はない。
 君たちが不潔すぎるから、私が納得いくよう掃除するといっているんだよ」

「……不潔、エイミー傷つくなぁー」
「パスの体はたしかに汚され、犯されていますが、そんな直球で言うことはないと思います。エイデンさんは最低の人間です」

 なせだ。
 さっきと全然反応がちがう。
 私の家にきてから一段と言い返してくる。
 なぜ、どうして、この娘たちは微笑んでるんだ。

「ネフィもひどいおもいます! エイデンさん!」
「ッ、寄るな!」

 タタっと近づいてくるネフィを避ける。

「クソっ、汚らしい! まずはお前からだ!」
「あわわ!?」

 杖を腰からぬいて、ひとふり。
 ネフィのドレスを引き裂いて、そのあられもない幼体を風呂場の魔力灯のもとにさらしだす。

 ネフィはたまらずへたりこみ、真っ赤な顔で見上げてきた。

「ネフィは、ネフィはおとうさんにも、まだてをつけられてなかったのに、え、エイデンさんはなんていうへんたーー」
「うるさい」

 壁にかけたコートから、青いポーション小瓶を2本ほど取りだしてネフィの顔にかける。

「ぷへっ! ぽへっ! エイデンさん、ごめんなさい、やめてください! けほっ!」
「安心しろ、害はない」

 空瓶の栓をしめて、窓枠にそろえて置いておく。
 そして、ポーションにせきこむ裸のネフィを抱きかかえ、風呂場へ。

 ネフィは自身の顔のはれが急速にひいていくのに、驚いた顔をして、こちらを見つめている。

 私はそんなネフィを浴槽につっこんだ。

 ーーパシャん

「あっ、つい!?」
「こら、動くな。体温を上昇させることでポーションの効きがよくなる。ネフィの顔に傷が残ったままなど、私は許さない」
「ッ、え、エイデンさん……ッ」

 ぽけぽけしてるネフィをよそに、私は風呂場にかけてあったせっけんを、手拭いを使って泡立たせていく。

 続いて浴槽のなかで、くつろぎはじめとネフィの脇に手をさしこむ。

「ふにゃあ!?」
「洗う」

 ネフィを低いイスに座らせて、あわだった手拭いを使って体の隅々までこする、こする、こする。

「ぇ、ぇ、えぃ、でん、しぁ、ん……ッ、あの、ふぇ!」
「凹凸のない寸胴のからだ、実に洗いやすくて結構だ。そして、ここ、ネフィはさっきお漏らしをしていたな」
「ッ! あ、そ、そこだけ、は……ひゃあ!?」

 手拭いで、ネフィのお股をこすっていく。
 泡を指にからませ、恥部のなかも掃除する。

「ふにゃあ! え、ぃ、でぇ、ん、しゃん……ッ、ふにゃぁぁ! んっ、だめ、です、にゃあ!」

 なんだか、楽しくなってきた。
 作品のかこうを手掛けているようだ。
 生きているのに、不思議ことだな。

 やがて満足するだけネフィを洗い尽くし、お股の臭いを確認して、風呂場からだす。

「ネフィの、ネフィがもてあそばれた……うう!」

 タオルを赤面するネフィのあたまの上に雑にかぶせて、脱衣所で待っているだろう2人にむきなおる。

「さぁ、次はエイミーの番……だ……」

 緋い瞳と目があった。
 まずい、致命的な誤解をされてる気がする。

「先生……何してたんですか……?」

 エプロンを着けてキリッと鋭い目つきの勇者。

 片手に赤い粒子とともに現れた大剣をにぎり、ポニーテールを紅蓮の輝きにそめあげた勇者。

 まずい。
 これは私でもわかる。
 この勇者、怒っているぞ。

「待つんだ、クリス、まずは話をしよう。なにか誤解をしているに違いない。
 そうだろう、ネフィ、私は君の体を清めてあげただけだと言ってくれ」
「クリスおねえちゃん! ネフィのおとめこごろは、エイデンさんにもてあそばれてしまいましたっ!」

「待て、おい、なに言ってる、ネフィ、おい、話がちがーー」

「先生の馬鹿ぁぁぁあああ!」

 緋き眼光ーー。

 是非ぜひもない速攻の無力化。

 脱衣所の空気をわかつ熱い軌跡が、顔面にせまり、いつのにか私の側頭部は勢いよくはじかれていた。
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