雑魚スキル【観察記録】のせいで婚約破棄された少年は、モンスター達とともに世界を無双する。

ファンタスティック小説家

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 ──しばらく後


 ラビッテを手のひらに乗せたままアルバートとアイリスは散歩をする事になった。
 
「お父様はとワルポーロ様はまだ談義に花を咲かせているようですね」

 アイリスは言う。
 アルバートは無難に返事をかえして、話題を近々自分たちにとっておこる最大のイベントについて話すことにした。

「アイリス様は刻印継承のほうは大丈夫そうですか?」

 刻印の継承。
 それは、それぞれの魔術家が代々繋いできた秘術のことだ。
 たとえばアダン家ならば2代前にエドガー・アダンが見いだした秘術【怪物使役式】が刻印として継承されている。

「アイリス様のところの刻印はたしか……」
「【錬血式】。わたしの家が『血の一族』と呼ばれる所以ですね」
「ああ、そうでしたね」

 当然、許嫁の家の刻印くらい頭に入っていたが、アルバートは彼女と会話のキャッチボールがしたかった。

「アルバートは継承式は不安ですか?」
「そうですね。何代も続いてるならまだしも、うちはまだ僕で3代目ですからね。イレギュラーは起こりえます」

 アルバートはいい知らぬ不安を抱えて、手乗りラビッテを見下ろした。
 これまで彼は基本的教養や、魔術の勉強に時間を費やしてきた。

 記録によれば刻印は継承のさいに″変化″する可能性がある。
 それは、良い方向か、悪い方向かはわからない。

 ただ言えるのは、性質が変化した場合、これまで練習してきたモンスターたちを上手にコントロールする訓練が無駄になる可能性が出てくることだ。

「出来れば、なにも変わらずに父さんの、そして伝説の魔術師エドガー・アダンのたどり着いた刻印を継承したいものです」

 アルバートは10歳の少年がするには、いささか神妙すぎる顔つきでそう言った。

「大丈夫ですよ、アルバート。あなたはわたしでも及ばない才能をもってます」

 アイリスは熱にうかされてような顔で、ほほをピンク色に染めて一歩ちかづく。
 
「手をを繋ぎませんか?」
「アイリス様と? ……それは危険ですね」
「どうして? わたしたちは婚約者どうしなのに」

 アルバートは「理由を3つに分けて端的に説明いたしましょう」と、自分のへたれを隠すための言葉を重ねようとこころみる。

 しかし、アイリスの方は、ジトッとした目をむけると「とりあえず、手繋ぎますね」とことわると、彼のちいさな手と自身のをかさねた。

 2人の間をな春の心地よい風がぬけていく。

 お互いに気恥ずかしさに会話はとぎれてしまった。
 が、アルバートもアイリスも、手のひらから伝わる温かさは言葉より充実した時間を作ってくれるものなのだと知ることになった。

「……アイリス様」
「なんですか、アルバート」
「これからは婚約者としての体裁をたもつために、たくさん手を繋ぐことにしましょう」
「それは良い案ですね。流石はアルバート」

 2人は目を合わせず、綺麗な庭園を眺めながらそんな約束をするのだった。





















 
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