雑魚スキル【観察記録】のせいで婚約破棄された少年は、モンスター達とともに世界を無双する。

ファンタスティック小説家

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執事長アーサー

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 ──しばらく後

 アルバートは屋敷のなかへ戻ってきた。

 彼が向かうのは父親のところだ。
 メイドに一言断って父の寝室へ入室する。
 
「失礼します」
「アルバートか……。よく来たな」

 アルバートは部屋の奥で横になる父の顔をうかがう。
 
 顔色はよくはなかった。
 だが、最悪というわけでもなかった。
 数日前の狂乱を思い出せば、ずっと調子はよさそうに思えた。

 ここ数日寝たきりのワルポーロへ、アルバートはゆっくりと近づいていく。

 彼のかたわらにはアダン家に代々つかえているモンスター、黒犬パールがまるくなっていた。

 故・エドガーの愛犬でもあった。

「わふッ!」
「よしよし、すこし話すだけだからな」

 パールにも嫌われてしまったか。

 黒き忠犬の使命は今は亡き真の主人エドガー・アダン最期の言葉を遂行すること。
 そのために、仕方なくアダンの系譜である俺やワルポーロにつかえている。

 アルバートはため息をつく。

 刻印を途絶えさせた以上、パールに嫌われても仕方のないことであった。
 それでも、小さい頃から知っている彼女に嫌われるのは温もりが欠けた気分になった。

 アルバートは父親の体調を気づかうように、すこし会話をしてから本題にはいった。

「父さん、実はあの本のことでして」
「だと思ったぞ、アルバート」
「はい。それで例の本の作成者がおそらくあの人なのではないかと思い至ったのですが」

 アルバートは思考の帰結を説明した。

「なるほど。たしかにそう考えるのが自然だ」

 ワルポーロはこけた笑みをうかべる。
 例の一件依頼みるみるうちに痩せている。

 アルバートは眉根をひそめながら、先をつづけた。

「父さんは見たことないんですか。あの本をおじいちゃんが使っているところを」
「残念だがアルバート、もう無理だ」
「……はい?」

 質問の答えになっていない。

「どうせ私ごときでは偉大なるエドガー・アダンのあとを継ぐなど土台無理な話だったんだ……! アルバート、もう諦めろ。お前も私と同じ落ちこぼれなんだ!【怪物使役式】は今や完全に失われた……もう私たちはおしまいだ!」

 ワルポーロは血走った目玉で息子を睨みつけ、奇声を出しながら掴みかかってくる。

 アルバートは身を素早くひいて避けるとアダン家の執事長の名を呼んだ。

「アーサー!」

 その一声でどこからともなく鋼鉄の老紳士があらわれる。
 モノクルを掛けた銀髪染めの60代だ。

「旦那様、失礼いたします」

 一言ことわってから、アーサーはワルポーロの首の裏にかるく手刀をくらわせた。
 それだけで、自棄になったいた彼は白目をむいて意識をうしなった。
 
「父さんを部屋から出さないように」
「かしこまりました、坊っちゃん」

 アルバートはひとつうなずき足元に落ちた魔導書を手にとる。

「そういえば、アーサー」
「はい、なんでしょうか」

 アーサーは、メイドの手を借りてワルポーロをベッドに寝かせながら耳をたてる。

「この本、見覚えあるか?」
「いえ、ございません。屋敷にある書籍はすべて把握しているつもりでしたが……それは見たことがないですね」
「思うにおじいちゃんの本みたいなんだが。もう一度聞く、本当に見たことはないんだな?」

 アルバートは念を押して聞く。

 アーサーはエドガーの晩年から仕えている。ゆえにこの本と、かの伝説の魔術師をむすびつけられる可能性は彼が一番高い。

 アーサーはモノクルの位置をなおして、アルバートの掲げる魔導書を吟味する。

「いいえ、残念ながら。やはり見たことがございません。中身を拝見しても?」
「それはやめたほうが良いかもしれない」

 この本の不可解な能力について話した。

 アーサーは「なんと」と驚いたような顔をしたのち「ついて来てください」と、主人を先導して歩きだした。

「どこへ行くんだ」
「書庫でございます。保存されている資料にそちらの魔導書と類似した書物についての記載があったのを覚えています。もうずいぶん古い記憶ですが」
「そうか。流石はアーサーだ」
「恐縮でございます」
















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