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未知との遭遇 後編
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「……はぃ?」
ティナの最初の一言はそれだった。
まさか、不定形のコケコッコがコケるとは思っていなかったことはさる事ながら、赤黒い液体がまざってしまうとは思ってもいなかったのだ。
え、この場合どうなるの?
ティナは何が起こるのかわからないまま、グツグツとうごめく液体が、お互いに分離しようもあがいてるのだけはわかった。
「助けたほうがいいかな? でも、触ったらどうなるんだろ……」
すこし考えてみて、触ることだけは明らかにためらわれたので、ティナはアルバートに報告をいれることにした。
立ちあがり、緊急事態をつたえるべく書庫へとつづく階段に足をかける。
その時、
「ゴゲェエエ!」
「ッ?!」
魔術工房の奥からおぞましい鳴き声が聞こえてきた。
それは、真っ黒な影であった。
それは、真っ赤な憎悪であった。
煮えたぎる炎のように熱い熱気がみちて、白い蒸気を全身からはなっている。
ティナはさきほどコケコッコたちが生誕しようとしていた場所に、得体の知れない肉塊の怪物がいるのを目撃した。
「嘘でしょ……ッ」
原因は間違いなくアレ。
2匹のコケコッコの『元』が、今までにない溶けあいをしてしまったせいだ。
「ゴゲェエエ!」
怒りの形相──たぶん、怒ってる──をうかべるソレは、檻の隙間に身体をねじこんだ。
流動的な体から、皮膚のない肉が簡単にそぎ落ちてソレのサイズはちいさくなった。
だが、まったくお構いなしにソレは、資料や積まれた本を蹴散らして、ティナへむかっていった。
「来ないでください……ッ!?」
腰をぬかしながら、涙目で階段をはいあがりすこしでも逃げようとする。
「アルバートしゃまぁ…! アルバートしゃまぁ、助けてぇええー!」
我ながら無様すぎる悲鳴だった。
しかも、恐怖でのどが引きつってしまいうまく声がだせない。
「ゴゲェエエ、ゴッゴ……」
ソレが階段をはいがってきた。
木製の階段を黒と赤の粘液でベチャベチャに汚し、書庫の大理石の床を侵食しながら、それは一歩ずつ、ティナへとせまっていく。
「ヒィ、ぃ……ぁ、アルバート様……っ!」
ティナは最後の力をふりしぼってはっきりした声で悲鳴をあげた。
ソレは彼女の悲鳴をトリガーに飛びかかった。
あたかも遺言を聞き届けたとばかりの思いきりの良い殺人衝動が襲いかかる。
憎悪の塊にふれて、ティナは眼前の醜いモンスターが「なにを思ってる」のかわずかに感じとっていた。
「いのち、の、ぼう、とく……?」
ティナは掠れた声でつぶやいた。
それが自分の最後の言葉になるとは意識していなかった。
「なんだコイツ」
耳元で声が聞こえた。
途端、背後から飛び出した少年がすごい勢いで黒い塊に前蹴りをくらわした。
「ゴゲェエエ?!」
ソレはふっとんでいき、魔術工房へと落ちていくとベチャっと音をたてて床に激突してしまった。
それが再び動くことは二度となかった。
「あ、アルバートさ、まぁ……」
「あれは一体……。ん、それよりも、まずはお前だな」
アルバートはシルクのハンカチを取り出して、ティナのほっぺたについた黒い液体をぬぐいさる。
「大丈夫か?」
ただ一言。
尊敬する主人のその言葉に、ティナは「ああ、安心していいんだ」と恐怖の呪縛から解放された。
「怖かったでずぅ、ぅ! アルバート様ぁ、ぁ、ぅぅ!」
「よしよし、もう大丈夫だからな」
彼は彼女の背をポンポンと優しくたたいて、泣き止むまで胸をかすのであった。
ティナの最初の一言はそれだった。
まさか、不定形のコケコッコがコケるとは思っていなかったことはさる事ながら、赤黒い液体がまざってしまうとは思ってもいなかったのだ。
え、この場合どうなるの?
ティナは何が起こるのかわからないまま、グツグツとうごめく液体が、お互いに分離しようもあがいてるのだけはわかった。
「助けたほうがいいかな? でも、触ったらどうなるんだろ……」
すこし考えてみて、触ることだけは明らかにためらわれたので、ティナはアルバートに報告をいれることにした。
立ちあがり、緊急事態をつたえるべく書庫へとつづく階段に足をかける。
その時、
「ゴゲェエエ!」
「ッ?!」
魔術工房の奥からおぞましい鳴き声が聞こえてきた。
それは、真っ黒な影であった。
それは、真っ赤な憎悪であった。
煮えたぎる炎のように熱い熱気がみちて、白い蒸気を全身からはなっている。
ティナはさきほどコケコッコたちが生誕しようとしていた場所に、得体の知れない肉塊の怪物がいるのを目撃した。
「嘘でしょ……ッ」
原因は間違いなくアレ。
2匹のコケコッコの『元』が、今までにない溶けあいをしてしまったせいだ。
「ゴゲェエエ!」
怒りの形相──たぶん、怒ってる──をうかべるソレは、檻の隙間に身体をねじこんだ。
流動的な体から、皮膚のない肉が簡単にそぎ落ちてソレのサイズはちいさくなった。
だが、まったくお構いなしにソレは、資料や積まれた本を蹴散らして、ティナへむかっていった。
「来ないでください……ッ!?」
腰をぬかしながら、涙目で階段をはいあがりすこしでも逃げようとする。
「アルバートしゃまぁ…! アルバートしゃまぁ、助けてぇええー!」
我ながら無様すぎる悲鳴だった。
しかも、恐怖でのどが引きつってしまいうまく声がだせない。
「ゴゲェエエ、ゴッゴ……」
ソレが階段をはいがってきた。
木製の階段を黒と赤の粘液でベチャベチャに汚し、書庫の大理石の床を侵食しながら、それは一歩ずつ、ティナへとせまっていく。
「ヒィ、ぃ……ぁ、アルバート様……っ!」
ティナは最後の力をふりしぼってはっきりした声で悲鳴をあげた。
ソレは彼女の悲鳴をトリガーに飛びかかった。
あたかも遺言を聞き届けたとばかりの思いきりの良い殺人衝動が襲いかかる。
憎悪の塊にふれて、ティナは眼前の醜いモンスターが「なにを思ってる」のかわずかに感じとっていた。
「いのち、の、ぼう、とく……?」
ティナは掠れた声でつぶやいた。
それが自分の最後の言葉になるとは意識していなかった。
「なんだコイツ」
耳元で声が聞こえた。
途端、背後から飛び出した少年がすごい勢いで黒い塊に前蹴りをくらわした。
「ゴゲェエエ?!」
ソレはふっとんでいき、魔術工房へと落ちていくとベチャっと音をたてて床に激突してしまった。
それが再び動くことは二度となかった。
「あ、アルバートさ、まぁ……」
「あれは一体……。ん、それよりも、まずはお前だな」
アルバートはシルクのハンカチを取り出して、ティナのほっぺたについた黒い液体をぬぐいさる。
「大丈夫か?」
ただ一言。
尊敬する主人のその言葉に、ティナは「ああ、安心していいんだ」と恐怖の呪縛から解放された。
「怖かったでずぅ、ぅ! アルバート様ぁ、ぁ、ぅぅ!」
「よしよし、もう大丈夫だからな」
彼は彼女の背をポンポンと優しくたたいて、泣き止むまで胸をかすのであった。
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