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第一章 再誕者の産声

超能力者アーカム

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 最高の気分だった。
 すべてを破壊してやりたくなるような暴力衝動がうずいている。
 脳内麻薬がドバドバだ。

「ごはっ!?」

 口から大量に吐血した。
 頭が割れそうだ。
 節々に砕けるような痛みを感じる。

 だが、動ける。
 戦える。

 放射状に陥没した壁を見やる。
 緒方は血を吐きながら、壁にはまった体をなんとか抜こうと苦心している。

「ば、かな……サイコキネシス、だと?」

 緒方は潰れた腕を再生させながら、顔に恐怖を浮かべていた。

「舐めるな、舐めるな……舐めるなよ、お前は再生できていない! 不完全な再覚醒だ! 超能力者として転移できなかったからそんなざまに──」

 指を鳴らす。
 金属がきしみ悲鳴をあげ、念動波が破壊的ダメージを敵にあたえる。

「う゛ぐわああああァァァアッッ?!」
 
 金属隔壁に緒方はつっこんでいく。
 そのまま隔壁を貫通して通路まで吹っ飛んでいった。

「ぅ、が……な、ん、なんて、しゅ、つりょく……だ…………これは、かてご、りー、ふぉぅ、いじょう……」

 緒方のまわりに多数の炎の玉が現れる
 それらは一度ふわっと広がると、ホーミングするように一気に襲い掛かって来た。

 右手をまえへ突きだす
 火の連弾を睨みつけて、決して目をそらさない。

 ──曲がれ

 火炎弾たちはすべて俺を避けるように流れていき、うしろの壁で爆発した。

「そん、な……私の、パイロキネシスが……効かないだと……」

 鼻血が出ているのに気がつく。
 体がダルくなってきた。
 だが、まだだ。あいつを倒してない。

「やられて、たまるか……私が、生き残るのだ、あの無能、の天成に、負ける、ものか……」

 緒方はぐちゃぐちゃになった下半身をひきずって、ほふく前進のような姿勢で廊下の角のむこうへ逃げていく。
 俺は腹の穴の激痛に耐え、壁にもたれかかりながら、緒方を追いかける。

 逃がすものか。
 角をまがると同時──

「吹き飛べえええええ天成ィィィ!!」

 廊下の壁や床、天井がめくりあがりながら念力の波──サイコウェーブが向かって来ていた。
 頭の血管が切れそうになりながらも、最大の思念をこめて指を鳴らす。

 ──消し飛ばせッ!

 俺のサイコキネシスが真正面からサイコウェーブを打ち砕く。
 
「ひょッ!?」

 そのまま、床に這いずってる緒方に命中した。
 めんこを返したみたいに宙を舞う。
 べちゃっと床に落ちた。
 ぴくぴく痙攣してるだけで、もう攻撃してくる様子はない。

「ばか、な、ありえ、ない……私、のサイコキネシス、より、はるかに、強力、だと……」
「思念が足りない……サイコキネシスの練度じゃ、俺の方がうえだ」
 
 超能力の基本は想像力だ。
 念じるチカラである。
 どれだけその超常現象を強く念じれるかが出力を決める。

「なぜだ、なぜ、このわたしが、負けるのだ……神の使徒たる、私が……」
「お前の敗因はたったひとつだ。てめえは俺を怒らせた」
「クソめ……雑魚とばかり侮っていたのに、さっさと、殺して、いれば……うぐっ?! おえ、ぶぼえっ!」

 突如、緒方がゲロを廊下にまき散らしはじめた。
 
「いくら燃料がたくさんあっても、ガン回ししすぎればエンジンはオーバーヒートする。超能力者の架空機関も同様らしい。どうやら、本当に調子に乗っていたのは、緒方、あんたのほうみたいだな」
「そんな、うそだ、くそ、そんな、ばかな……うっ、ぼべえ!! ぁぁああああ!」

 もうこいつは能力を使えない。
 勝負はついた。
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