異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
159 / 306
第五章 都市国家の聖獣

どうしてこの策が有効だとわかったんですか?

しおりを挟む

 キサラギ砲が荒垣とすれ違いざまに放った斬撃は3回だった。
 
 一撃目で首と胴体を斬り離した。
 二撃目で胴体と腰を斬り離した。
 三撃目で頭をスイカ割りのように粉砕した。

 甚大なダメージを受けた荒垣は、ヒーリングをする間もなく穴の底へ落ちていった。

(イカれた殺戮アンドロイドめ……! なんて速さだ……!)

 肉片どうしがにょきにょき集まって、荒垣と言う生物を再構築していく。
 頭部を治し、胴体とつなげ、両足で立てるようになる。

 ここは地下300m。
 空が見える。ほとんど点だが、あの青いのは空なのだろう。穴底は程々に明るい。円柱状の巨大な縦穴が昼間の明かりをじかに注いでくれるおかげだ。
 ただ、直上からふりそそぐ太陽の光がとどかない場所はまっくらだ。舞った塵埃が光と影の境界線を克明に浮かび上がらせている。

「──《イルト・ポーラー》」

 暗がりから、氷の放射は行われた。

「ッ、爆ぜろ──クリオキネシス!!」

 荒垣は機敏に反応し、氷の放射を霧散させ無効化する。
 氷属性式魔術は攻撃魔術としての意味を失って、冷たい煙幕となった。
 その向こう側、暗がりに杖を構える人影があった。穴の直下と、暗がりとでは光と影のコントラストが強く、そこにいるのが誰かは不明だ。
 ただ、かろうじて胸元あたりまでは光の照り返しで視認できた。

(胸の膨らみがあるな……つまり女だ……伊介天成《アンナ》のほうか。操り人形だけでなくお前も魔術も使えるとは、本当に器用なやつだね)

 荒垣は脳で考えるよりも早く二重化《ダブル》を発動。迎撃体勢をとった。
 
「もうヒーリングで復帰していたのか、いや、それにしては早すぎる。まさか、スルトの焼却をかわせたのかな? 摩訶不思議なこともあるものだね、伊介天成」

 言いながら2人の荒垣はサイコウィップで武装する。
 暗闇のなかで荒垣を見据えてくる青白い眼光。

「どうやってスルトの焼却を避けたのか参考までに聞かせてもらえるかな、たぶんに興味があるのだよ」
「……」
「どうした、やはり喋らないのか」
「……。たぶん勘だ、わん」
「…………わん?」

 聞き覚えのない声に荒垣が困惑した瞬間。
 事態は動く。荒垣の背後の暗闇から氷の槍が飛んできたのだ。

 不意打ちである。
 しかし、荒垣の片割れはニヤリと笑みをふかべる。

(馬鹿な作戦だね。伊介天成が復帰するには速すぎる。つまり、焼却をなんらかのほうほうで躱したの可能性が高い。イコール、さっきから魔術でわっちをイライラさせてきた操り人形の男が生きていることは自明じゃないか!)

「はは、伊介天成が氷魔術を使うことで、わっちを油断させる作戦だったんだろうが、それは通らないよ。わっちを舐めすぎだね」

 荒垣は背後から飛んでくる氷の槍もクリオキネシスで霧散させてしまう。
 氷の煙幕がぶわっとひろがり濃霧ような冷気が立ち込める。

「さて、お次はどうするのかな? 君たちどちらもわっちからの距離は10mはあるよ」

(もっとも警戒するべきはあの冷たい剣の間合いのみだからね。距離をリセットできたのは嬉しい誤算だよ。わっちは勝てる。冷静にサイコウィップの比重を伊介天成《アンナ》へ注いで、近づけさせず完封する。操り人形からの氷はクリオキネシスで迎撃可能。──見えた、これが勝利の方程式だ)

 荒垣は内心で勝利を確信する。
 暗がりの伏兵、シルエットがわずかに女だとわかるその者を警戒する。
 あれを近づけさせなければ勝ちだ、と。

 そんなことを思っている時のことだった。
 アンナが氷煙のなかから飛びだしたのは。
 すぐ目の前の濃霧からきらめく鋒を構えて、大きく踏み込んで来たのは。
 
(ッ?!)

 驚愕するしかない荒垣。
 アンナはすぐ目の前、間合いは1mと数十センチ。 

 回避行動を取るには、その間合いはあまりにも近すぎた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...