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第五章 都市国家の聖獣
それいけ、キサラギ砲
しおりを挟む22世紀の地球においてレールガンはごく一般的な兵器であった。
大きなものは艦艇につむ全長10mの超砲、ちいさな者はデザートイーグル程度のサイズの拳銃まで、その技術は戦場でおおきな活躍をすることが期待されていた。
しかし、マナニウムを活用したエネルギー兵器の実戦配備により、連射性能で大きく劣るレールガンの携帯武装としてのニーズは小さくなっていった。
合理的な戦いを求めるうえで、レールガンの活躍する場所は、ミサイルの迎撃を担う超長距離砲か──あるいは超能力者の狙撃くらいしか残ってはいなかった。
────
荒垣シェパードは遥か地下の戦いから一時撤退をすることにした。
神の墓で発掘したスルトを使い捨て、直径15m、深さ300mの縦穴をクリスト・カトレアの市街地に穿った。
仮にもパーフェクトデザインとヒーリングを保有する伊介天成が、その程度で死んだとは思っていなが、細胞レベルで焼き尽くせば、カテゴリー4の彼では復帰まで時間がかかるとは見込んでいた。
超能力者でない操り人形に関して言えば、間違いなく焼却されただろう。跡形も残ってはいないじゃずだ。──それが荒垣の推測であり、狙っていたことだ。
荒垣の方は、すでに細胞レベルでの焼却から復帰し、こうして上空へ逃れることができていた。復帰が伊介天成よりもずっと速い証拠だ。
(よし、戦況のリセットは完了だね。わっちの架空機関のクールダウンを待って、距離を保ち、アウトレンジで一方的に嬲り殺してやろうかな。あの剣術とやらは危険だからね。そのためには、あの地下通路ではなく、より広い戦場がのぞましい)
荒垣は二重化《ダブル》を解除する。
(これでストレージを40%確保だね。伊介天成は操り人形を失った。大幅な戦力喪失だ、あるいはクールダウンさえ完了すればこちらから乗り込むのもアリかな? うーん、悩ましい。最悪あと5回スルトは使えるが……)
荒垣はゆっくりと一手一手詰めていこうと、思考を働かせる。
すでに戦場離脱した彼にはいくつもの選択肢があるのだ。
「ん?」
空をふわふわと飛ぶ荒垣は、ふと、視線を地上の穴から移動させた。
なんとなくだった。
クリスト・カトレア中央に位置するブラスマント城の方へ視線を向ける。
荒垣の優れた視力は、一瞬で彼女を見つけた。
城の上層、とある一室で荒垣をロックオンする無機物の眼差しを。
荒垣は知っていた。彼女を──キサラギを知っていた。
出会いは数日前のこと。
神々の円卓へ攻撃を仕掛けて来た狼たちを返り討ちにし、逆に催眠で洗脳してやった時ことだ。
超能力者は彼女と会い、試運転時のスルトを2機落とされ、すべての狼を殺され、かつ強烈な打撃を受けた。
その時の記憶が、荒垣の明晰な脳裏を稲妻のように駆け抜けた。
「貴様はあの時の殺戮アンドロ──」
言いかけた瞬間──荒垣の首が飛んだ。
彼我の距離は数百メートルあったはずなのに。
(ッ! 速い──!)
高周波ブレードの刃が、サイコアーマーを抵抗なく一刀両断した。
荒垣は憎しみにうめく。
神経を破壊され、信号が随所に届かない。
サイコキネシスによる浮遊を維持できない。
荒垣はまっすぐに穴の底へと落下していった。
「く、そが、ぁぁぁああ、あ……ッ!」
「グッドエフェクト。キサラギは目標の一時無力化に成功しました」
見事な狙撃を完了したキサラギ。
しかし、彼女は追撃しない。
というか、できなかった。
ブラックコフィンと飛行ユニットを使ったレールガンは、非常に強力な攻撃手段であるが、それゆえにひとつ欠点がある。
レールガンは急に止まれない。
「キサラギはどこまでも飛んでいきます」
超音速で発射されてキサラギは、一瞬で数十キロの遥か彼方へ飛び去ってしまった。
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