「君とは婚約破棄だ」と仰いますが、国の実務は全て私がやっていたのをお忘れですか?~追放された万能令嬢、冷徹辺境伯に才能ごと溺愛される~

eringi

文字の大きさ
3 / 30

第3話 泥棒猫と無能王子、断罪の舞台へ

しおりを挟む
国王陛下と王妃殿下が玉座に着かれ、会場の緊張感は最高潮に達していた。
華やかなファンファーレが鳴り止み、陛下が祝辞を述べるために一歩前へ出ようとした、その時だった。

「父上、お待ちください! 私から、重大な発表があります!」

静寂を切り裂くような大声が響き渡った。
声の主は、もちろんアレク殿下だ。
彼は私の制止も、周囲の空気も、すべてを無視して会場の中央へと進み出た。その腕には、怯えるような仕草をするミナ・パープルをしっかりと抱き寄せている。

国王陛下が眉をひそめた。

「アレク、何事だ。今は建国を祝う神聖な式典の最中であるぞ。戯言なら後にせよ」
「戯言ではありません! これは、この国の正義と未来に関わる重要な問題なのです!」

アレク殿下は芝居がかった仕草で胸を張り、会場中の視線を一身に集めることに成功した。
そう、彼はいつだって自分が主役でなければ気が済まない。たとえそれが、悪役としての舞台であったとしても。

私は壁際の定位置から、その様子を冷ややかに見つめていた。
(始まったわね……)
私の隣では、数人の貴族たちが「またか」「一体何を言い出すんだ」と呆れたように囁き合っている。
しかし、殿下の耳にはそんな雑音は届かない。彼の世界には今、自分と、守るべき愛しい恋人、そして断罪すべき悪女しか存在していないのだから。

「皆の者、よく聞け! 私は今日、ここにいるリーゼロット・アークライト公爵令嬢との婚約を破棄することを宣言する!」

会場が、水を打ったように静まり返った。
誰もが予想だにしなかった――いや、ある意味では予想通りすぎる展開に、言葉を失ったのだ。
一国の王太子が、公的な式典の場で、正当な手続きもなく婚約破棄を叫ぶ。それは前代未聞の醜聞だった。

「アレク! 気でも狂ったか!」
陛下が玉座から立ち上がり、怒声を浴びせる。
「アークライト公爵家との婚約は、先代国王が決めた重要な盟約だ! お前の一存でどうこうできるものではない!」

「いいえ、できます! なぜなら、彼女には未来の王妃となる資格がないからです!」

殿下は勝ち誇ったように鼻を鳴らし、バッと私の方を指差した。

「リーゼロット! 前へ出ろ!」

私は心の中で大きくため息をついた。
ここで拒否して騒ぎを大きくするのは得策ではない。
私は表情を一切崩さず、灰色のドレスの裾をわずかに持ち上げ、静々と中央へ進み出た。
群衆が割れ、道ができる。
その視線は、好奇心、憐憫、そして軽蔑が入り混じった複雑なものだった。

殿下の前、五歩ほどの距離で立ち止まり、私は深く淑女の礼をした。

「お呼びでしょうか、殿下」
「ふん、白々しい! その能面のような顔の下で、何を企んでいる!」

殿下は憎々しげに私を睨みつけた。
その隣で、ミナが「ひっ」と小さな悲鳴を上げ、殿下の背中に隠れる。

「怖い……アレク様、あの目が……私を睨んでいますぅ」
「大丈夫だ、ミナ。僕がついている。この毒婦には指一本触れさせない」

毒婦、と来たか。
国のために睡眠時間を削り、肌荒れと戦いながら公務をこなし続けてきた結果が、毒婦呼ばわりとは。
笑いがこみ上げてきそうになるのを、私は必死に堪えた。

「父上、聞いてください。この女は、その身分と立場を利用し、か弱きミナに対して陰湿な嫌がらせを繰り返してきたのです!」

アレク殿下は、まるで悲劇の英雄のように声を張り上げた。

「ミナの教科書を破り捨てたこと! 彼女の大切なドレスにワインをかけたこと! 階段から突き落とそうとしたこと! これらはすべて、嫉妬に狂ったリーゼロットの仕業です!」

会場がざわめいた。
「まさか、あの堅物な公爵令嬢が?」
「いや、女の嫉妬というのは恐ろしいからな……」
無責任な噂が、さざ波のように広がっていく。

私は無表情のまま、殿下が並べ立てる罪状を聞いていた。
どれもこれも、三流の恋愛小説に出てくるようなありきたりな手口ばかりだ。

(教科書を破り捨てた? その時間は、私は財務省で予算案の修正をしていましたわ)
(ドレスにワイン? その夜は、貴方が投げ出した外交資料の翻訳をしていました)
(階段から突き落とす? ミナ様がご自分で足をもつれさせて転んだのを、私が魔法で助けて差し上げたことをお忘れですか?)

すべてのアリバイは完璧だ。
証人だっている。ハンスをはじめとする侍従たちや、文官たちが私の無実を証明してくれるだろう。
けれど、私は反論しなかった。
「余計な口出しはするな」「喋るな」という殿下の命令を、私はまだ忠実に守っていたからだ。
そして何より、この茶番劇を終わらせるためには、私が悪役を受け入れるのが一番手っ取り早かった。

「……何か言ったらどうだ、リーゼロット! 沈黙は肯定と受け取るぞ!」

殿下が怒鳴る。
私はゆっくりと顔を上げ、静かな声で答えた。

「殿下。殿下は私に『喋るな』と仰いました。私はその命に従っているまでです」
「へ理屈を言うな! やっ、やっぱりお前がやったんだな! ミナをいじめて楽しんでいたんだな!」

殿下の論理は破綻しているが、勢いだけは凄まじい。
ミナが涙ながらに訴える。

「私、リーゼロット様に言われたんですぅ。『身分の低い泥棒猫は、地べたを這いつくばっていればいい』って……ううっ、ひどい……」

ポロポロと嘘泣きの涙を流すミナ。その演技力だけは評価に値するかもしれない。
「泥棒猫」という言葉には思わず反応しそうになったが、私はぐっと堪えた。
人の婚約者を寝取り、公務もせず贅沢三昧している彼女にこそ相応しい称号だが、それを口にするのは品位に関わる。

「聞いたか、父上! これが彼女の本性です! 公爵令嬢という仮面の下に、こんなにも醜い嫉妬心を隠し持っていたのです!」

アレク殿下は、勝利を確信したように叫んだ。
国王陛下は苦渋の表情で私を見た。

「リーゼロットよ。今の訴えに対し、申し開きはあるか?」

王の問いかけ。
これは最後のチャンスだった。
私がここで詳細なアリバイを提示し、業務日誌を証拠として提出すれば、殿下の主張は根底から覆る。殿下とミナの方が窮地に立たされるだろう。

しかし、それをすればどうなるか。
殿下は恥をかき、逆上する。
婚約は継続され、私は再びあの薄暗い執務室に戻り、終わりのない書類の山と格闘する日々が続く。
「未来の王妃」という鎖に繋がれたまま。

(……いいえ。もう結構です)

私は心の中で首を横に振った。
あの、深夜三時の執務室で感じた絶望。
床に散らばった書類を見た時の、糸が切れるような感覚。
あれをもう一度味わうくらいなら、冤罪を被ってでも自由になりたい。

私は陛下に向かって、深く頭を下げた。

「陛下。アレク殿下がそう仰るのであれば、それが真実なのでしょう。私は、殿下の御心に沿えなかった不徳の身でございます」

会場にどよめきが走った。
それは事実上の罪の自白だった。
アークライト公爵家の娘が、嫉妬に狂った悪女であることを認めたのだ。

陛下が目を見開く。
「リーゼロット、本気で言っているのか? お前ほどの理知的な娘が、そのような……」
陛下は私の能力を買っていた。だからこそ、信じられないという顔をしている。

しかし、アレク殿下は鬼の首を取ったように歓喜した。

「見ろ! 認めたぞ! やはりこいつは悪女だ!」

殿下はミナの肩を抱き、高らかに宣言した。

「よって、この場で改めて宣言する! リーゼロット・アークライトとの婚約を破棄し、新たにこのミナ・パープルを私の婚約者とする!」

「おお……なんて素敵なのアレク様ぁ!」
ミナが殿下の首に抱きつく。
衆人環視の中で、二人は熱い抱擁を交わした。
神聖な式典は、完全に三流恋愛劇の舞台と化していた。

その光景を見ながら、私は奇妙なほどの清々しさを感じていた。
終わった。
私の十数年にわたる「王太子妃教育」という名の苦役が、今ここで終わったのだ。
肩の荷が下りるというのは、こういう感覚なのだろうか。

しかし、殿下のシナリオはまだ終わっていなかったようだ。
彼は抱擁を解くと、残忍な笑みを浮かべて私を見下ろした。

「だが、婚約破棄だけでは生温い。王族への不敬、および未来の王妃への危害未遂……その罪は重いぞ」

殿下の目が異様にぎらついている。
彼は私を徹底的に叩きのめし、二度と立ち上がれないようにすることで、自分の正当性を証明しようとしているのだ。
そして、愛するミナに「障害を排除した強い男」として認められたいのだろう。

「リーゼロット・アークライト! 貴様のその性根の腐った心を入れ替えさせるため、そして我が国の正義を示すため、私は貴様に罰を与える!」

会場が息を呑む。
公爵令嬢への罰。謹慎か、修道院送りか。
通常ならその程度だろう。

だが、アレク殿下の口から飛び出した言葉は、その場にいた全員の想像を絶するものだった。

「貴様を国外追放とする!」

会場全体が凍りついた。
国外追放。
それは、国家反逆罪や重大な犯罪を犯した者にのみ適用される、極刑に次ぐ重い罰だ。
単なる令嬢同士の諍い(それも冤罪)で下されるような量刑ではない。

「なっ……アレク、待て! それはあまりにも……!」
さすがに陛下が慌てて止めようとするが、殿下は止まらない。

「いいえ、これくらいでなければ示しがつきません! それに、彼女のような有能……いや、狡賢い女を国内に置いておけば、いつまたミナに害をなすか分かりませんからな!」

殿下はニタニタと笑いながら、私に宣告を突きつけた。

「今すぐだ! 今すぐこの国から出て行け! 荷物をまとめる時間などやらん。着の身着のままで、国境の森へ消えろ!」
「……本気で、仰っているのですか?」

私が問い返すと、殿下は嘲笑った。

「なんだ、今さら命乞いか? 遅い、遅いぞリーゼロット! お前のような可愛げのない女は、魔獣の餌にでもなるのがお似合いだ!」

国境の森。
そこは、凶暴な魔獣が跋扈する危険地帯だ。
身一つで放り出されれば、か弱い令嬢など一日と持たないだろう。
これは実質的な死刑宣告だった。

貴族たちの中からは、さすがに「やりすぎだ」「狂っている」という声が漏れ始めた。
しかし、未来の国王となる王太子の暴走を、面と向かって止められる者はいない。
父である公爵が怒りに震えて飛び出そうとするのを、私は視線だけで制した。
(お父様、動かないで。これは、私が自由になるための儀式なのです)

私はゆっくりと顔を上げた。
表情は崩さない。涙も見せない。
ただ、真っ直ぐにアレク殿下を見つめた。

「……承知いたしました」

静まり返った会場に、私の凛とした声が響く。

「アレク殿下の御命令、謹んでお受けいたします。このリーゼロット、本日ただいまをもちまして、国外へ退去いたします」

「へ……?」
殿下が間の抜けた声を漏らした。
彼は私が泣いて縋り付くか、怒り狂って暴れることを期待していたのだろう。
あまりにあっさりとした承諾に、逆に拍子抜けしたようだ。

「よ、よいのか? もう二度と、この国の土は踏めんのだぞ? 公爵令嬢としての地位も、財産も、すべて失うのだぞ?」
「構いません。殿下がそれを望まれるのでしたら」

私は毅然と言い放った。
失う? いいえ、逆だ。
私はこれから、すべてを得るのだ。
自由を、自分の時間を、そして人間らしい生活を。

「それでは、失礼いたします」

私は優雅にカーテシーをした。
王家に対する、最後の、そして最高の礼儀作法で。
灰色の地味なドレスが、シャンデリアの光を受けて不思議な輝きを放っているように見えたかもしれない。

踵を返し、出口へと歩き出す。
背筋を伸ばし、堂々と。
誰一人として、私に声をかける者はいなかった。
ただ、その異様な光景に圧倒され、道を開けることしかできなかった。

その時、ふと視線を感じて横を見ると、壁際に立っていたジルヴェスター公爵と目が合った。
氷のような青い瞳が、私をじっと見つめている。
彼は微かに頷いたように見えた。
(……待っている)
その瞳がそう語っている気がして、私の胸の奥が小さく熱くなった。

扉の前まで来た私は、一度だけ振り返った。
そこには、呆然とするアレク殿下と、勝ち誇った笑みを浮かべるミナ。
そして、青ざめた顔の国王夫妻がいた。

(さようなら、私の祖国。さようなら、私の青春を搾取した愚かな人たち)

心の中で告別を済ませ、私は重い扉を押し開けた。
外には、冷たい夜風が吹いていた。
それは、自由の匂いがした。

こうして私は、冤罪によって婚約を破棄され、着の身着のままで城を追い出された。
しかし、これが「不幸の始まり」だと誰が言っただろうか?
いいえ、これは「大逆転劇」の幕開けに過ぎないのだ。

城門を出て、闇の向こうへ足を踏み出した私の口元には、誰にも見えない小さな笑みが浮かんでいた。
「せいぜい後悔なさいませ。私が去った後、この国がどうなるか……高みの見物をさせていただきますわ」

続く
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

邪魔者な私なもので

あんど もあ
ファンタジー
婚約者のウィレル様が、私の妹を食事に誘ったと報告をしてきました。なんて親切な方なのでしょう。でも、シェフが家にいるのになぜレストランに行くのですか?  天然な人の良いお嬢さまが、意図せずざまぁをする話。

『婚約破棄?――では、その責任は王国基準で清算いたしましょう』 ~義妹と継母に追い落とされた令嬢は、王妃となって制度ごと裁きます~

しおしお
恋愛
「お前との婚約は破棄する。俺は“真実の愛”を選ぶ」 王立舞踏会の中央でそう宣言したのは、王太子。 隣には涙ぐむ義妹。背後には満足げに微笑む継母。 公爵令嬢アウレリアは、家を奪われ、名誉を奪われ、居場所を奪われた。 ――ですが。 「では、契約に基づき、責任を清算いたしましょう」 泣き崩れることも、取り乱すこともない。 彼女が差し出したのは“感情”ではなく、完璧な契約書。 婚約破棄には代償がある。 署名には意味がある。 信用には重みがある。 それを軽んじた者たちが支払うのは―― 想像を超える“王国基準”の清算。 義妹は称号を失い、 継母は社交界から排除され、 元婚約者は王太子の座すら危うくなる。 そして彼女は―― 「奪われた」のではない。 “選ぶ側”へと立場を変える。 これは、感情で騒がず、 制度で叩き潰す令嬢の物語。 徹底的に。 容赦なく。 そして、二度と同じ愚行が起きぬように。 最強の強ザマァ、ここに開幕。

『皇族を名乗った伯爵家は、帝国に処理されました』 ―天然メイドは、今日も失敗する―

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を経て、静かに屋敷を去った令嬢。 その後に残された伯爵家は、焦燥と虚勢を抱えたまま立て直しを図ろうとする。 だが、思惑はことごとく空回りする。 社交界での小さな失態。 資金繰りの綻び。 信用の揺らぎ。 そして、屋敷の中で起こる“ちょっとした”騒動の数々。 決して大事件ではない。 けれど積み重なれば、笑えない。 一方、帝国では新たな時代が静かに始まろうとしている。 血筋とは何か。 名乗るとは何か。 国家が守るものとは何か。 これは、派手な復讐劇ではない。 怒号も陰謀もない。 ただ―― 立場を取り違えた家が、ゆっくりと現実に追いつかれていく物語。 そして今日も、屋敷では誰かが小さな失敗をする。 世界は静かに、しかし確実に動いている。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

婚約破棄? では、その誠実さはどちらに置いていらしたのですか?

鷹 綾
恋愛
「真実の愛を見つけた。君との婚約は破棄する」 そう告げられたのは、公爵令嬢セリシア・ルヴァリエ。 婚約中にもかかわらず、王太子レオンハルトは義妹ミレイナと密会を重ね、継母は裏で噂を流し、父はそれを黙認していた。 すべてを奪われ、四面楚歌―― けれど、セリシアは泣かなかった。 「婚約破棄はご自由に。ただし、不誠実の代償はお支払いいただきますわ」 証拠を握り、舞踏会で公開断罪。 王家を欺いた王太子は廃嫡。 義妹は社交界から追放。 継母は財産凍結。 父は爵位返上。 そして最後に縋りついたのは――かつて彼女を捨てた男。 「やり直せないか」 「誠実さを選ばなかったのは、あなたですわ」 振り向かぬ令嬢と、すべてを失った元王太子。 救済なし、後悔のみ。 これは、不誠実を踏み台にしようとした者たちが、 徹底的に転落する物語。 --

偽りの婚約者だった私を捨てた公爵様が、今さら泣きついてきてももう遅いです

exdonuts
恋愛
かつて政略で婚約した公爵令息・レオンハルトに、一方的に婚約破棄を言い渡された令嬢クラリス。彼は別の令嬢に夢中になり、クラリスを冷たく切り捨てた。 だが、国外赴任で彼の目が届かなくなった数年後、クラリスは実家を離れて自らの力で商会を立ち上げ、華やかに再び社交界へと舞い戻る。 彼女の隣には、かつて一途に彼女を支え続けた騎士がいた――。 自分の過ちを悟った元婚約者が戻ってきても、もう遅い。 これは、冷遇された令嬢が愛と誇りを取り戻す“ざまぁ”と“溺愛”の物語。

無能と婚約破棄された公爵令嬢ですが、冷徹皇帝は有能より“無害”を選ぶそうです

鷹 綾
恋愛
「君は普通だ。……いや、普通以下だ」 王太子にそう言われ、婚約を破棄された公爵令嬢フォウ。 王国でも屈指の有能一族に生まれながら、彼女だけは“平凡”。 兄は天才、妹は可憐で才色兼備、両親も社交界の頂点―― そんな家の中で「普通」は“無能”と同義だった。 王太子が選んだのは、有能で華やかな妹。 だがその裏で、兄は教会を敵に回し、父は未亡人の名誉を踏みにじり、母は国家機密を売り、妹は不貞を重ね、そして王太子は――王を越えようとした。 越えた者から崩れていく。 やがて王太子は廃嫡、公爵家は解体。 ただ一人、何も奪わず、何も越えなかったフォウだけが切り離される。 そんな彼女に手を差し伸べたのは、隣国の若き冷徹皇帝。 「有能は制御が難しい。無害のほうが使える」 駒として選ばれたはずの“無能な令嬢”。 けれど―― 越えなかった彼女こそ、最後まで壊れなかった。

婚約を奪った義妹は王太子妃になりましたが、王子が廃嫡され“廃嫡王子の妻”になりました

鷹 綾
恋愛
「お姉様には、こちらの方がお似合いですわ」 そう言って私の婚約者を奪ったのは、可憐で愛らしい義妹でした。 王子に見初められ、王太子妃となり、誰もが彼女の勝利を疑わなかった――あの日までは。 私は“代わり”の婚約者を押し付けられ、笑いものにされ、社交界の端に追いやられました。 けれど、選ばれなかったことは、終わりではありませんでした。 華やかな王宮。 厳しい王妃許育。 揺らぐ王家の威信。 そして――王子の重大な過ち。 王太子の座は失われ、運命は静かに反転していく。 離縁を望んでも叶わない義妹。 肩書きを失ってなお歩き直す王子。 そして、奪われたはずの私が最後に選び取った人生。 ざまあは、怒鳴り声ではなく、選択の積み重ねで訪れる。 婚約を奪われた姉が、静かに価値を積み上げていく王宮逆転劇。

処理中です...