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第15話 公爵様が私のためにドレスを特注してくれた
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「……来たな」
アレクセイ様が短く呟いた。
私たちは今、ノースエンド領内にある『嘆きの谷』を見下ろす、断崖絶壁の上に立っていた。
ここは普段、雪崩の危険があるために立ち入り禁止区域となっている場所だが、今日だけはアレクセイ様が強固な結界を張り、安全な「特等席」へと変貌させていた。
結界の中は風もなく、ポカポカと暖かい。
足元にはふかふかの絨毯が敷かれ、テーブルセットまで用意されている。
私たちは優雅に紅茶を飲みながら、眼下の谷底を蟻のように這い回る集団を見下ろしていた。
「あれが、カイル殿下ですか?」
「ああ。ずいぶんと必死な形相だ」
アレクセイ様が渡してくれた遠見の魔導眼鏡(オペラグラスのようなもの)を覗き込む。
谷底の街道沿いにある岩陰に、カイル殿下と、薄汚い格好をした男たちが潜んでいるのが見えた。
カイル殿下は苛立った様子で貧乏ゆすりをし、時折、懐中時計を確認している。
「予定時刻通りだ。……役者が揃ったな」
アレクセイ様の合図と同時に、谷の向こうから、ガラガラと車輪の音を響かせて輸送隊の馬車列が現れた。
幌をかけた五十台もの馬車。
御者台には、フードを目深に被った兵士たちが座っている。
「来たぞ! やれっ!」
カイル殿下の号令が、風に乗って微かに聞こえた気がした。
岩陰から一斉に傭兵たちが飛び出し、先頭の馬車に襲いかかる。
「ヒャッハー! 金だ、女だ、食料だー!」
「止まれ止まれぇ!」
傭兵たちは弓を引き、威嚇射撃を行う。
本来なら、ここで輸送隊は混乱し、悲鳴が上がるはずだ。
しかし、御者たちはピクリとも動じない。
それどころか、馬車の速度を落とすことすらしなかった。
「な、なんだ? 止まらねぇぞ!」
「構わん! タイヤを狙え!」
傭兵の一人が放った矢が、先頭馬車の車輪に突き刺さる。
ガクンと馬車が傾き、停止した。
カイル殿下が勝ち誇ったように飛び出してくる。
「そこまでだ! この輸送隊は、王家が接収する!」
彼は剣を抜き、馬車の幌に向かって叫んだ。
「エミリア! いるんだろう! 俺だ、カイルだ! 迎えに来てやったぞ!」
シーン……。
返事はない。
ただ、冷たい風が吹き抜けるだけだ。
「照れているのか? それとも怖がっているのか? 大丈夫だ、俺が守ってやる。さあ、出てこい!」
カイル殿下が痺れを切らし、自ら馬車の幌を乱暴に開け放った。
その瞬間。
「え?」
カイル殿下の間抜けな声が響いた。
私も眼鏡越しに見て、思わず吹き出しそうになった。
馬車の中にぎっしりと詰まっていたのは、愛しいエミリアでも、黄金の小麦でもなかった。
そこにあったのは――大量の「雪だるま」だったのだ。
しかも、ただの雪だるまではない。
へのへのもへじのような顔が描かれ、胸には『残念でした』『出直してこい』という札がかけられている。
「な、なんだこれはぁぁぁ!?」
カイル殿下が絶叫した。
すると、雪だるまたちが一斉にボヨンと動き出し、魔法仕掛けの口を開いた。
『カイル殿下、万歳!』
『借金返済、頑張って!』
『ソフィア様によろしく!』
けたたましい笑い声と共に、雪だるまたちが自爆した。
ドカーン!!
爆発といっても火薬ではない。中に入っていたのは、大量の小麦粉と、粘着質のネバネバした樹液だ。
「ぶべっ!?」
カイル殿下は真っ白な粉まみれになり、さらにベトベトの液を浴びて、まるで巨大な揚げ物の衣をつける前の状態になってしまった。
後続の馬車からも、次々と雪だるま兵士たちが飛び出し、傭兵たちに小麦粉爆弾を投げつける。
「うわあああ! なんだこれ、前が見えねぇ!」
「目が、目がぁぁぁ!」
阿鼻叫喚の地獄絵図……いや、コント映像が繰り広げられている。
傭兵たちはパニックに陥り、同士討ちを始めている者もいる。
「……ぷっ、あはははは!」
私はたまらず笑ってしまった。
あまりにも滑稽で、あまりにも間抜けだ。
これが、かつて私が心を痛めていた相手だなんて。
「気に入ってもらえたか? エミリア」
「はい! 最高です! あの雪だるま、誰が作ったんですか?」
「城の兵士たちが、昨夜徹夜で楽しみながら作っていたよ。『殿下への特製プレゼントだ』とな」
アレクセイ様も楽しそうに笑い、冷めた紅茶を一口飲んだ。
「さて、仕上げといこうか」
彼は右手を軽く持ち上げた。
指先から、青白い魔力の光が立ち昇る。
「カイル。お前が用意した『魔封じの毒』……試してみるか?」
谷底のカイル殿下は、小麦粉まみれの顔で空を見上げた。
断崖の上に立つ私たちの姿に気づいたようだ。
「ア、アレクセイ……! 貴様、またしても!」
「その毒矢で私を狙うつもりだったのだろう? だが残念だったな。お前の雇った傭兵の中に、私の部下が紛れ込んでいたのだよ」
アレクセイ様の言葉に、カイル殿下は青ざめた。
傭兵の一人がニヤリと笑い、カイル殿下の背後から矢筒を奪い取って、谷底の川へ投げ捨てた。
「なっ……裏切り者ぉぉぉ!」
「金で動く者は、より高い金で裏切る。常識だぞ、王子様」
アレクセイ様が指をパチンと鳴らす。
その瞬間、谷底の気温が一気に急降下した。
空気が凍りつき、地面から氷の棘が無数に生え出し、カイル殿下たちの退路を塞いでいく。
それはまるで、巨大な氷の檻のようだった。
「ひぃっ! こ、殺される!」
「安心しろ。殺しはしない。……だが、少しばかり『お仕置き』が必要だな」
アレクセイ様が手を振り下ろすと、頭上の雪庇が崩れ落ちた。
ドササササッ!
大量の雪が、カイル殿下たちの頭上に降り注ぐ。
雪崩だ。ただし、計算し尽くされた小規模なもので、命までは奪わない程度の量だ。
「ぎゃあああああ!」
カイル殿下と傭兵たちは、雪の波に飲まれ、もみくちゃにされながら谷の下流へと流されていった。
小麦粉と樹液でコーティングされた彼らが雪にまみれれば、どうなるか。
それはもう、立派な「人間雪だるま」の完成である。
「……ふぅ。掃除完了だ」
アレクセイ様は手を払い、満足げに頷いた。
谷底は静寂を取り戻し、あとには巨大な雪の塊がいくつも転がっているだけだった。
「あの人たち、どうなるんですか?」
「下流の村で網にかかるだろう。村人たちには『害獣がかかったら王都へ送り返すように』と伝えてある。着払い(コレクト)でな」
アレクセイ様の徹底ぶりに、私は戦慄しつつも、胸がすっとするのを感じた。
「ありがとうございます、アレクセイ様。私、もうカイル殿下のことは何とも思っていません。……ただの、面白い道化師にしか見えませんでした」
「そうか。それでいい」
アレクセイ様は優しく私の肩を抱き寄せた。
「過去は雪と共に流れた。……さあ、城へ帰ろう。本日のメインイベントは、これからだ」
「メインイベント?」
「ああ。こんな薄汚い茶番劇よりも、もっと美しく、価値のあるものを見せてやる」
* * *
城に戻ると、アレクセイ様は私を東の塔にある一室へと案内した。
そこは普段、立ち入りが制限されている部屋だ。
重厚な扉の前で、彼は立ち止まり、少しだけ緊張した面持ちで私を見た。
「エミリア。以前、君に『贈りたいものがある』と言ったのを覚えているか」
「はい。お祭りのフィナーレで、と仰っていましたね」
「予定を早めた。……明日の舞踏会で、君にこれを着てほしいんだ」
彼が扉を開ける。
部屋の中に入った瞬間、私は息を呑んだ。
広い部屋の中央に、一台のトルソーが置かれている。
そこに飾られていたのは、この世のものとは思えないほど美しいドレスだった。
「これは……」
言葉が出ない。
生地は、夜空を切り取ったかのような深いミッドナイトブルー。
そこには無数の極小のダイヤモンドが散りばめられ、まるで本物の星空のように瞬いている。
裾に向かって淡いグラデーションがかかり、雪の結晶を模した銀糸の刺繍が施されていた。
デザインは洗練されていて、肩や背中のラインを美しく見せるカッティングがなされているが、決して下品ではなく、むしろ高貴な気品が漂っている。
「私がデザインし、領内最高峰の職人たちに作らせた」
アレクセイ様が背後から近づき、そっとドレスの布地に触れた。
「生地には、最高級のシルクと、防寒・防刃の魔法を編み込んだ『ミスリル繊維』を使っている。見た目は軽やかだが、鋼鉄の鎧よりも頑丈だ」
「よ、鎧ですか!?」
「ああ。さらに、襟元のレースには状態異常無効化の魔法陣を、ウエストのリボンには自動結界展開の術式を組み込んである。これを着ていれば、ドラゴンのブレスでも防げるはずだ」
アレクセイ様の説明が、だんだん物騒になっていく。
でも、その過保護すぎる機能の数々が、彼なりの深い愛情の裏返しなのだと分かって、愛おしさが込み上げてくる。
「アレクセイ様……。こんなに素敵なドレス、私にはもったいないです」
「もったいない? とんでもない」
彼は私の肩を両手で掴み、強い瞳で見つめた。
「このドレスは、君のために存在するんだ。君の瞳の色、君の肌の白さ、そして君の持つ清らかな魔力……すべてを引き立てるために設計した。世界中のどんな宝石よりも、君のほうが価値がある」
「っ……」
熱い言葉に、またしても顔が赤くなる。
彼は本当に、歯の浮くような台詞を真顔で、しかも心からの本音として言ってくるから困る。
「さあ、着てみてくれないか。サイズは完璧なはずだが、微調整が必要なら職人を待機させてある」
促されて、私はメイドたちの手助けを借りて試着室へと入った。
ドレスに袖を通す。
驚くほど肌触りが良く、そして軽い。
ミスリル繊維だとか、鎧だとか言っていたけれど、羽衣のように体に馴染む。
背中のファスナーが上げられ、鏡の前に立つ。
「……わぁ」
自分でも見惚れてしまうほどだった。
鏡の中にいるのは、地味で自信のなかった「元聖女」ではない。
夜空と星を纏い、氷の女神のように輝く一人の女性だった。
ウエストのラインも、最近の「幸せ太り(というほどでもないが)」のおかげで、女性らしい丸みを帯びて美しく見える。
「エミリア様……! 言葉もございません!」
「なんてお美しい……!」
メイドたちが涙ぐんで拍手してくれる。
私は深呼吸をして、アレクセイ様の待つ部屋へと戻った。
カーテンを開け、彼の前に姿を現す。
アレクセイ様は窓辺に立っていたが、私の足音に気づいて振り返った。
そして、固まった。
目が大きく見開かれ、口が少しだけ開いている。
いつも冷静沈着な彼が、完全に思考停止しているように見えた。
「……アレクセイ様? あの、似合いませんでしょうか……?」
不安になって尋ねると、彼はハッとして、慌てて数歩近づいてきた。
その動きはぎこちなく、まるで初めて恋をした少年のような動揺が見える。
「……似合う、どころの話ではない」
彼は私の目の前で立ち止まり、震える手で私の頬に触れた。
「美しい。……美しすぎて、直視できないほどだ」
「大げさですよ」
「大げさなものか。今すぐこの部屋に鍵をかけて、誰にも見せたくないくらいだ。……私だけのものにしておきたい」
彼の瞳の奥に、暗く熱い独占欲の炎が揺らめいているのが分かった。
ゾクッとするような色気。
彼はゆっくりと顔を近づけ、私の額に、そして瞼に口づけを落とした。
「このドレスの名前は『氷雪の聖女(スノー・セイント)』だ。だが、君が着ることで、それは『春を呼ぶ女神』に変わったな」
「アレクセイ様……ありがとう。本当に、嬉しいです」
私は彼の胸に顔を埋めた。
ミスリル繊維の感触ではなく、彼自身の体温と心音が伝わってくる。
「明日の舞踏会……これでお前のデビューだ。ノースエンドの、いや、次期公爵夫人としてのな」
次期公爵夫人。
その響きに、胸が高鳴る。
もう迷いはない。
私はこの人と生きていく。
このノースエンドの地で、氷の公爵様の隣で。
「はい。あなたの隣に立っても恥ずかしくないよう、胸を張って歩きます」
私が顔を上げて微笑むと、彼は愛おしそうに目を細め、今度は唇に深く口づけをした。
「……ああ、そうだ。もう一つ、君のために用意したものがある」
「まだあるんですか?」
「ドレスに合わせるアクセサリーだ。こればかりは、私の手作りというわけにはいかなかったが」
彼が取り出したのは、ベルベットの小箱だった。
パカッと開けると、そこには大粒のサファイアとダイヤモンドで作られた、豪奢なネックレスとイヤリングが収まっていた。
中央のサファイアは、先日のお忍びデートで彼が選んでくれた髪飾りと同じ、深い青色をしている。
いや、それよりもさらに色が濃く、魔力のような輝きを放っている。
「これは、ヴォルグ家に代々伝わる『氷狼の瞳』だ。当主の伴侶となる女性だけが身につけることを許される」
「えっ、そんな貴重なものを……!」
「君以外に誰がいる。……受け取ってくれるか?」
それは、実質的なプロポーズだった。
正式な言葉はまだかもしれないけれど、その重みと覚悟は十分に伝わってくる。
「……はい。喜んで」
アレクセイ様は箱からネックレスを取り出し、私の背後に回ってつけてくれた。
冷たい宝石が肌に触れる。
留め具がカチリと音を立てた瞬間、体の中に不思議な力が流れ込んでくるのを感じた。
守られている。
彼のご先祖様たちからも、そして彼からも。
「完璧だ」
彼は正面に戻り、満足げに私を眺めた。
「これで明日の準備は整った。……エミリア、覚悟しておけよ」
「覚悟、ですか?」
「明日の舞踏会で、私は世界中に宣言するつもりだ。君が私の最愛の人であり、このノースエンドの希望であることを。……もう二度と、誰にも『無能』だなんて言わせない」
彼の力強い宣言に、私は静かに頷いた。
「はい。……私も、宣言します。私が一番、アレクセイ様を愛していると」
言った瞬間、アレクセイ様の顔がボッと赤くなった。
珍しく虚を突かれたようだ。
「……君には敵わないな」
彼は苦笑し、再び私を抱きしめた。
窓の外では、雪雲が去り、満天の星空が広がっていた。
明日はきっと、素晴らしい日になる。
カイル殿下が泥まみれで流されていった下流の村のことは少し心配だけれど(主に村人の精神衛生的な意味で)、今の私には、この幸せな時間を噛み締めることで精一杯だった。
こうして、波乱の「襲撃イベント」はアレクセイ様の圧勝で幕を閉じ、いよいよ私たちの新しい門出となる舞踏会が始まろうとしていた。
その頃、下流の村では。
「おーい、川から変な白い塊が流れてきたぞー!」
「うわっ、中から人が! 粉まみれだ!」
「こりゃあタヌキの化身か?」
「いや、着払いで王都へ送れって領主様の言いつけだ。箱詰めしろ!」
という、てんやわんやの騒ぎになっていたことは、言うまでもない。
続く
アレクセイ様が短く呟いた。
私たちは今、ノースエンド領内にある『嘆きの谷』を見下ろす、断崖絶壁の上に立っていた。
ここは普段、雪崩の危険があるために立ち入り禁止区域となっている場所だが、今日だけはアレクセイ様が強固な結界を張り、安全な「特等席」へと変貌させていた。
結界の中は風もなく、ポカポカと暖かい。
足元にはふかふかの絨毯が敷かれ、テーブルセットまで用意されている。
私たちは優雅に紅茶を飲みながら、眼下の谷底を蟻のように這い回る集団を見下ろしていた。
「あれが、カイル殿下ですか?」
「ああ。ずいぶんと必死な形相だ」
アレクセイ様が渡してくれた遠見の魔導眼鏡(オペラグラスのようなもの)を覗き込む。
谷底の街道沿いにある岩陰に、カイル殿下と、薄汚い格好をした男たちが潜んでいるのが見えた。
カイル殿下は苛立った様子で貧乏ゆすりをし、時折、懐中時計を確認している。
「予定時刻通りだ。……役者が揃ったな」
アレクセイ様の合図と同時に、谷の向こうから、ガラガラと車輪の音を響かせて輸送隊の馬車列が現れた。
幌をかけた五十台もの馬車。
御者台には、フードを目深に被った兵士たちが座っている。
「来たぞ! やれっ!」
カイル殿下の号令が、風に乗って微かに聞こえた気がした。
岩陰から一斉に傭兵たちが飛び出し、先頭の馬車に襲いかかる。
「ヒャッハー! 金だ、女だ、食料だー!」
「止まれ止まれぇ!」
傭兵たちは弓を引き、威嚇射撃を行う。
本来なら、ここで輸送隊は混乱し、悲鳴が上がるはずだ。
しかし、御者たちはピクリとも動じない。
それどころか、馬車の速度を落とすことすらしなかった。
「な、なんだ? 止まらねぇぞ!」
「構わん! タイヤを狙え!」
傭兵の一人が放った矢が、先頭馬車の車輪に突き刺さる。
ガクンと馬車が傾き、停止した。
カイル殿下が勝ち誇ったように飛び出してくる。
「そこまでだ! この輸送隊は、王家が接収する!」
彼は剣を抜き、馬車の幌に向かって叫んだ。
「エミリア! いるんだろう! 俺だ、カイルだ! 迎えに来てやったぞ!」
シーン……。
返事はない。
ただ、冷たい風が吹き抜けるだけだ。
「照れているのか? それとも怖がっているのか? 大丈夫だ、俺が守ってやる。さあ、出てこい!」
カイル殿下が痺れを切らし、自ら馬車の幌を乱暴に開け放った。
その瞬間。
「え?」
カイル殿下の間抜けな声が響いた。
私も眼鏡越しに見て、思わず吹き出しそうになった。
馬車の中にぎっしりと詰まっていたのは、愛しいエミリアでも、黄金の小麦でもなかった。
そこにあったのは――大量の「雪だるま」だったのだ。
しかも、ただの雪だるまではない。
へのへのもへじのような顔が描かれ、胸には『残念でした』『出直してこい』という札がかけられている。
「な、なんだこれはぁぁぁ!?」
カイル殿下が絶叫した。
すると、雪だるまたちが一斉にボヨンと動き出し、魔法仕掛けの口を開いた。
『カイル殿下、万歳!』
『借金返済、頑張って!』
『ソフィア様によろしく!』
けたたましい笑い声と共に、雪だるまたちが自爆した。
ドカーン!!
爆発といっても火薬ではない。中に入っていたのは、大量の小麦粉と、粘着質のネバネバした樹液だ。
「ぶべっ!?」
カイル殿下は真っ白な粉まみれになり、さらにベトベトの液を浴びて、まるで巨大な揚げ物の衣をつける前の状態になってしまった。
後続の馬車からも、次々と雪だるま兵士たちが飛び出し、傭兵たちに小麦粉爆弾を投げつける。
「うわあああ! なんだこれ、前が見えねぇ!」
「目が、目がぁぁぁ!」
阿鼻叫喚の地獄絵図……いや、コント映像が繰り広げられている。
傭兵たちはパニックに陥り、同士討ちを始めている者もいる。
「……ぷっ、あはははは!」
私はたまらず笑ってしまった。
あまりにも滑稽で、あまりにも間抜けだ。
これが、かつて私が心を痛めていた相手だなんて。
「気に入ってもらえたか? エミリア」
「はい! 最高です! あの雪だるま、誰が作ったんですか?」
「城の兵士たちが、昨夜徹夜で楽しみながら作っていたよ。『殿下への特製プレゼントだ』とな」
アレクセイ様も楽しそうに笑い、冷めた紅茶を一口飲んだ。
「さて、仕上げといこうか」
彼は右手を軽く持ち上げた。
指先から、青白い魔力の光が立ち昇る。
「カイル。お前が用意した『魔封じの毒』……試してみるか?」
谷底のカイル殿下は、小麦粉まみれの顔で空を見上げた。
断崖の上に立つ私たちの姿に気づいたようだ。
「ア、アレクセイ……! 貴様、またしても!」
「その毒矢で私を狙うつもりだったのだろう? だが残念だったな。お前の雇った傭兵の中に、私の部下が紛れ込んでいたのだよ」
アレクセイ様の言葉に、カイル殿下は青ざめた。
傭兵の一人がニヤリと笑い、カイル殿下の背後から矢筒を奪い取って、谷底の川へ投げ捨てた。
「なっ……裏切り者ぉぉぉ!」
「金で動く者は、より高い金で裏切る。常識だぞ、王子様」
アレクセイ様が指をパチンと鳴らす。
その瞬間、谷底の気温が一気に急降下した。
空気が凍りつき、地面から氷の棘が無数に生え出し、カイル殿下たちの退路を塞いでいく。
それはまるで、巨大な氷の檻のようだった。
「ひぃっ! こ、殺される!」
「安心しろ。殺しはしない。……だが、少しばかり『お仕置き』が必要だな」
アレクセイ様が手を振り下ろすと、頭上の雪庇が崩れ落ちた。
ドササササッ!
大量の雪が、カイル殿下たちの頭上に降り注ぐ。
雪崩だ。ただし、計算し尽くされた小規模なもので、命までは奪わない程度の量だ。
「ぎゃあああああ!」
カイル殿下と傭兵たちは、雪の波に飲まれ、もみくちゃにされながら谷の下流へと流されていった。
小麦粉と樹液でコーティングされた彼らが雪にまみれれば、どうなるか。
それはもう、立派な「人間雪だるま」の完成である。
「……ふぅ。掃除完了だ」
アレクセイ様は手を払い、満足げに頷いた。
谷底は静寂を取り戻し、あとには巨大な雪の塊がいくつも転がっているだけだった。
「あの人たち、どうなるんですか?」
「下流の村で網にかかるだろう。村人たちには『害獣がかかったら王都へ送り返すように』と伝えてある。着払い(コレクト)でな」
アレクセイ様の徹底ぶりに、私は戦慄しつつも、胸がすっとするのを感じた。
「ありがとうございます、アレクセイ様。私、もうカイル殿下のことは何とも思っていません。……ただの、面白い道化師にしか見えませんでした」
「そうか。それでいい」
アレクセイ様は優しく私の肩を抱き寄せた。
「過去は雪と共に流れた。……さあ、城へ帰ろう。本日のメインイベントは、これからだ」
「メインイベント?」
「ああ。こんな薄汚い茶番劇よりも、もっと美しく、価値のあるものを見せてやる」
* * *
城に戻ると、アレクセイ様は私を東の塔にある一室へと案内した。
そこは普段、立ち入りが制限されている部屋だ。
重厚な扉の前で、彼は立ち止まり、少しだけ緊張した面持ちで私を見た。
「エミリア。以前、君に『贈りたいものがある』と言ったのを覚えているか」
「はい。お祭りのフィナーレで、と仰っていましたね」
「予定を早めた。……明日の舞踏会で、君にこれを着てほしいんだ」
彼が扉を開ける。
部屋の中に入った瞬間、私は息を呑んだ。
広い部屋の中央に、一台のトルソーが置かれている。
そこに飾られていたのは、この世のものとは思えないほど美しいドレスだった。
「これは……」
言葉が出ない。
生地は、夜空を切り取ったかのような深いミッドナイトブルー。
そこには無数の極小のダイヤモンドが散りばめられ、まるで本物の星空のように瞬いている。
裾に向かって淡いグラデーションがかかり、雪の結晶を模した銀糸の刺繍が施されていた。
デザインは洗練されていて、肩や背中のラインを美しく見せるカッティングがなされているが、決して下品ではなく、むしろ高貴な気品が漂っている。
「私がデザインし、領内最高峰の職人たちに作らせた」
アレクセイ様が背後から近づき、そっとドレスの布地に触れた。
「生地には、最高級のシルクと、防寒・防刃の魔法を編み込んだ『ミスリル繊維』を使っている。見た目は軽やかだが、鋼鉄の鎧よりも頑丈だ」
「よ、鎧ですか!?」
「ああ。さらに、襟元のレースには状態異常無効化の魔法陣を、ウエストのリボンには自動結界展開の術式を組み込んである。これを着ていれば、ドラゴンのブレスでも防げるはずだ」
アレクセイ様の説明が、だんだん物騒になっていく。
でも、その過保護すぎる機能の数々が、彼なりの深い愛情の裏返しなのだと分かって、愛おしさが込み上げてくる。
「アレクセイ様……。こんなに素敵なドレス、私にはもったいないです」
「もったいない? とんでもない」
彼は私の肩を両手で掴み、強い瞳で見つめた。
「このドレスは、君のために存在するんだ。君の瞳の色、君の肌の白さ、そして君の持つ清らかな魔力……すべてを引き立てるために設計した。世界中のどんな宝石よりも、君のほうが価値がある」
「っ……」
熱い言葉に、またしても顔が赤くなる。
彼は本当に、歯の浮くような台詞を真顔で、しかも心からの本音として言ってくるから困る。
「さあ、着てみてくれないか。サイズは完璧なはずだが、微調整が必要なら職人を待機させてある」
促されて、私はメイドたちの手助けを借りて試着室へと入った。
ドレスに袖を通す。
驚くほど肌触りが良く、そして軽い。
ミスリル繊維だとか、鎧だとか言っていたけれど、羽衣のように体に馴染む。
背中のファスナーが上げられ、鏡の前に立つ。
「……わぁ」
自分でも見惚れてしまうほどだった。
鏡の中にいるのは、地味で自信のなかった「元聖女」ではない。
夜空と星を纏い、氷の女神のように輝く一人の女性だった。
ウエストのラインも、最近の「幸せ太り(というほどでもないが)」のおかげで、女性らしい丸みを帯びて美しく見える。
「エミリア様……! 言葉もございません!」
「なんてお美しい……!」
メイドたちが涙ぐんで拍手してくれる。
私は深呼吸をして、アレクセイ様の待つ部屋へと戻った。
カーテンを開け、彼の前に姿を現す。
アレクセイ様は窓辺に立っていたが、私の足音に気づいて振り返った。
そして、固まった。
目が大きく見開かれ、口が少しだけ開いている。
いつも冷静沈着な彼が、完全に思考停止しているように見えた。
「……アレクセイ様? あの、似合いませんでしょうか……?」
不安になって尋ねると、彼はハッとして、慌てて数歩近づいてきた。
その動きはぎこちなく、まるで初めて恋をした少年のような動揺が見える。
「……似合う、どころの話ではない」
彼は私の目の前で立ち止まり、震える手で私の頬に触れた。
「美しい。……美しすぎて、直視できないほどだ」
「大げさですよ」
「大げさなものか。今すぐこの部屋に鍵をかけて、誰にも見せたくないくらいだ。……私だけのものにしておきたい」
彼の瞳の奥に、暗く熱い独占欲の炎が揺らめいているのが分かった。
ゾクッとするような色気。
彼はゆっくりと顔を近づけ、私の額に、そして瞼に口づけを落とした。
「このドレスの名前は『氷雪の聖女(スノー・セイント)』だ。だが、君が着ることで、それは『春を呼ぶ女神』に変わったな」
「アレクセイ様……ありがとう。本当に、嬉しいです」
私は彼の胸に顔を埋めた。
ミスリル繊維の感触ではなく、彼自身の体温と心音が伝わってくる。
「明日の舞踏会……これでお前のデビューだ。ノースエンドの、いや、次期公爵夫人としてのな」
次期公爵夫人。
その響きに、胸が高鳴る。
もう迷いはない。
私はこの人と生きていく。
このノースエンドの地で、氷の公爵様の隣で。
「はい。あなたの隣に立っても恥ずかしくないよう、胸を張って歩きます」
私が顔を上げて微笑むと、彼は愛おしそうに目を細め、今度は唇に深く口づけをした。
「……ああ、そうだ。もう一つ、君のために用意したものがある」
「まだあるんですか?」
「ドレスに合わせるアクセサリーだ。こればかりは、私の手作りというわけにはいかなかったが」
彼が取り出したのは、ベルベットの小箱だった。
パカッと開けると、そこには大粒のサファイアとダイヤモンドで作られた、豪奢なネックレスとイヤリングが収まっていた。
中央のサファイアは、先日のお忍びデートで彼が選んでくれた髪飾りと同じ、深い青色をしている。
いや、それよりもさらに色が濃く、魔力のような輝きを放っている。
「これは、ヴォルグ家に代々伝わる『氷狼の瞳』だ。当主の伴侶となる女性だけが身につけることを許される」
「えっ、そんな貴重なものを……!」
「君以外に誰がいる。……受け取ってくれるか?」
それは、実質的なプロポーズだった。
正式な言葉はまだかもしれないけれど、その重みと覚悟は十分に伝わってくる。
「……はい。喜んで」
アレクセイ様は箱からネックレスを取り出し、私の背後に回ってつけてくれた。
冷たい宝石が肌に触れる。
留め具がカチリと音を立てた瞬間、体の中に不思議な力が流れ込んでくるのを感じた。
守られている。
彼のご先祖様たちからも、そして彼からも。
「完璧だ」
彼は正面に戻り、満足げに私を眺めた。
「これで明日の準備は整った。……エミリア、覚悟しておけよ」
「覚悟、ですか?」
「明日の舞踏会で、私は世界中に宣言するつもりだ。君が私の最愛の人であり、このノースエンドの希望であることを。……もう二度と、誰にも『無能』だなんて言わせない」
彼の力強い宣言に、私は静かに頷いた。
「はい。……私も、宣言します。私が一番、アレクセイ様を愛していると」
言った瞬間、アレクセイ様の顔がボッと赤くなった。
珍しく虚を突かれたようだ。
「……君には敵わないな」
彼は苦笑し、再び私を抱きしめた。
窓の外では、雪雲が去り、満天の星空が広がっていた。
明日はきっと、素晴らしい日になる。
カイル殿下が泥まみれで流されていった下流の村のことは少し心配だけれど(主に村人の精神衛生的な意味で)、今の私には、この幸せな時間を噛み締めることで精一杯だった。
こうして、波乱の「襲撃イベント」はアレクセイ様の圧勝で幕を閉じ、いよいよ私たちの新しい門出となる舞踏会が始まろうとしていた。
その頃、下流の村では。
「おーい、川から変な白い塊が流れてきたぞー!」
「うわっ、中から人が! 粉まみれだ!」
「こりゃあタヌキの化身か?」
「いや、着払いで王都へ送れって領主様の言いつけだ。箱詰めしろ!」
という、てんやわんやの騒ぎになっていたことは、言うまでもない。
続く
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