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第23話 偽聖女の暴走と、崩れ落ちる王城
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「……行ってくるわね、ソフィア」
ノースエンド城の医務室。
私はベッドに横たわるかつての義妹に、静かに声をかけた。
魔力の暴走によって魔力回路を焼き切られ、一般人としての魔法すら使えなくなったソフィアは、窓の外の青空を虚ろな瞳で見つめていた。
「……どうして」
カサカサに乾いた唇から、掠れた声が漏れる。
「どうして、助けたの。……死なせてくれればよかったのに」
彼女の言葉には、覇気も、かつての傲慢さも残っていなかった。
あるのは深い絶望と、自己嫌悪だけ。
『原初の種子』に取り込まれ、怪物になりかけた恐怖は、彼女の精神を粉々に砕いていた。
「あなたが死んでも、誰も喜ばないからよ」
「……でも、私は犯罪者よ。国を滅ぼしかけた大罪人よ。……生きていたって、辛いだけだわ」
「そうね。これからの人生は、今までみたいに甘くはないでしょうね」
私は彼女の痩せ細った手に、温かいスープが入ったカップを握らせた。
「ドレスも、宝石も、チヤホヤしてくれる取り巻きも、もういない。あなたは一から、罪を償って生きていかなきゃいけない。……泥にまみれて働き、粗末な食事に感謝し、誰からも褒められない日々を送るのよ」
ソフィアの手が震える。
それは彼女にとって、死ぬことよりも恐ろしい未来かもしれない。
「でもね、ソフィア。……泥だらけになって育てた野菜は、驚くほど美味しいのよ。誰からも褒められなくても、自分が納得できる仕事を終えた後の眠りは、とても深くて心地いいの」
私は彼女の瞳を覗き込んだ。
「生きて、それを知りなさい。それが、あなたの『ざまぁ』よ。……私への贖罪なんていらないから、あなた自身のために生きなさい」
ソフィアは目を見開き、やがて大粒の涙をこぼした。
彼女は何も言わなかったけれど、カップを両手で強く握りしめた。
その温もりが、彼女を現世に繋ぎ止めるアンカーになることを祈って、私は部屋を出た。
* * *
城の玄関ホールでは、すでにアレクセイ様が出発の準備を整えていた。
今回は軍隊を率いていく時間はない。
私とアレクセイ様、そして少数の精鋭のみでの強行軍だ。
使うのは、ソフィアが持ち出した『転移の魔石』の残りカス――それをアレクセイ様が莫大な魔力で無理やり再起動させた、使い捨ての転移ゲートだ。
「準備はいいか、エミリア」
「はい。ソフィアにも言い聞かせてきました」
「……甘いな、君は」
アレクセイ様は呆れたように、けれど優しく私の頭を撫でた。
「だが、そこが君のいいところだ。……行くぞ。王都が地図から消える前に」
私たちは光の渦の中に飛び込んだ。
視界が歪み、浮遊感に襲われる。
次に足がついた時、そこは地獄の入り口だった。
「な……これは……」
転移した先は、王都を見下ろす丘の上だった。
眼下に広がる光景に、私は息を呑んだ。
王都サンクチュアリ。
かつて白亜の城壁と美しい街並みを誇った王国の中心は、今や巨大な亀裂によって寸断されていた。
地面が唸りを上げて揺れ続けている。
地震だ。それも、ただの地震ではない。大地そのものが悲鳴を上げているような、不気味な振動。
そして、その震源地である王城は、見るも無残な姿になっていた。
美しい尖塔はへし折れ、城壁は崩れ落ち、城全体が地盤沈下によって傾いている。
まるで、地下にある何かに引きずり込まれているかのように。
「ギャアアアア!」
「助けてくれぇぇ!」
風に乗って、人々の悲鳴が聞こえてくる。
城下町の人々はパニックに陥り、我先にと城門へ殺到していたが、地面に入った亀裂が退路を断っていた。
「ひどい……」
「『原初の種子』が抜かれたことで、地脈の抑えが効かなくなったんだ。……来るぞ」
アレクセイ様が鋭く警告した直後。
ズゴオオオオオオオッ!!!
王城の直下で、凄まじい爆発が起きた。
土煙と共に、王城の中央部分が粉々に吹き飛び、巨大な穴が開く。
そこから這い出してきたのは、伝説上の怪物――ドラゴンだった。
ただし、絵本に出てくるような美しいドラゴンではない。
岩石とマグマ、そして枯れ木が複雑に絡み合ったような、醜悪で巨大な竜。
その大きさは王城そのものに匹敵し、動くたびにボロボロと岩塊を撒き散らしている。
『グルルルル……オ腹……空イタ……』
重低音の咆哮が響き渡る。
それは言葉というより、大地の怨念そのものだった。
「あれが……地下に封印されていたドラゴン……」
「『アース・ドラゴン(地竜)』の成れ果てだな。本来は土地神として祀られていたはずだが……長い間、祈りも魔力も捧げられず、飢えと狂気に支配されてしまったようだ」
アレクセイ様が剣を抜く。
その刀身が、冷気で白く輝く。
「エミリア、私の後ろにいろ。……まずはあのデカブツを止める」
* * *
私たちは丘を駆け下り、崩壊する王都へと突入した。
アレクセイ様は魔法で瓦礫を凍らせて足場を作り、最短距離で王城を目指す。
城内は阿鼻叫喚だった。
逃げ惑う貴族、腰を抜かす兵士。
誰も彼もが我を失い、将棋倒しになっている。
「ええい、どけ! 私が先だ!」
「王族を優先しろ!」
醜い争いが繰り広げられている。
そんな中、玉座の間があったあたり――今は半壊して空が見えている場所で、国王陛下と数名の騎士が、必死にドラゴンに応戦していた。
「撃て! 撃てぇぇ!」
国王陛下自らが剣を振るっているが、ドラゴンの岩の皮膚には傷一つつかない。
逆に、ドラゴンの尻尾の一撃で、城壁が紙のように薙ぎ払われる。
「ぐわぁぁぁ!」
騎士たちが吹き飛ばされる。
国王陛下も瓦礫の下敷きになりかけた、その時。
「氷盾(アイス・シールド)!」
アレクセイ様の魔法が間に合った。
分厚い氷の壁が出現し、落下してくる天井を支える。
「ヴォ、ヴォルグ公爵!?」
「遅くなりました、陛下。……ずいぶんと風通しの良い城になりましたな」
皮肉を言う余裕があるアレクセイ様に、国王陛下は涙目で縋り付いた。
「よくぞ来てくれた! 見ての通りだ! 地下から化け物が現れて、城が、国が……!」
「分かっております。下がっていてください」
アレクセイ様は私を国王陛下のそばに残し、単身でドラゴンの前へと躍り出た。
「グオォォォ!」
ドラゴンがアレクセイ様に気づき、巨大な前足を振り下ろす。
それは城の塔一つを軽々と粉砕する威力だ。
「遅い」
アレクセイ様は空中で身を翻し、ドラゴンの腕を駆け上がった。
そして、顔面の目の前で剣を閃かせた。
「氷結剣・蒼天(ヘヴンズ・ブルー)!」
剣撃と共に、絶対零度の冷気が叩き込まれる。
ドラゴンの岩の顔面が一瞬で凍結し、ピキピキと音を立てた。
『グガァァァァ!』
ドラゴンが痛みにのたうち回る。
その巨体が暴れるたびに、王城の残骸が崩れ落ちていく。
「エミリア様! 危ない!」
頭上から落ちてきた巨大な柱を、護衛の騎士が弾き飛ばす。
私は国王陛下を支えながら、安全な場所へと誘導した。
「エミリア……! すまない、またそなたに助けられるとは……」
「謝罪は後で聞きます! 今は生き延びてください!」
私は叫びながら、周囲を見渡した。
ひどい状況だ。
城の地下牢があったあたりは完全に崩落している。
あそこには、カイル殿下とゴルダンがいたはずだ。
「……ここから出してくれぇぇぇ!」
瓦礫の隙間から、情けない叫び声が聞こえた。
見ると、鉄格子ごと地面に放り出された檻の中で、カイル殿下が泣き叫んでいた。
奇跡的に無傷のようだが、檻が歪んで出られないらしい。
隣の檻では、ゴルダンが泡を吹いて気絶している。
「カイル殿下!」
「エミリア! エミリアか! 助けてくれ! 俺が悪かった! 何でもするから出してくれぇ!」
みっともなく命乞いをする元婚約者。
かつてあんなに偉そうにしていた彼が、今は檻の中の鼠のように震えている。
私はため息をつき、近くにいた騎士に指示した。
「彼らを安全な場所へ。……罪を償う前に死なれては困りますから」
「はっ!」
騎士たちが檻ごと彼らを運んでいく。
カイル殿下は「愛してるぞぉぉ!」と叫んでいたが、完全に無視した。
* * *
戦況は拮抗していた。
アレクセイ様は圧倒的な強さでドラゴンを翻弄している。
氷の魔法で動きを封じ、鋭い斬撃を浴びせている。
しかし、決定打に欠けていた。
ドラゴンの体は大地そのものだ。
凍らせても、砕いても、すぐに地面から新しい岩石を吸収して再生してしまう。
「チッ、きりがないな。……この城ごと消し飛ばすか?」
アレクセイ様が上空で呟くのが聞こえた。
彼ならそれができるだろう。
極大魔法で、ドラゴンごと王城を氷の塵に変えることくらい。
でも、それでは地下深くに眠る地脈まで傷つけてしまう。
「待ってください、アレクセイ様!」
私は叫んだ。
ドラゴンの咆哮が、ただの怒りではないことに気づいたからだ。
『ヒモジイ……タベタイ……ミタサレタイ……』
その声は、泣いていた。
お腹が空いて、寂しくて、誰も構ってくれない子供のように。
この国の人々が、長い間、大地への感謝を忘れ、魔力を搾取し続けてきた結果だ。
「豊穣の祈り」とは、ただ作物を育てるためだけのものではない。
この大地に眠る神(ドラゴン)に、「ありがとう」「お腹いっぱい食べてね」と魔力を分け与える儀式だったのだ。
私が追放され、ソフィアが偽りの魔法でさらに搾取し、最後に種子の栓が抜かれたことで、空腹の限界を超えたドラゴンが暴走した。
これは討伐すべき敵ではない。
鎮めるべき、荒ぶる神なのだ。
「アレクセイ様! 倒さないで! あの子は、お腹が空いているだけなんです!」
私の声は、爆音にかき消されそうになったが、アレクセイ様の耳には届いたようだ。
彼は空中で動きを止め、私を見た。
「腹が減っているだと? ……この岩塊がか?」
「はい! 私が……私が満たしてあげます!」
私は瓦礫の山を駆け上がり、ドラゴンの正面にある崩れかけたバルコニーへと向かった。
「エミリア! 危険だ! 近づくな!」
アレクセイ様が急降下してくる。
でも、間に合わない。
ドラゴンが私に気づき、巨大な口を開けた。
その奥には、煮えたぎるマグマの炎が見える。
『タベル……マリョク……ヨコセ……!』
ブレスが放たれる寸前。
私は逃げなかった。
杖を捨て、両手を広げて、その巨大な顔を見据えた。
「いい子ね。……ごめんなさい、ずっと放っておいて」
私は微笑んだ。
恐怖はなかった。
ノースエンドで学んだこと。
飢えた者には食事を。凍えた者には温もりを。
それは、相手が人間でも、スノーイーターでも、伝説のドラゴンでも変わらない。
真の聖女とは、世界のお母さんみたいなものなのだから。
「さあ、お食べなさい! 私の特製フルコースよ!」
私は自身の核にある「無尽蔵の魔力源」を解放した。
ノースエンドでソフィアを救った時以上の、限界を超えた出力で。
ドッパァァァァァァン!!!
私の体から、黄金の光の奔流が噴き出した。
それはレーザービームのようにドラゴンの口の中へと吸い込まれていく。
熱い。体が焼けるようだ。
私の魔力は生命力そのもの。それを丸ごと与えるということは、命を削るのと同じことだ。
「エミリアァァァッ!!」
アレクセイ様の悲痛な叫びが聞こえる。
ごめんなさい、アレクセイ様。
でも、これしか方法がないの。
この国を、大地を救うには、誰かが贄にならなければならない。
それが「聖女」の役目だとしたら、私は喜んで引き受ける。
だって私は、あなたの愛したこの世界を守りたいから。
『ウグッ……オオオオオ……!』
ドラゴンが光を飲み込み、その巨体を震わせた。
岩肌の隙間から漏れていたマグマの赤色が、次第に澄んだ黄金色へと変わっていく。
醜悪だった岩の皮膚がボロボロと剥がれ落ち、その下から、ダイヤモンドのように輝く美しい鱗が現れる。
『美味イ……温カイ……』
ドラゴンの咆哮が、柔らかなハミングへと変わっていく。
私の魔力が、枯渇していた地脈を満たし、狂っていた精神を癒やしていく。
(……ああ、力が抜けていく)
視界が霞む。
手足の感覚がなくなる。
魔力を出しすぎた。
もう、立っていられない。
私はゆっくりと後ろへ倒れた。
背中には、冷たい石床の感触ではなく、空虚な空間があった。
足元のバルコニーが崩れ落ちたのだ。
「あっ……」
落下する。
下は、瓦礫の山と、底知れぬ地割れの闇。
落ちれば助からない。
でも、不思議と怖くなかった。
私はやるべきことをやった。
ドラゴンは鎮まった。
みんな助かる。
アレクセイ様も、きっと無事だ。
(ごめんなさい、アレクセイ様。……結婚式、挙げられそうにないです)
薄れゆく意識の中で、彼のアイスブルーの瞳を思い浮かべた。
泣かないでくれるといいな。
新しい奥さんを見つけて、幸せになってほしいな。
……ううん、やっぱり嫌だ。
私だけを見ていてほしい。
そんなわがままなことを考えながら、私は闇へと落ちていった。
「――させるかぁぁぁッ!!」
耳をつんざくような絶叫と共に、猛烈な冷気が私を包み込んだ。
落下が止まる。
強い腕が、私を空中で抱きとめた。
「アレクセイ……様……?」
目を開けると、そこには鬼気迫る表情のアレクセイ様がいた。
彼は風魔法で飛翔し、落下する私を間一髪でキャッチしたのだ。
その顔は蒼白で、瞳には涙が溜まっていた。
「馬鹿者! 大馬鹿者め! 誰が死んでいいと言った! 誰が犠牲になれと言った!」
彼は私を強く、骨が軋むほど強く抱きしめた。
「君がいなければ、世界が救われても意味がない! 君がいない世界など、私がこの手で氷漬けにして砕いてやる!」
彼の叫びが、胸に突き刺さる。
怒っている。本気で怒っている。
でも、その怒りはすべて、私への深い愛から来るものだと分かって、涙が溢れた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝るな! ただ生きていろ! 私のそばにいろ!」
彼は私を抱いたまま、崩壊する王城の上空へと舞い上がった。
眼下では、黄金に輝くドラゴンが、完全に浄化されて美しい姿を取り戻していた。
ドラゴンは私たちを見上げ、静かに頭を垂れた。
『感謝スル……新タナ母ヨ、そして強キ伴侶ヨ』
ドラゴンの体から放たれた光が、崩れた王城を、そして王都全体を包み込む。
破壊された建物が、時間を巻き戻すように修復されていくわけではない。
しかし、裂けた大地は塞がり、瓦礫は花に変わり、荒廃した街は緑豊かな森へと生まれ変わっていく。
それは再生であり、新たな始まりの光景だった。
「見て、エミリア。……君が守った世界だ」
アレクセイ様が私の耳元で囁いた。
私は彼の腕の中で、その美しい光景を焼き付けた。
「綺麗……」
「ああ。だが、君の方が一億倍綺麗だ」
彼はそう言うと、空中で私の唇を奪った。
今までで一番激しく、そして情熱的なキス。
生きていることを確かめ合うような、魂の口づけ。
「……もう二度と離さない。私の目の届かないところへは行かせない」
「はい……もう、どこへも行きません」
私たちは空の上で抱き合い、生まれ変わった王都を見下ろした。
王城は半壊してしまったけれど、そこには新しい希望の芽が吹き始めていた。
私の魔力は空っぽになってしまったけれど、この人の腕の中があれば、すぐに満タンになる気がした。
こうして、王都崩壊の危機は去り、ドラゴンは再び眠りについた(今回は満腹で幸せな眠りだ)。
しかし、この一件で私の「聖女」としての名声は伝説となり、アレクセイ様の「過保護」は神話レベルへと昇華することになるのだが……それはまた別の話。
今はただ、この温もりと、生還の喜びに浸っていたかった。
「帰ろう、エミリア。私たちの城へ」
「はい、あなた」
私たちは、北の空へと飛んだ。
もう振り返らない。
私たちの幸せは、あの雪と氷と、温かい暖炉のある場所にあるのだから。
続く
ノースエンド城の医務室。
私はベッドに横たわるかつての義妹に、静かに声をかけた。
魔力の暴走によって魔力回路を焼き切られ、一般人としての魔法すら使えなくなったソフィアは、窓の外の青空を虚ろな瞳で見つめていた。
「……どうして」
カサカサに乾いた唇から、掠れた声が漏れる。
「どうして、助けたの。……死なせてくれればよかったのに」
彼女の言葉には、覇気も、かつての傲慢さも残っていなかった。
あるのは深い絶望と、自己嫌悪だけ。
『原初の種子』に取り込まれ、怪物になりかけた恐怖は、彼女の精神を粉々に砕いていた。
「あなたが死んでも、誰も喜ばないからよ」
「……でも、私は犯罪者よ。国を滅ぼしかけた大罪人よ。……生きていたって、辛いだけだわ」
「そうね。これからの人生は、今までみたいに甘くはないでしょうね」
私は彼女の痩せ細った手に、温かいスープが入ったカップを握らせた。
「ドレスも、宝石も、チヤホヤしてくれる取り巻きも、もういない。あなたは一から、罪を償って生きていかなきゃいけない。……泥にまみれて働き、粗末な食事に感謝し、誰からも褒められない日々を送るのよ」
ソフィアの手が震える。
それは彼女にとって、死ぬことよりも恐ろしい未来かもしれない。
「でもね、ソフィア。……泥だらけになって育てた野菜は、驚くほど美味しいのよ。誰からも褒められなくても、自分が納得できる仕事を終えた後の眠りは、とても深くて心地いいの」
私は彼女の瞳を覗き込んだ。
「生きて、それを知りなさい。それが、あなたの『ざまぁ』よ。……私への贖罪なんていらないから、あなた自身のために生きなさい」
ソフィアは目を見開き、やがて大粒の涙をこぼした。
彼女は何も言わなかったけれど、カップを両手で強く握りしめた。
その温もりが、彼女を現世に繋ぎ止めるアンカーになることを祈って、私は部屋を出た。
* * *
城の玄関ホールでは、すでにアレクセイ様が出発の準備を整えていた。
今回は軍隊を率いていく時間はない。
私とアレクセイ様、そして少数の精鋭のみでの強行軍だ。
使うのは、ソフィアが持ち出した『転移の魔石』の残りカス――それをアレクセイ様が莫大な魔力で無理やり再起動させた、使い捨ての転移ゲートだ。
「準備はいいか、エミリア」
「はい。ソフィアにも言い聞かせてきました」
「……甘いな、君は」
アレクセイ様は呆れたように、けれど優しく私の頭を撫でた。
「だが、そこが君のいいところだ。……行くぞ。王都が地図から消える前に」
私たちは光の渦の中に飛び込んだ。
視界が歪み、浮遊感に襲われる。
次に足がついた時、そこは地獄の入り口だった。
「な……これは……」
転移した先は、王都を見下ろす丘の上だった。
眼下に広がる光景に、私は息を呑んだ。
王都サンクチュアリ。
かつて白亜の城壁と美しい街並みを誇った王国の中心は、今や巨大な亀裂によって寸断されていた。
地面が唸りを上げて揺れ続けている。
地震だ。それも、ただの地震ではない。大地そのものが悲鳴を上げているような、不気味な振動。
そして、その震源地である王城は、見るも無残な姿になっていた。
美しい尖塔はへし折れ、城壁は崩れ落ち、城全体が地盤沈下によって傾いている。
まるで、地下にある何かに引きずり込まれているかのように。
「ギャアアアア!」
「助けてくれぇぇ!」
風に乗って、人々の悲鳴が聞こえてくる。
城下町の人々はパニックに陥り、我先にと城門へ殺到していたが、地面に入った亀裂が退路を断っていた。
「ひどい……」
「『原初の種子』が抜かれたことで、地脈の抑えが効かなくなったんだ。……来るぞ」
アレクセイ様が鋭く警告した直後。
ズゴオオオオオオオッ!!!
王城の直下で、凄まじい爆発が起きた。
土煙と共に、王城の中央部分が粉々に吹き飛び、巨大な穴が開く。
そこから這い出してきたのは、伝説上の怪物――ドラゴンだった。
ただし、絵本に出てくるような美しいドラゴンではない。
岩石とマグマ、そして枯れ木が複雑に絡み合ったような、醜悪で巨大な竜。
その大きさは王城そのものに匹敵し、動くたびにボロボロと岩塊を撒き散らしている。
『グルルルル……オ腹……空イタ……』
重低音の咆哮が響き渡る。
それは言葉というより、大地の怨念そのものだった。
「あれが……地下に封印されていたドラゴン……」
「『アース・ドラゴン(地竜)』の成れ果てだな。本来は土地神として祀られていたはずだが……長い間、祈りも魔力も捧げられず、飢えと狂気に支配されてしまったようだ」
アレクセイ様が剣を抜く。
その刀身が、冷気で白く輝く。
「エミリア、私の後ろにいろ。……まずはあのデカブツを止める」
* * *
私たちは丘を駆け下り、崩壊する王都へと突入した。
アレクセイ様は魔法で瓦礫を凍らせて足場を作り、最短距離で王城を目指す。
城内は阿鼻叫喚だった。
逃げ惑う貴族、腰を抜かす兵士。
誰も彼もが我を失い、将棋倒しになっている。
「ええい、どけ! 私が先だ!」
「王族を優先しろ!」
醜い争いが繰り広げられている。
そんな中、玉座の間があったあたり――今は半壊して空が見えている場所で、国王陛下と数名の騎士が、必死にドラゴンに応戦していた。
「撃て! 撃てぇぇ!」
国王陛下自らが剣を振るっているが、ドラゴンの岩の皮膚には傷一つつかない。
逆に、ドラゴンの尻尾の一撃で、城壁が紙のように薙ぎ払われる。
「ぐわぁぁぁ!」
騎士たちが吹き飛ばされる。
国王陛下も瓦礫の下敷きになりかけた、その時。
「氷盾(アイス・シールド)!」
アレクセイ様の魔法が間に合った。
分厚い氷の壁が出現し、落下してくる天井を支える。
「ヴォ、ヴォルグ公爵!?」
「遅くなりました、陛下。……ずいぶんと風通しの良い城になりましたな」
皮肉を言う余裕があるアレクセイ様に、国王陛下は涙目で縋り付いた。
「よくぞ来てくれた! 見ての通りだ! 地下から化け物が現れて、城が、国が……!」
「分かっております。下がっていてください」
アレクセイ様は私を国王陛下のそばに残し、単身でドラゴンの前へと躍り出た。
「グオォォォ!」
ドラゴンがアレクセイ様に気づき、巨大な前足を振り下ろす。
それは城の塔一つを軽々と粉砕する威力だ。
「遅い」
アレクセイ様は空中で身を翻し、ドラゴンの腕を駆け上がった。
そして、顔面の目の前で剣を閃かせた。
「氷結剣・蒼天(ヘヴンズ・ブルー)!」
剣撃と共に、絶対零度の冷気が叩き込まれる。
ドラゴンの岩の顔面が一瞬で凍結し、ピキピキと音を立てた。
『グガァァァァ!』
ドラゴンが痛みにのたうち回る。
その巨体が暴れるたびに、王城の残骸が崩れ落ちていく。
「エミリア様! 危ない!」
頭上から落ちてきた巨大な柱を、護衛の騎士が弾き飛ばす。
私は国王陛下を支えながら、安全な場所へと誘導した。
「エミリア……! すまない、またそなたに助けられるとは……」
「謝罪は後で聞きます! 今は生き延びてください!」
私は叫びながら、周囲を見渡した。
ひどい状況だ。
城の地下牢があったあたりは完全に崩落している。
あそこには、カイル殿下とゴルダンがいたはずだ。
「……ここから出してくれぇぇぇ!」
瓦礫の隙間から、情けない叫び声が聞こえた。
見ると、鉄格子ごと地面に放り出された檻の中で、カイル殿下が泣き叫んでいた。
奇跡的に無傷のようだが、檻が歪んで出られないらしい。
隣の檻では、ゴルダンが泡を吹いて気絶している。
「カイル殿下!」
「エミリア! エミリアか! 助けてくれ! 俺が悪かった! 何でもするから出してくれぇ!」
みっともなく命乞いをする元婚約者。
かつてあんなに偉そうにしていた彼が、今は檻の中の鼠のように震えている。
私はため息をつき、近くにいた騎士に指示した。
「彼らを安全な場所へ。……罪を償う前に死なれては困りますから」
「はっ!」
騎士たちが檻ごと彼らを運んでいく。
カイル殿下は「愛してるぞぉぉ!」と叫んでいたが、完全に無視した。
* * *
戦況は拮抗していた。
アレクセイ様は圧倒的な強さでドラゴンを翻弄している。
氷の魔法で動きを封じ、鋭い斬撃を浴びせている。
しかし、決定打に欠けていた。
ドラゴンの体は大地そのものだ。
凍らせても、砕いても、すぐに地面から新しい岩石を吸収して再生してしまう。
「チッ、きりがないな。……この城ごと消し飛ばすか?」
アレクセイ様が上空で呟くのが聞こえた。
彼ならそれができるだろう。
極大魔法で、ドラゴンごと王城を氷の塵に変えることくらい。
でも、それでは地下深くに眠る地脈まで傷つけてしまう。
「待ってください、アレクセイ様!」
私は叫んだ。
ドラゴンの咆哮が、ただの怒りではないことに気づいたからだ。
『ヒモジイ……タベタイ……ミタサレタイ……』
その声は、泣いていた。
お腹が空いて、寂しくて、誰も構ってくれない子供のように。
この国の人々が、長い間、大地への感謝を忘れ、魔力を搾取し続けてきた結果だ。
「豊穣の祈り」とは、ただ作物を育てるためだけのものではない。
この大地に眠る神(ドラゴン)に、「ありがとう」「お腹いっぱい食べてね」と魔力を分け与える儀式だったのだ。
私が追放され、ソフィアが偽りの魔法でさらに搾取し、最後に種子の栓が抜かれたことで、空腹の限界を超えたドラゴンが暴走した。
これは討伐すべき敵ではない。
鎮めるべき、荒ぶる神なのだ。
「アレクセイ様! 倒さないで! あの子は、お腹が空いているだけなんです!」
私の声は、爆音にかき消されそうになったが、アレクセイ様の耳には届いたようだ。
彼は空中で動きを止め、私を見た。
「腹が減っているだと? ……この岩塊がか?」
「はい! 私が……私が満たしてあげます!」
私は瓦礫の山を駆け上がり、ドラゴンの正面にある崩れかけたバルコニーへと向かった。
「エミリア! 危険だ! 近づくな!」
アレクセイ様が急降下してくる。
でも、間に合わない。
ドラゴンが私に気づき、巨大な口を開けた。
その奥には、煮えたぎるマグマの炎が見える。
『タベル……マリョク……ヨコセ……!』
ブレスが放たれる寸前。
私は逃げなかった。
杖を捨て、両手を広げて、その巨大な顔を見据えた。
「いい子ね。……ごめんなさい、ずっと放っておいて」
私は微笑んだ。
恐怖はなかった。
ノースエンドで学んだこと。
飢えた者には食事を。凍えた者には温もりを。
それは、相手が人間でも、スノーイーターでも、伝説のドラゴンでも変わらない。
真の聖女とは、世界のお母さんみたいなものなのだから。
「さあ、お食べなさい! 私の特製フルコースよ!」
私は自身の核にある「無尽蔵の魔力源」を解放した。
ノースエンドでソフィアを救った時以上の、限界を超えた出力で。
ドッパァァァァァァン!!!
私の体から、黄金の光の奔流が噴き出した。
それはレーザービームのようにドラゴンの口の中へと吸い込まれていく。
熱い。体が焼けるようだ。
私の魔力は生命力そのもの。それを丸ごと与えるということは、命を削るのと同じことだ。
「エミリアァァァッ!!」
アレクセイ様の悲痛な叫びが聞こえる。
ごめんなさい、アレクセイ様。
でも、これしか方法がないの。
この国を、大地を救うには、誰かが贄にならなければならない。
それが「聖女」の役目だとしたら、私は喜んで引き受ける。
だって私は、あなたの愛したこの世界を守りたいから。
『ウグッ……オオオオオ……!』
ドラゴンが光を飲み込み、その巨体を震わせた。
岩肌の隙間から漏れていたマグマの赤色が、次第に澄んだ黄金色へと変わっていく。
醜悪だった岩の皮膚がボロボロと剥がれ落ち、その下から、ダイヤモンドのように輝く美しい鱗が現れる。
『美味イ……温カイ……』
ドラゴンの咆哮が、柔らかなハミングへと変わっていく。
私の魔力が、枯渇していた地脈を満たし、狂っていた精神を癒やしていく。
(……ああ、力が抜けていく)
視界が霞む。
手足の感覚がなくなる。
魔力を出しすぎた。
もう、立っていられない。
私はゆっくりと後ろへ倒れた。
背中には、冷たい石床の感触ではなく、空虚な空間があった。
足元のバルコニーが崩れ落ちたのだ。
「あっ……」
落下する。
下は、瓦礫の山と、底知れぬ地割れの闇。
落ちれば助からない。
でも、不思議と怖くなかった。
私はやるべきことをやった。
ドラゴンは鎮まった。
みんな助かる。
アレクセイ様も、きっと無事だ。
(ごめんなさい、アレクセイ様。……結婚式、挙げられそうにないです)
薄れゆく意識の中で、彼のアイスブルーの瞳を思い浮かべた。
泣かないでくれるといいな。
新しい奥さんを見つけて、幸せになってほしいな。
……ううん、やっぱり嫌だ。
私だけを見ていてほしい。
そんなわがままなことを考えながら、私は闇へと落ちていった。
「――させるかぁぁぁッ!!」
耳をつんざくような絶叫と共に、猛烈な冷気が私を包み込んだ。
落下が止まる。
強い腕が、私を空中で抱きとめた。
「アレクセイ……様……?」
目を開けると、そこには鬼気迫る表情のアレクセイ様がいた。
彼は風魔法で飛翔し、落下する私を間一髪でキャッチしたのだ。
その顔は蒼白で、瞳には涙が溜まっていた。
「馬鹿者! 大馬鹿者め! 誰が死んでいいと言った! 誰が犠牲になれと言った!」
彼は私を強く、骨が軋むほど強く抱きしめた。
「君がいなければ、世界が救われても意味がない! 君がいない世界など、私がこの手で氷漬けにして砕いてやる!」
彼の叫びが、胸に突き刺さる。
怒っている。本気で怒っている。
でも、その怒りはすべて、私への深い愛から来るものだと分かって、涙が溢れた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝るな! ただ生きていろ! 私のそばにいろ!」
彼は私を抱いたまま、崩壊する王城の上空へと舞い上がった。
眼下では、黄金に輝くドラゴンが、完全に浄化されて美しい姿を取り戻していた。
ドラゴンは私たちを見上げ、静かに頭を垂れた。
『感謝スル……新タナ母ヨ、そして強キ伴侶ヨ』
ドラゴンの体から放たれた光が、崩れた王城を、そして王都全体を包み込む。
破壊された建物が、時間を巻き戻すように修復されていくわけではない。
しかし、裂けた大地は塞がり、瓦礫は花に変わり、荒廃した街は緑豊かな森へと生まれ変わっていく。
それは再生であり、新たな始まりの光景だった。
「見て、エミリア。……君が守った世界だ」
アレクセイ様が私の耳元で囁いた。
私は彼の腕の中で、その美しい光景を焼き付けた。
「綺麗……」
「ああ。だが、君の方が一億倍綺麗だ」
彼はそう言うと、空中で私の唇を奪った。
今までで一番激しく、そして情熱的なキス。
生きていることを確かめ合うような、魂の口づけ。
「……もう二度と離さない。私の目の届かないところへは行かせない」
「はい……もう、どこへも行きません」
私たちは空の上で抱き合い、生まれ変わった王都を見下ろした。
王城は半壊してしまったけれど、そこには新しい希望の芽が吹き始めていた。
私の魔力は空っぽになってしまったけれど、この人の腕の中があれば、すぐに満タンになる気がした。
こうして、王都崩壊の危機は去り、ドラゴンは再び眠りについた(今回は満腹で幸せな眠りだ)。
しかし、この一件で私の「聖女」としての名声は伝説となり、アレクセイ様の「過保護」は神話レベルへと昇華することになるのだが……それはまた別の話。
今はただ、この温もりと、生還の喜びに浸っていたかった。
「帰ろう、エミリア。私たちの城へ」
「はい、あなた」
私たちは、北の空へと飛んだ。
もう振り返らない。
私たちの幸せは、あの雪と氷と、温かい暖炉のある場所にあるのだから。
続く
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