221 / 366
8/9『もりもり大盛り』
しおりを挟む
ハンバーグは私も好きだけど、後片付けが面倒で作るのに腰が重かった。
あるときネットで見かけた【フライパンの中で材料を捏ねてそのまま焼く】という方法を試してみたらものすごくラクで、以前よりハンバーグを作る頻度があがった。
喜んだのは彼氏だ。
頑張って作った難しい料理や悩んで考えて決めた献立よりも、山盛りのハンバーグにテンション爆上がり。
いままでの私の努力はなんだったんだと怒りすら湧くほどの喜びよう。
市販品よりは安いけど、しょっちゅう作るのは家計とカロリー的にちょっと。あと私が飽きる。ということで、月に一度の“チートデー”を作って、彼と一緒に料理することにした。
通常のレシピだったらボウルを使ってこねなきゃなんなくて、そのボウルにひき肉の油がついて洗いづらいこととか、冬場は挽肉が冷たくて手がかじかむこととか全部説明しながら。
実感はできてないみたいだけど、リクエストに応じなかった日があったことは納得してくれた。
そもそも私だって働いていて疲れて帰ってきてるのは一緒なのに、なんで私だけ料理しなきゃなんないんだって、つい彼の返答次第ではケンカになりかねない口調になってしまったら、彼が申し訳なさそうに眉をひそめて言った。
「ごめん」
「あ、ごめん。そういうつもりではなかったけど、内心はそういうつもりだったかも」
「うん。自分がそっちの立場だったら同じこと感じて、イラッとするだろうなと思ったから謝まっただけ。だから、気にしないで」
「……気が合うね」
手が挽肉だらけじゃなかったらハイタッチしてるとこだった。うん、私ちゃんと人を見る目があった。
「できるかわからないこと提案するのもなんなんだけどさ……」
そう言って、彼が黙った。
「……なに?」
フライパンの中で捏ねた挽肉を成形しながら首をかしげる。
「できたら、の話ね?」
サラダボウルにちぎったレタスを入れつつ彼が口を開く。
「休日とか、予定とか、合うときに、簡単なくせにヘタだとしても、俺が料理作ったら、嬉しい?」
「え、そりゃもちろん。あなたがご飯作ってくれるってだけで嬉しいけど……」
「そっか……」
今度はプチトマトのヘタを取りつつ黙ってしまった。
「あの……そんな、気負わないでいいからね? 作ってもらえたらそりゃ嬉しいけど、無理はさせたくないからさ」
「できるかわからないことを提案するのもどうかな、という話だから、無理はしないけど」
「今日みたいに、サラダ作ってくれたり、食べたいもの提案してくれたり、買い物してくれるとかでも助かるよ?」
「あ、そうなの?」
彼が少し安心した顔になった。
「そしたら、できることから始めたいな。教えてもらってもいい?」
「もちろん」
それから彼はネットなんかで色々調べたらしく、月に一度のチートデー・メインシェフを担当してくれることになった。
基本的には彼が食べたいものの【山盛り】だ。
餃子山盛り。
豚の生姜焼きとキャベツの千切り山盛り。
鶏のから揚げ山盛り。
市販のピザ生地にミックスチーズ山盛り。
さすがに体重増加と健康面に不安があるけど、チートデーだしいいか、と口は出さないことにした。食べる量は自分で調節できるし、もし余っても冷凍したり翌日のお弁当に入れたりできるし。
サラダとかスープ類が欲しくて、私も一緒に作るときがあるけど、彼は何も言わないし喜んでくれる。
なんだか以前よりもいい関係性になってるからか、同棲もより楽しくなってきた。
実は、今度のチートデーはなにを山盛りにしてくれるんだろう、って期待したりもしてる。
もっと年齢を重ねたら揚げ物ばかりじゃなくなるだろうし、そのころには彼が調理に飽きているかもだけど、だからこそ月に一度のその日を楽しもうって決めた。
ただ、二人でコンビニジムに通うようにはした。チートデー開催から初めての健康診断で、前年よりも色々な数値に影響が出たからだ。
チートデー開催の翌日はもちろん、普段着ている服がちょっと小さく感じたらすぐに運動。次のチートデーを楽しむ。翌日に運動してもなお、ジーンズのボタンが閉めにくくなったら運動……って感じ。
支出も増えたからフリマサイトで不用品を売るようになって、部屋の中が片づいた。空いたスペースに前から欲しかった観葉植物を置いたりして、結局支出は増えたままだけど心が元気になったし、風水的によい影響が出て収入も増えたらいいなと思ってる。
いっぱい食べて運動して、健康なんだか不健康なんだかよくわからないけど、支出や体重以外に会話も笑顔も増えたしいっか。
人間結局、おおらかが一番なのである。
あるときネットで見かけた【フライパンの中で材料を捏ねてそのまま焼く】という方法を試してみたらものすごくラクで、以前よりハンバーグを作る頻度があがった。
喜んだのは彼氏だ。
頑張って作った難しい料理や悩んで考えて決めた献立よりも、山盛りのハンバーグにテンション爆上がり。
いままでの私の努力はなんだったんだと怒りすら湧くほどの喜びよう。
市販品よりは安いけど、しょっちゅう作るのは家計とカロリー的にちょっと。あと私が飽きる。ということで、月に一度の“チートデー”を作って、彼と一緒に料理することにした。
通常のレシピだったらボウルを使ってこねなきゃなんなくて、そのボウルにひき肉の油がついて洗いづらいこととか、冬場は挽肉が冷たくて手がかじかむこととか全部説明しながら。
実感はできてないみたいだけど、リクエストに応じなかった日があったことは納得してくれた。
そもそも私だって働いていて疲れて帰ってきてるのは一緒なのに、なんで私だけ料理しなきゃなんないんだって、つい彼の返答次第ではケンカになりかねない口調になってしまったら、彼が申し訳なさそうに眉をひそめて言った。
「ごめん」
「あ、ごめん。そういうつもりではなかったけど、内心はそういうつもりだったかも」
「うん。自分がそっちの立場だったら同じこと感じて、イラッとするだろうなと思ったから謝まっただけ。だから、気にしないで」
「……気が合うね」
手が挽肉だらけじゃなかったらハイタッチしてるとこだった。うん、私ちゃんと人を見る目があった。
「できるかわからないこと提案するのもなんなんだけどさ……」
そう言って、彼が黙った。
「……なに?」
フライパンの中で捏ねた挽肉を成形しながら首をかしげる。
「できたら、の話ね?」
サラダボウルにちぎったレタスを入れつつ彼が口を開く。
「休日とか、予定とか、合うときに、簡単なくせにヘタだとしても、俺が料理作ったら、嬉しい?」
「え、そりゃもちろん。あなたがご飯作ってくれるってだけで嬉しいけど……」
「そっか……」
今度はプチトマトのヘタを取りつつ黙ってしまった。
「あの……そんな、気負わないでいいからね? 作ってもらえたらそりゃ嬉しいけど、無理はさせたくないからさ」
「できるかわからないことを提案するのもどうかな、という話だから、無理はしないけど」
「今日みたいに、サラダ作ってくれたり、食べたいもの提案してくれたり、買い物してくれるとかでも助かるよ?」
「あ、そうなの?」
彼が少し安心した顔になった。
「そしたら、できることから始めたいな。教えてもらってもいい?」
「もちろん」
それから彼はネットなんかで色々調べたらしく、月に一度のチートデー・メインシェフを担当してくれることになった。
基本的には彼が食べたいものの【山盛り】だ。
餃子山盛り。
豚の生姜焼きとキャベツの千切り山盛り。
鶏のから揚げ山盛り。
市販のピザ生地にミックスチーズ山盛り。
さすがに体重増加と健康面に不安があるけど、チートデーだしいいか、と口は出さないことにした。食べる量は自分で調節できるし、もし余っても冷凍したり翌日のお弁当に入れたりできるし。
サラダとかスープ類が欲しくて、私も一緒に作るときがあるけど、彼は何も言わないし喜んでくれる。
なんだか以前よりもいい関係性になってるからか、同棲もより楽しくなってきた。
実は、今度のチートデーはなにを山盛りにしてくれるんだろう、って期待したりもしてる。
もっと年齢を重ねたら揚げ物ばかりじゃなくなるだろうし、そのころには彼が調理に飽きているかもだけど、だからこそ月に一度のその日を楽しもうって決めた。
ただ、二人でコンビニジムに通うようにはした。チートデー開催から初めての健康診断で、前年よりも色々な数値に影響が出たからだ。
チートデー開催の翌日はもちろん、普段着ている服がちょっと小さく感じたらすぐに運動。次のチートデーを楽しむ。翌日に運動してもなお、ジーンズのボタンが閉めにくくなったら運動……って感じ。
支出も増えたからフリマサイトで不用品を売るようになって、部屋の中が片づいた。空いたスペースに前から欲しかった観葉植物を置いたりして、結局支出は増えたままだけど心が元気になったし、風水的によい影響が出て収入も増えたらいいなと思ってる。
いっぱい食べて運動して、健康なんだか不健康なんだかよくわからないけど、支出や体重以外に会話も笑顔も増えたしいっか。
人間結局、おおらかが一番なのである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる