30 / 139
天網恢恢疎にして漏らさず
しおりを挟む
「いい加減にしろ!!」
烈火の如く怒りをたぎらせているエラリーの様子に、二人の女子生徒はすくみ上がった。
「エ、エラリー様……!」
「い、いつからこちらに?!」
悲鳴にも似た声が上がる。
「君達がここに『休憩』しに来た時からだよ」
「ジ、ジャン様まで……?!」
「僕はエラリーが具合が悪そうだったから休ませに連れてきたんだけど。いやあ、知らなかったなあ、この部屋は授業をサボって悪巧みをするためにも使われているなんてね」
ニコニコといい笑顔を浮かべながら、ジャンがその姿を見せると、女子生徒達は真っ青を通り越して真っ白になった。
「先ほどの話は本当か」
「あ、ええ!あの平民の女子生徒が朝から校庭で男子生徒と抱き合っているのを、この目で見ましたわ!」
「っぐっ、そ、その話じゃない。彼女の実家の店を潰して、彼女を娼館に売り飛ばすとかいう話だ!」
「えっ、いえ、あれは本気ではなくて、ちょっと言ってみただけと言いますか……」
「ええ、ええ、私もヤイミー様も、そんな悪いことはいたしませんわ……!」
「ふーん、自分達のしようとしていることが悪いことだっていう自覚はあるんだね」
「カイリー侯爵令嬢、クロー伯爵令嬢、今日のことはここにいるドットールー侯爵令息と私がしっかり聞いたぞ。今後、万が一クラリス嬢の身に何かあれば、真っ先に二人が捕縛されるだろうな」
エラリーの琥珀色の瞳が二人の令嬢を見据え、有無を言わせない調子で言い放った。
「そういえば、僕もエラリーもウィリアム王太子殿下まで、クラリス嬢に侍っているって言ってたね。知らなかったなあ、友人と楽しく食事をすることを最近はそんな風に言うんだねえ。ウィル様にも教えてあげなきゃね」
エラリーとは逆に、ジャンは優しい口調で二人を追い詰める。
「ひっ!」
「も、もうこのようなことは申しませんので……!」
「言わずに黙ってやるってこと?」
ジャンがニコニコしたまま聞く。
「と、とんでもない!二度とクラリス嬢に近づきません!」
「わ、私もですわ!」
二人の悲鳴のような声に、ジャンはエラリーに目配せし、ひとまずこの場は終わりにすることを告げる。
「そう。自分が可愛かったら、今の言葉を忘れないことだね。」
真っ白な顔のまま、挨拶もそこそこにドタバタと医務室を出ていく二人の背に、ジャンが思い出したかのように付け加えた。
「あ、そうそう。君達が仮病で医務室を利用していたことは、ちゃんとDクラスの先生に伝えておくからねー」
「……俺は今自分の耳で聞いたことが信じられん」
「そうだねえ、クラリス嬢が公衆の面前で男子生徒と抱き合っていたなんて、信じられないよね」
「っぐっ、い、いや、それも信じられないがっ!俺が耳を疑ったのは、あの令嬢達の悪巧みの内容だ!」
清廉潔白な、騎士道精神に溢れたエラリーには、令嬢達のむき出しの悪意が、あり得ないものとして写ったのだった。
「……エラリーは騎士になるのが目標なんだろ?それなら、こういった人間の汚い面から目を背けちゃだめだよ。でないと、大事な人を守れないよ」
いつにない、ジャンの真剣な眼差しにエラリーは何も言えず、無言で頷くしかなかった。
=================
ジャンは、今の女子生徒達の会話に、半年ほど前の事件を思い出していた。
中等部の最終学年で同じクラスになったジャンとイメルダが、一緒に勉強するようになり、親しくなっていくのを、恐ろしい顔で見つめている女子生徒がいたことに、当時のジャンは気づいていなかった。
イメルダの気を引くことに夢中で周りが見えにくくなっていたことも原因だが、最初にクラス全員の前で牽制したこともあり、まさかイメルダに手を出そうとする人間がいるとは思わなかったのだ。
だが、それが大きな間違いだったと気づいたのは、ジャンに片想いしていた別のクラスの伯爵令嬢が、学園でもタチの悪い噂のある男子生徒達に頼んで、イメルダに乱暴させようとしている現場に遭遇した時だった。
「イメルダ嬢ー?あれ?いつも時間より早く来ている彼女が、今日はどうしたんだろう」
ジャンとイメルダは週に一度、時間を決めて学園の図書館で一緒に勉強していた。イメルダは真面目で、無断で約束を反故にすることなど考えられない。
ジャンは嫌な胸騒ぎがした。
図書館を出て、会う人会う人にイメルダを見なかったか聞いてまわっていると、何人目かの生徒が、イメルダがさっき裏庭に向かうのを見たと教えてくれた。
礼を言ってジャンは裏庭へと走った。
裏庭に辿り着いたジャンがそこで見たのは、二人の男子学生に押さえつけられて必死で抵抗しようとしているイメルダと、少し離れた所で醜悪な笑みを浮かべながら、その光景を楽しそうに見ている女子生徒の姿だった。
「イメルダ嬢!」
駆け寄るジャンの姿にイメルダを押さえつけていた男子生徒は怯み、一瞬迷った後、「あいつに目をつけられたらヤバい!」と呟き、慌てて逃げ出した。
イメルダの口をおさえてスカートを捲り上げようとしていた男子生徒は、咄嗟に動けないでいた所を、ジャンに思い切り顔を蹴り上げられ、顎をおさえてのたうち回った。
「う、うがっ」
そんな男子生徒の下腹部を強く蹴り上げ、完全に戦闘不能な状態にしてから、ジャンはイメルダに駆け寄った。
「イメルダ嬢、ごめんね、来るのが遅くなって」
「……あ、あ、ジャ、ジャン様……」
「さあ掴まって。怪我はない?」
ポロポロと涙を流し、声も出ない様子のイメルダをジャンは優しく抱き上げると、離れた所で隠れているつもりの伯爵令嬢に声をかけた。
「よくも、僕の宝物に手を出してくれたね。君も、君の家族も無事でいられるとは思わないことだね」
ジャンの地を這うような声に、令嬢が姿を表してジャンに縋ろうとする。
「ジャ、ジャン様!どうして、そんな身分の低い女なんか……!私の方がずっとあなたに相応しいのに!」
「……心外だな。自分の欲望のためには無実の人を傷つけてもいいと考えるような人間とお似合いだと思われていたなんてね。メッシー伯爵令嬢、今日中に身辺整理しておくことをお勧めする」
「そんな……!ジャン様!ジャン様!」
メッシー令嬢の悲痛な声が響いたが、ジャンは振り向きもせず、足早に医務室を目指した。
烈火の如く怒りをたぎらせているエラリーの様子に、二人の女子生徒はすくみ上がった。
「エ、エラリー様……!」
「い、いつからこちらに?!」
悲鳴にも似た声が上がる。
「君達がここに『休憩』しに来た時からだよ」
「ジ、ジャン様まで……?!」
「僕はエラリーが具合が悪そうだったから休ませに連れてきたんだけど。いやあ、知らなかったなあ、この部屋は授業をサボって悪巧みをするためにも使われているなんてね」
ニコニコといい笑顔を浮かべながら、ジャンがその姿を見せると、女子生徒達は真っ青を通り越して真っ白になった。
「先ほどの話は本当か」
「あ、ええ!あの平民の女子生徒が朝から校庭で男子生徒と抱き合っているのを、この目で見ましたわ!」
「っぐっ、そ、その話じゃない。彼女の実家の店を潰して、彼女を娼館に売り飛ばすとかいう話だ!」
「えっ、いえ、あれは本気ではなくて、ちょっと言ってみただけと言いますか……」
「ええ、ええ、私もヤイミー様も、そんな悪いことはいたしませんわ……!」
「ふーん、自分達のしようとしていることが悪いことだっていう自覚はあるんだね」
「カイリー侯爵令嬢、クロー伯爵令嬢、今日のことはここにいるドットールー侯爵令息と私がしっかり聞いたぞ。今後、万が一クラリス嬢の身に何かあれば、真っ先に二人が捕縛されるだろうな」
エラリーの琥珀色の瞳が二人の令嬢を見据え、有無を言わせない調子で言い放った。
「そういえば、僕もエラリーもウィリアム王太子殿下まで、クラリス嬢に侍っているって言ってたね。知らなかったなあ、友人と楽しく食事をすることを最近はそんな風に言うんだねえ。ウィル様にも教えてあげなきゃね」
エラリーとは逆に、ジャンは優しい口調で二人を追い詰める。
「ひっ!」
「も、もうこのようなことは申しませんので……!」
「言わずに黙ってやるってこと?」
ジャンがニコニコしたまま聞く。
「と、とんでもない!二度とクラリス嬢に近づきません!」
「わ、私もですわ!」
二人の悲鳴のような声に、ジャンはエラリーに目配せし、ひとまずこの場は終わりにすることを告げる。
「そう。自分が可愛かったら、今の言葉を忘れないことだね。」
真っ白な顔のまま、挨拶もそこそこにドタバタと医務室を出ていく二人の背に、ジャンが思い出したかのように付け加えた。
「あ、そうそう。君達が仮病で医務室を利用していたことは、ちゃんとDクラスの先生に伝えておくからねー」
「……俺は今自分の耳で聞いたことが信じられん」
「そうだねえ、クラリス嬢が公衆の面前で男子生徒と抱き合っていたなんて、信じられないよね」
「っぐっ、い、いや、それも信じられないがっ!俺が耳を疑ったのは、あの令嬢達の悪巧みの内容だ!」
清廉潔白な、騎士道精神に溢れたエラリーには、令嬢達のむき出しの悪意が、あり得ないものとして写ったのだった。
「……エラリーは騎士になるのが目標なんだろ?それなら、こういった人間の汚い面から目を背けちゃだめだよ。でないと、大事な人を守れないよ」
いつにない、ジャンの真剣な眼差しにエラリーは何も言えず、無言で頷くしかなかった。
=================
ジャンは、今の女子生徒達の会話に、半年ほど前の事件を思い出していた。
中等部の最終学年で同じクラスになったジャンとイメルダが、一緒に勉強するようになり、親しくなっていくのを、恐ろしい顔で見つめている女子生徒がいたことに、当時のジャンは気づいていなかった。
イメルダの気を引くことに夢中で周りが見えにくくなっていたことも原因だが、最初にクラス全員の前で牽制したこともあり、まさかイメルダに手を出そうとする人間がいるとは思わなかったのだ。
だが、それが大きな間違いだったと気づいたのは、ジャンに片想いしていた別のクラスの伯爵令嬢が、学園でもタチの悪い噂のある男子生徒達に頼んで、イメルダに乱暴させようとしている現場に遭遇した時だった。
「イメルダ嬢ー?あれ?いつも時間より早く来ている彼女が、今日はどうしたんだろう」
ジャンとイメルダは週に一度、時間を決めて学園の図書館で一緒に勉強していた。イメルダは真面目で、無断で約束を反故にすることなど考えられない。
ジャンは嫌な胸騒ぎがした。
図書館を出て、会う人会う人にイメルダを見なかったか聞いてまわっていると、何人目かの生徒が、イメルダがさっき裏庭に向かうのを見たと教えてくれた。
礼を言ってジャンは裏庭へと走った。
裏庭に辿り着いたジャンがそこで見たのは、二人の男子学生に押さえつけられて必死で抵抗しようとしているイメルダと、少し離れた所で醜悪な笑みを浮かべながら、その光景を楽しそうに見ている女子生徒の姿だった。
「イメルダ嬢!」
駆け寄るジャンの姿にイメルダを押さえつけていた男子生徒は怯み、一瞬迷った後、「あいつに目をつけられたらヤバい!」と呟き、慌てて逃げ出した。
イメルダの口をおさえてスカートを捲り上げようとしていた男子生徒は、咄嗟に動けないでいた所を、ジャンに思い切り顔を蹴り上げられ、顎をおさえてのたうち回った。
「う、うがっ」
そんな男子生徒の下腹部を強く蹴り上げ、完全に戦闘不能な状態にしてから、ジャンはイメルダに駆け寄った。
「イメルダ嬢、ごめんね、来るのが遅くなって」
「……あ、あ、ジャ、ジャン様……」
「さあ掴まって。怪我はない?」
ポロポロと涙を流し、声も出ない様子のイメルダをジャンは優しく抱き上げると、離れた所で隠れているつもりの伯爵令嬢に声をかけた。
「よくも、僕の宝物に手を出してくれたね。君も、君の家族も無事でいられるとは思わないことだね」
ジャンの地を這うような声に、令嬢が姿を表してジャンに縋ろうとする。
「ジャ、ジャン様!どうして、そんな身分の低い女なんか……!私の方がずっとあなたに相応しいのに!」
「……心外だな。自分の欲望のためには無実の人を傷つけてもいいと考えるような人間とお似合いだと思われていたなんてね。メッシー伯爵令嬢、今日中に身辺整理しておくことをお勧めする」
「そんな……!ジャン様!ジャン様!」
メッシー令嬢の悲痛な声が響いたが、ジャンは振り向きもせず、足早に医務室を目指した。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました
黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました
乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。
これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。
もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。
魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。
私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる