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異世界生活準備編
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カララン♪
ベルの音がする。
「いらっしゃいませ」
私、笠原紬が異世界に送られてから早くも一週間と少し。
今日からカフェ『ツムギ』がオープンしている。
え?
自分の名前を店名にしちゃったのかって?
や、コレね?
以前オープンしていた間に父が付けて看板まで屋根にくっ付けちゃってるから仕方ないのです。
私の名前ーー紬は糸を紡ぐ。からとったらしい。
糸を一本一本紡ぐように人と人の絆を紡ぐ。
日本でも、異世界でも、人との関わりや絆を大切にできるようにってそういう意図でつけたらしくて、まあ、悪くないんじゃないかな?店の名前としても。
うん。
ま、いっか。
ということにしました。
オープン3人目となるお客様は美人な御姉様。
「お久しぶりですエレノアさん」
長い金の髪が背中の中程まで波打っている。
以前会った時にも思ったんだけど、邪魔にならないのかな?あの髪。
「久しぶり~!ツムギちゃん。あらまあキレイになっちゃって!」
やたらテンション高いのも相変わらずだね。
キレイな御姉様って感じなんですけどね。
見た目は。
ほんと、見た目変わってない。
前に会ったの2年前なのに。
日本だったら美魔女って呼ばれるに違いない。
40代のはずなのに。
知らなければ30代前半って言われても納得する。
そんなエレノアさんはここから馬車で半日ほどの距離にあるカルバンという町で仕立て屋の店長をしている。
田舎の仕立て屋ながらも、近隣の領主様の奥方、お嬢様から絶大な人気を受ける日本風に言うならカリスマデザイナーだ。
「またお店がオープンしたって聞いてさっそく来ちゃった♪」
「大丈夫なんですか?また仕事サボってるんじゃ」
2年前のオープンの時は毎回仕事サボってやってきては助手のケイトさんに首根っこ掴まれては引きずって行かれてたよね?
けど初のイートインのお客様かな?
オープンして二時間。
これまでのお客様は二人ともパンの持ち帰りだったからね。
町に手土産に持っていったベーグルは大好評で今日も先の二人はベーグルと白パンを購入していった。
そう、答えはベーグルだったのです!
「平気平気。ケイトもだいぶ腕を上げたからね。最近なもうお任せで私は営業に回ってるのよ。今日も営業」
営業って、場所間違えてるよね?
この付近、エレノアさんの服買うようなお金持ち住んでませんけど。
「まあ、大丈夫だったらいいんですけど。冷たいカフェオレでいいですか?」
たしかエレノアさんは牛乳たっぷりのカフェオレだったはず。
「そうそう!近頃この店の真似してコーヒー出す店もちょっとずつ増えてはいるんだけどね。やっぱり全然違うわ!」
そりゃそうだよ。
こっちの品種改良も何もしてない豆のコーヒーと、日本メーカーのコーヒーじゃね。
インスタントですけど。
パンやスイーツは手作りだけど、飲み物はインスタントにティーパックた。
お腹が庶民なのか、専門店のコーヒーとかちょっと苦手なんだよね。
なので、家でもこっちでも、インスタントのお世話になっている。
コーヒーメーカー?
ネス〇フェバリ〇タですけど何か?
「パンはどうします?今日はベーグルっていうモチモチしたものと、シンプルな白パンがありますけど。あとケーキはチーズケーキです」
「じゃ、そのベーグル?をもらうわ」
「わかりました」
返事をしつつ、カフェオレをグラスに注ぐ。
今日は外が暑いから、氷を少し多めに。
ベーグルは大好評だったベーコンチーズとレーズン。チーズとともにブラックペッパーも練り込んである。
どちらも半分に切って半分だけ皿に乗せる。
付け合わせにオリーブの実を2つ。
「ところでツムギちゃん?実は少しおねえさんお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「……聞くだけなら」
さっそくベーグルを一口食べ、「うわっ!なにこの感触!」と声を上げてから、エレノアさんがニンマリと笑う。
(……うわー、ヤな予感がするわ)
エレノアさんは以前にオープンしていた間もいい常連さんだったけど、時々無茶ぶりしてくるんだよねー。
新作のモデルとしてお貴族様のお茶会に出てくれとか、夜会に出す料理を監督してくれとか。
私は一応元魔王ーーつまり魔国の女王様の娘だけれど。
日本育ちの根っからの庶民だからして。
(苦手なんだよね。貴族とかって人種)
だけどエレノアさんのお願いは大抵お客様がらみ。
で、そのお客様は田舎のとはいえ、貴族が大半だ。
「実は取引先の息子さん6才に関わることなんだけど」
「はあ」
「ずーっと原因不明の全身の痒みに困ってるらしくてね?」
ん?
それはお医者さんに相談することでしょう。
「どうやら食べ物が原因なんじゃないかって街の医者に言われたらしいのよ」
アレルギーってことか。
「卵と乳がどうもダメみたいなの。でもこの辺りだとパンが主食でしょ?困ってるみたいなのよね」
「なるほどつまり卵や乳が入っていないパンを作って欲しいとかなんでしょうか」
そのくらいならなんとかなるかな?
アレルギーを治すとかは私にはムリだけど。
「そう!できれば数種類。明後日までにいくつか用意して欲しいのー!」
明後日って。
やっぱり結構な無茶ぶりだったよ。
今夜と明日は夜更かし決定ですね。
ベルの音がする。
「いらっしゃいませ」
私、笠原紬が異世界に送られてから早くも一週間と少し。
今日からカフェ『ツムギ』がオープンしている。
え?
自分の名前を店名にしちゃったのかって?
や、コレね?
以前オープンしていた間に父が付けて看板まで屋根にくっ付けちゃってるから仕方ないのです。
私の名前ーー紬は糸を紡ぐ。からとったらしい。
糸を一本一本紡ぐように人と人の絆を紡ぐ。
日本でも、異世界でも、人との関わりや絆を大切にできるようにってそういう意図でつけたらしくて、まあ、悪くないんじゃないかな?店の名前としても。
うん。
ま、いっか。
ということにしました。
オープン3人目となるお客様は美人な御姉様。
「お久しぶりですエレノアさん」
長い金の髪が背中の中程まで波打っている。
以前会った時にも思ったんだけど、邪魔にならないのかな?あの髪。
「久しぶり~!ツムギちゃん。あらまあキレイになっちゃって!」
やたらテンション高いのも相変わらずだね。
キレイな御姉様って感じなんですけどね。
見た目は。
ほんと、見た目変わってない。
前に会ったの2年前なのに。
日本だったら美魔女って呼ばれるに違いない。
40代のはずなのに。
知らなければ30代前半って言われても納得する。
そんなエレノアさんはここから馬車で半日ほどの距離にあるカルバンという町で仕立て屋の店長をしている。
田舎の仕立て屋ながらも、近隣の領主様の奥方、お嬢様から絶大な人気を受ける日本風に言うならカリスマデザイナーだ。
「またお店がオープンしたって聞いてさっそく来ちゃった♪」
「大丈夫なんですか?また仕事サボってるんじゃ」
2年前のオープンの時は毎回仕事サボってやってきては助手のケイトさんに首根っこ掴まれては引きずって行かれてたよね?
けど初のイートインのお客様かな?
オープンして二時間。
これまでのお客様は二人ともパンの持ち帰りだったからね。
町に手土産に持っていったベーグルは大好評で今日も先の二人はベーグルと白パンを購入していった。
そう、答えはベーグルだったのです!
「平気平気。ケイトもだいぶ腕を上げたからね。最近なもうお任せで私は営業に回ってるのよ。今日も営業」
営業って、場所間違えてるよね?
この付近、エレノアさんの服買うようなお金持ち住んでませんけど。
「まあ、大丈夫だったらいいんですけど。冷たいカフェオレでいいですか?」
たしかエレノアさんは牛乳たっぷりのカフェオレだったはず。
「そうそう!近頃この店の真似してコーヒー出す店もちょっとずつ増えてはいるんだけどね。やっぱり全然違うわ!」
そりゃそうだよ。
こっちの品種改良も何もしてない豆のコーヒーと、日本メーカーのコーヒーじゃね。
インスタントですけど。
パンやスイーツは手作りだけど、飲み物はインスタントにティーパックた。
お腹が庶民なのか、専門店のコーヒーとかちょっと苦手なんだよね。
なので、家でもこっちでも、インスタントのお世話になっている。
コーヒーメーカー?
ネス〇フェバリ〇タですけど何か?
「パンはどうします?今日はベーグルっていうモチモチしたものと、シンプルな白パンがありますけど。あとケーキはチーズケーキです」
「じゃ、そのベーグル?をもらうわ」
「わかりました」
返事をしつつ、カフェオレをグラスに注ぐ。
今日は外が暑いから、氷を少し多めに。
ベーグルは大好評だったベーコンチーズとレーズン。チーズとともにブラックペッパーも練り込んである。
どちらも半分に切って半分だけ皿に乗せる。
付け合わせにオリーブの実を2つ。
「ところでツムギちゃん?実は少しおねえさんお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「……聞くだけなら」
さっそくベーグルを一口食べ、「うわっ!なにこの感触!」と声を上げてから、エレノアさんがニンマリと笑う。
(……うわー、ヤな予感がするわ)
エレノアさんは以前にオープンしていた間もいい常連さんだったけど、時々無茶ぶりしてくるんだよねー。
新作のモデルとしてお貴族様のお茶会に出てくれとか、夜会に出す料理を監督してくれとか。
私は一応元魔王ーーつまり魔国の女王様の娘だけれど。
日本育ちの根っからの庶民だからして。
(苦手なんだよね。貴族とかって人種)
だけどエレノアさんのお願いは大抵お客様がらみ。
で、そのお客様は田舎のとはいえ、貴族が大半だ。
「実は取引先の息子さん6才に関わることなんだけど」
「はあ」
「ずーっと原因不明の全身の痒みに困ってるらしくてね?」
ん?
それはお医者さんに相談することでしょう。
「どうやら食べ物が原因なんじゃないかって街の医者に言われたらしいのよ」
アレルギーってことか。
「卵と乳がどうもダメみたいなの。でもこの辺りだとパンが主食でしょ?困ってるみたいなのよね」
「なるほどつまり卵や乳が入っていないパンを作って欲しいとかなんでしょうか」
そのくらいならなんとかなるかな?
アレルギーを治すとかは私にはムリだけど。
「そう!できれば数種類。明後日までにいくつか用意して欲しいのー!」
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やっぱり結構な無茶ぶりだったよ。
今夜と明日は夜更かし決定ですね。
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