英雄と魔王の娘はまったりスローライフを送りたい。

黒田悠月

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異世界生活準備編

03

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鳥のさえずりで目が醒めた。

ピヨピヨうるさいっつうの!

田舎だからか、文明の発達がいまいちな異世界だからか、鳥のさえずりたって喧しさが半端ない。
どこか遠くからは狼の遠吠えらしいものも聞こえてくるし。

日本から以前に転移させてもらっていた低反発マットを敷いたベッドから「んー!」と一つ伸びをして起き上がる。

「さてっと今日は忙しいぞっ」

着替えはクローゼットに入っていたワンピースに。
さすがに日本のものだとデザインも生地も違うのでこちらの世界のものだ。

クローゼットの中には他にも何着かのワンピースと下着に靴や皮の鞄が入っていた。

まったくいつの間に用意していたのやら。

服や下着まであるあたり、母も一枚噛んでることは間違いない。

(二人して何考えてるんだか。あの夫婦は……)

女子高生の娘を無理矢理異世界に転移させるとか。
学校だってあるのに。

さすがに私だって勉強しなくていいじゃんラッキー♪とは……むぅ、ちょっとは思うけど。

(どうせ邪魔者がいないって四六時中イチャイチャしてんでしょうよ)

ベッドサイドに置いてあったスマホを手に取る。
その下に描かれていた円い小さな魔方陣が薄い赤の光をゆっくりと消した。
充電の魔方陣。
魔力を電気に変換してスマホの充電ができる。
これもまた父の作ったものだ。

(……圏外、か)

まあ異世界なのだから当然なんだけど。
週一土曜日にメールを送れってことは土曜日だけ一部に繋がるようになっているのだろうか。

(その時になってみないとわからん)

はあ、とため息一つ。

「ま、とりあえず動くとしますか!」

うし!と気圧を入れ直して、私は昨夜寝る前に書いた2枚の手紙を手に階下へと降りた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



町に向かう前に手土産のパンを作ることにする。

パントリーと冷蔵庫をチェックして。

まずは準備。

量りにボール、計量スプーンにラップに木ベラ。
大きめの鍋とスケッパー、さえ箸クッキングシートは八センチ四方の正方形にハサミでチョキチョキ。

切って切って切ってちょい多目に30枚。

具材を乗せておいたりにも使うからね。

お次は粉類を。

私がよく使う粉は国産のはるよ〇いブレンド。
ハード系ならいわゆるフランスパン専用粉リス〇ール。
砂糖はパンなら洗双糖。お菓子ならきびかグラニュー糖を主に使う。

私は並べたクッキングシートの上に洗双糖を大さじ一杯と半分出しておく。
それを2つ。
鍋やオーブンのサイズを考えると1度に10個が限界だからね。

10個ずつ中の具材を変えて2種類時間差で作ることにする。

具材は一つをベーコンとチーズ。
もうひとつをレーズンにすることにして、ベーコンは小さく刻んでクッキングシートの上に、レーズンは熱湯をかけて表面の油分を取り去ってから。
チーズは今回は粉チーズを使うことにした。

スパゲッティの上に振りかける筒に入ったシュレッドチーズ。

材料がすべて新品なのが地味にウザイ。

いちいち袋を開けて、チーズは容器を覆うビニールをピリピリ、中の銀紙も外してっと。

粉もついでにプラケースに入れ換えておくかな?

パントリーの下段に開きケースとゴミ袋があったはず。

ケースにゴミ袋をかけて粉を移して、おっと、蓋をする前に必要分をボールに出しておかないと。

量りにボールを乗せて粉を入れていく。
今回は250ずつ2個。

砂糖、塩も同じくケースに入れ換えて塩は粉の入ったボールに一緒にちょいちょいっと加えておく。

計量カップできっちり計った水をマグカップに。
小さめのコップに乾燥酵母を入れて、計った水から指一本分、その中に入れる。

(……これで、だいたいOKかな?)

パン作りは事前の準備が大事。
子供の頃から一つ種類を教わる度に言われ続けたこと。

作業台と自分の手に食品OKのアルコールスプレーをシュッシュッして、て。

さて、始めましょうかね。

ところで、私が何パンを作るかわかるかな?


答えはお湯で茹でてからオーブンで焼く、ドーナツみたいにわっか型のアレ。

もっちもちで美味しいのです♪




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