22 / 32
王立学校魔法科
その5
しおりを挟む
『土土土壁石石壁壁壁土……苔』
俺は鑑定スキルを発動させながらダンジョン一階層をゆっくりと進んでいる。
おなじみになりつつある頭痛や目眩は慣れてきたのか、それとも体力が付いたからか、痛みや立ちくらみはあるものの我慢できないほどではない。
それでもその状態で魔物に強襲された場合、問題がないと言えるものでもないので、鑑定と同時に風の聖霊に魔物の索敵を頼んである。
魔物を見つけたら近づく前に一旦鑑定を解除。
一体なら戦闘。
それ以上の数ならさっさと逃げる。
『…壁壁壁苔土』
さっきから鑑定が石ではなく壁や苔というのが増えてきている。
壁をただの石ではなく、きちんと壁だと認識しつつあるのだ。
「そろそろ、かな」
レベルアップの予感である。
鑑定スキルがレベルアップする前にはこのようなことがよくあるので。
「……おっと、ひとまず解除っと」
風の聖霊が耳打ちするのに頷いて、スキルを解除。
腰の剣に手をやる。
ーーまたスライムか。
ここにはスライムが多いようだ。
というかさっきからスライムとしか出会っていない。
これまでに俺が出会ったスライムは十体。
うち半数の五体を剣で討伐し、五体を『ブラック・カーテン』で取り込んでいる。
そのいつ一体が持っていた固有スキルーー俊敏はいい貰い物だったな。
やたらすばしこい個体だったから、捕獲には苦労したけど。
ただ発動条件が逃走時のみって制限付きだが。
俺は両手で剣を構えてながらゆっくりと曲がり角に近づいて行く。その向こうにスライムがいる。
数は一体。
なので、逃げはない。
『ブラック・カーテン』ではなく剣を使うのは少しばかり気になることがあるからだ。
俺は長兄にもらった剣で半数の五体を倒したが、その五体ともにドロップアイテムがあったのである。
ドロップアイテムというのは魔物を倒したさいに出現することがあるその魔物の素材やアイテム、武器。
俺のダンジョンの場合は俺が作ったアイテムや武器をドロップさせたりしていたのだが、ここのようにダンジョンマスターが存在せず、国が管理しているダンジョンだと冒険者たちが落としていったものを魔物が取り込んでいるのだと言われている。
そのわりには魔物によってドロップするアイテムや武器が偏っていたりもするんだけどね。
ま、ダンジョンなんてどこの国でもほとんど研究の進んでいない未知の世界だから。
むしろわからないくらいの方がいいよね。
そっちの方が不思議で楽しい。
ダンジョンマスターを長年勤めた俺でさえわかんないことばっかりだ。
そんなドロップアイテムなのだが、普通は五体中一体あればラッキー。
十体倒してゼロなんてことも珍しくない。
それが五体中五体とも。
こうなるとどこまで記録更新するか確認しないとでしょ!
ってなわけでスライムと剣で勝負である。
スライムは俺を見つけるなり酸をペッ!と吐き出してくる。
スライムの主な攻撃はこの酸と体当たりだ。
俺は酸をステップで避けてそのまま一足でスライムに接近、ぐにゃぐにゃした透明の身体の中に見える小さな核に狙いを定めて剣を振り抜いた。
スライムの核ーー魔石は非常に獲得が困難だ。
というかムリ。
何故なら核である魔石を破壊しないと倒せないから。
最弱なのに最強。
冒険者が言う所以である。
俺の剣に核を壊されたスライムはドロリと溶けてダンジョンに吸収されていく。
これは他の魔物も同じで、魔物がダンジョンで死ぬとすぐにダンジョンに吸収される。
その後に壊されなかった場合は魔石と、稀にドロップアイテムが残る。
俺がスライムを倒した後には、またもドロップアイテムが。
『スライムの粘液』
何故か瓶詰めされている水色の液体。
スライムの主なドロップアイテムには『スライムの粘液』と『癒しの妙薬』があるが、色が水色のものが『スライムの粘液』ピンクがかった透明の液体のものが『癒しの妙薬』である。
ちなみに俺が今日手に入れたのはどれも『スライムの粘液』。
ねっちょりしていて食用になる。
ゼリーなんかの材料にされるのだ。
高く売れるのは『癒しの妙薬』の方で、目薬の材料になる。
『癒しの妙薬』が入った目薬は一滴で疲れ目がばっちり取れる優れものだ。
どうせなら『癒しの妙薬』が欲しかったところではあるが。
「これで六体目。ーーやっぱ偶然ってのはないよな」
思い当たるのは『女神の加護(中)』か。
幸運アップと経験値アップ、だったな。
ーー高確率でドロップアイテム獲得できるってわけか。
意外にも役に立つ加護だったらしい。
レアな『癒しの妙薬』でなく『スライムの粘液』なところがレティの加護らしいな。
さて、また鑑定を続けてますか。
俺はまた鑑定を発動しながら歩き出す。
『壁壁壁壁壁苔苔…………♪』
「……ん?」
頭のなかでどこかで聞いたことのあるメロディが鳴った。
『おめでとうございまーす!鑑定スキルがレベル3にランクアップしましたー!ぱちぱち♪』
ーーヨッシャー!
だけど。
ドラ〇エかよ。
この先も毎回こんな感じなの?
俺は鑑定スキルを発動させながらダンジョン一階層をゆっくりと進んでいる。
おなじみになりつつある頭痛や目眩は慣れてきたのか、それとも体力が付いたからか、痛みや立ちくらみはあるものの我慢できないほどではない。
それでもその状態で魔物に強襲された場合、問題がないと言えるものでもないので、鑑定と同時に風の聖霊に魔物の索敵を頼んである。
魔物を見つけたら近づく前に一旦鑑定を解除。
一体なら戦闘。
それ以上の数ならさっさと逃げる。
『…壁壁壁苔土』
さっきから鑑定が石ではなく壁や苔というのが増えてきている。
壁をただの石ではなく、きちんと壁だと認識しつつあるのだ。
「そろそろ、かな」
レベルアップの予感である。
鑑定スキルがレベルアップする前にはこのようなことがよくあるので。
「……おっと、ひとまず解除っと」
風の聖霊が耳打ちするのに頷いて、スキルを解除。
腰の剣に手をやる。
ーーまたスライムか。
ここにはスライムが多いようだ。
というかさっきからスライムとしか出会っていない。
これまでに俺が出会ったスライムは十体。
うち半数の五体を剣で討伐し、五体を『ブラック・カーテン』で取り込んでいる。
そのいつ一体が持っていた固有スキルーー俊敏はいい貰い物だったな。
やたらすばしこい個体だったから、捕獲には苦労したけど。
ただ発動条件が逃走時のみって制限付きだが。
俺は両手で剣を構えてながらゆっくりと曲がり角に近づいて行く。その向こうにスライムがいる。
数は一体。
なので、逃げはない。
『ブラック・カーテン』ではなく剣を使うのは少しばかり気になることがあるからだ。
俺は長兄にもらった剣で半数の五体を倒したが、その五体ともにドロップアイテムがあったのである。
ドロップアイテムというのは魔物を倒したさいに出現することがあるその魔物の素材やアイテム、武器。
俺のダンジョンの場合は俺が作ったアイテムや武器をドロップさせたりしていたのだが、ここのようにダンジョンマスターが存在せず、国が管理しているダンジョンだと冒険者たちが落としていったものを魔物が取り込んでいるのだと言われている。
そのわりには魔物によってドロップするアイテムや武器が偏っていたりもするんだけどね。
ま、ダンジョンなんてどこの国でもほとんど研究の進んでいない未知の世界だから。
むしろわからないくらいの方がいいよね。
そっちの方が不思議で楽しい。
ダンジョンマスターを長年勤めた俺でさえわかんないことばっかりだ。
そんなドロップアイテムなのだが、普通は五体中一体あればラッキー。
十体倒してゼロなんてことも珍しくない。
それが五体中五体とも。
こうなるとどこまで記録更新するか確認しないとでしょ!
ってなわけでスライムと剣で勝負である。
スライムは俺を見つけるなり酸をペッ!と吐き出してくる。
スライムの主な攻撃はこの酸と体当たりだ。
俺は酸をステップで避けてそのまま一足でスライムに接近、ぐにゃぐにゃした透明の身体の中に見える小さな核に狙いを定めて剣を振り抜いた。
スライムの核ーー魔石は非常に獲得が困難だ。
というかムリ。
何故なら核である魔石を破壊しないと倒せないから。
最弱なのに最強。
冒険者が言う所以である。
俺の剣に核を壊されたスライムはドロリと溶けてダンジョンに吸収されていく。
これは他の魔物も同じで、魔物がダンジョンで死ぬとすぐにダンジョンに吸収される。
その後に壊されなかった場合は魔石と、稀にドロップアイテムが残る。
俺がスライムを倒した後には、またもドロップアイテムが。
『スライムの粘液』
何故か瓶詰めされている水色の液体。
スライムの主なドロップアイテムには『スライムの粘液』と『癒しの妙薬』があるが、色が水色のものが『スライムの粘液』ピンクがかった透明の液体のものが『癒しの妙薬』である。
ちなみに俺が今日手に入れたのはどれも『スライムの粘液』。
ねっちょりしていて食用になる。
ゼリーなんかの材料にされるのだ。
高く売れるのは『癒しの妙薬』の方で、目薬の材料になる。
『癒しの妙薬』が入った目薬は一滴で疲れ目がばっちり取れる優れものだ。
どうせなら『癒しの妙薬』が欲しかったところではあるが。
「これで六体目。ーーやっぱ偶然ってのはないよな」
思い当たるのは『女神の加護(中)』か。
幸運アップと経験値アップ、だったな。
ーー高確率でドロップアイテム獲得できるってわけか。
意外にも役に立つ加護だったらしい。
レアな『癒しの妙薬』でなく『スライムの粘液』なところがレティの加護らしいな。
さて、また鑑定を続けてますか。
俺はまた鑑定を発動しながら歩き出す。
『壁壁壁壁壁苔苔…………♪』
「……ん?」
頭のなかでどこかで聞いたことのあるメロディが鳴った。
『おめでとうございまーす!鑑定スキルがレベル3にランクアップしましたー!ぱちぱち♪』
ーーヨッシャー!
だけど。
ドラ〇エかよ。
この先も毎回こんな感じなの?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる