(元)引きこもりダンジョンマスターが異世界生活をやり直してみた件

黒田悠月

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王立学校魔法科

その5

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『土土土壁石石壁壁壁土……苔』

 俺は鑑定スキルを発動させながらダンジョン一階層をゆっくりと進んでいる。
 おなじみになりつつある頭痛や目眩は慣れてきたのか、それとも体力が付いたからか、痛みや立ちくらみはあるものの我慢できないほどではない。
 それでもその状態で魔物に強襲された場合、問題がないと言えるものでもないので、鑑定と同時に風の聖霊に魔物の索敵を頼んである。
 魔物を見つけたら近づく前に一旦鑑定を解除。

 一体なら戦闘。
 それ以上の数ならさっさと逃げる。

『…壁壁壁苔土』

 さっきから鑑定が石ではなく壁や苔というのが増えてきている。 
 壁をただの石ではなく、きちんと壁だと認識しつつあるのだ。

「そろそろ、かな」

 レベルアップの予感である。
 鑑定スキルがレベルアップする前にはこのようなことがよくあるので。

「……おっと、ひとまず解除っと」

 風の聖霊が耳打ちするのに頷いて、スキルを解除。
 腰の剣に手をやる。

 ーーまたスライムか。

 ここにはスライムが多いようだ。
 というかさっきからスライムとしか出会っていない。

 これまでに俺が出会ったスライムは十体。
 うち半数の五体を剣で討伐し、五体を『ブラック・カーテン』で取り込んでいる。

 そのいつ一体が持っていた固有スキルーー俊敏はいい貰い物だったな。
 やたらすばしこい個体だったから、捕獲には苦労したけど。

 ただ発動条件が逃走時のみって制限付きだが。

 俺は両手で剣を構えてながらゆっくりと曲がり角に近づいて行く。その向こうにスライムがいる。

 数は一体。
 なので、逃げはない。

『ブラック・カーテン』ではなく剣を使うのは少しばかり気になることがあるからだ。

 俺は長兄にもらった剣で半数の五体を倒したが、その五体ともにドロップアイテムがあったのである。

 ドロップアイテムというのは魔物を倒したさいに出現することがあるその魔物の素材やアイテム、武器。
 俺のダンジョンの場合は俺が作ったアイテムや武器をドロップさせたりしていたのだが、ここのようにダンジョンマスターが存在せず、国が管理しているダンジョンだと冒険者たちが落としていったものを魔物が取り込んでいるのだと言われている。 
 そのわりには魔物によってドロップするアイテムや武器が偏っていたりもするんだけどね。

 ま、ダンジョンなんてどこの国でもほとんど研究の進んでいない未知の世界だから。
 むしろわからないくらいの方がいいよね。
 そっちの方が不思議で楽しい。

 ダンジョンマスターを長年勤めた俺でさえわかんないことばっかりだ。

 そんなドロップアイテムなのだが、普通は五体中一体あればラッキー。
 十体倒してゼロなんてことも珍しくない。
 それが五体中五体とも。

 こうなるとどこまで記録更新するか確認しないとでしょ!

 ってなわけでスライムと剣で勝負である。



 スライムは俺を見つけるなり酸をペッ!と吐き出してくる。

 スライムの主な攻撃はこの酸と体当たりだ。
 俺は酸をステップで避けてそのまま一足でスライムに接近、ぐにゃぐにゃした透明の身体の中に見える小さな核に狙いを定めて剣を振り抜いた。

 スライムの核ーー魔石は非常に獲得が困難だ。
 というかムリ。
 何故なら核である魔石を破壊しないと倒せないから。

 最弱なのに最強。
 冒険者が言う所以である。

 俺の剣に核を壊されたスライムはドロリと溶けてダンジョンに吸収されていく。
 これは他の魔物も同じで、魔物がダンジョンで死ぬとすぐにダンジョンに吸収される。
 その後に壊されなかった場合は魔石と、稀にドロップアイテムが残る。

 俺がスライムを倒した後には、またもドロップアイテムが。

『スライムの粘液』

 何故か瓶詰めされている水色の液体。
 スライムの主なドロップアイテムには『スライムの粘液』と『癒しの妙薬』があるが、色が水色のものが『スライムの粘液』ピンクがかった透明の液体のものが『癒しの妙薬』である。

 ちなみに俺が今日手に入れたのはどれも『スライムの粘液』。

 ねっちょりしていて食用になる。
 ゼリーなんかの材料にされるのだ。

 高く売れるのは『癒しの妙薬』の方で、目薬の材料になる。
『癒しの妙薬』が入った目薬は一滴で疲れ目がばっちり取れる優れものだ。

 どうせなら『癒しの妙薬』が欲しかったところではあるが。

「これで六体目。ーーやっぱ偶然ってのはないよな」

 思い当たるのは『女神の加護(中)』か。
 幸運アップと経験値アップ、だったな。

 ーー高確率でドロップアイテム獲得できるってわけか。

 意外にも役に立つ加護だったらしい。
 レアな『癒しの妙薬』でなく『スライムの粘液』なところがレティの加護らしいな。

 さて、また鑑定を続けてますか。

 俺はまた鑑定を発動しながら歩き出す。

『壁壁壁壁壁苔苔…………♪』

「……ん?」

 頭のなかでどこかで聞いたことのあるメロディが鳴った。

『おめでとうございまーす!鑑定スキルがレベル3にランクアップしましたー!ぱちぱち♪』

 ーーヨッシャー!

 だけど。
 ドラ〇エかよ。

 この先も毎回こんな感じなの?
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