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すれ違いと不穏な噂。
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過ぎた時間はほんのわずか。
それこそほんの数分にも満たないもの。
だけれど通りの真ん中でぼんやりと立ち尽くして路地を見つけるわたしは、周りからすると何をしているのかという感じだし、もっとはっきり言うならば邪魔だったのだろう。
千鳥足のおじさんに肩をぶつけられた挙げ句「邪魔だよっ!」と舌足らずに怒鳴られて、わたしはハッとした。
「すみませんっ」
とその背に頭を下げて、わたしは慌てて橋に寄る。
そのままシルルを待つべきなのだろう。
けれど、ただ待っているだけの時間はほんのわずかでもすごく長く感じてしまって。
--どうなったんだろう。
なんでもなく、ただの知り合いとのじゃれ合いなら、こんなに時間がかかるものだろうか?
何か揉め事だとかで連れ込まれていた?
だとしたらわたしはそれにシルルを巻き込んでしまったということになる。
にわかにソワソワして、モンタさんたちとシルルが消えた路地の奥が気になってしまう。
シルルはここで待っていて、と言っていたけれど。
「でも」
もし本当に揉め事なら?
シルルは騎士だし、護衛を任せられるくらいだからそれなりの腕はあるのだと思う。
普段は一人で街で情報を集めているというのだ。
つまりはいざという時一人で対応できる力があるということ。
そうも思うけれど、モンタさんを連れていたのは一人ではなかった。
パッと見えただけでも三人。
しかも全員がガタイのいい男性だった。
あまり質のよろしくなさそうな……。
いえ、そこはわたしの勝手な先入観かも知れないけれど。
ウンウンと考え込みながらわたしは路地を眺め、その場をウロウロした。
周囲にはたくさんの人。
けれどシルルたちが消えた路地に向かう人はいない。
--覗くだけ……。
路地の入口から様子を覗くだけなら。
そうして様子が怪しかったら近くにいる人たちに助けを求めればいいのではないか。
こんなにたくさんの人がいるんだもの。
きっと声をかければ助けてくれる人もいる。
そっと足を動かして路地の入口に向かう。
--と、
「ガルドの犬がッ!」
人が飛び出してきたかと思うとそう捨て台詞らしき言葉を残して離れて行く。
それを追うように残り三人の男の人たち。
うちの二人には見覚えがあった。
モンタさんを連れ込んでいたうちの二人だ。
わたしはぶつかりそうになりながらも身体をひねって危ない所で避けた。
一人と目が合って、なんとなく逸らす。
心臓がドクドクと嫌な音を立てた。
目が合った、男の目。
憎悪とか、嫌悪とか、恐怖とか。
様々な感情の入り混じったような目。
--なんだろう。
見たことがあるような気がした。
どこでだったか。
わかるのはたぶんあまり思い出したくはない記憶の中だと言うこと。
ドクドクと高鳴る心臓と、背筋を流れ落ちる冷や汗がそのことを物語っているように思う。
そうしてその思い出したくない記憶というものに、わたしは心当たりがある。
----。
「……犬じゃねーっ。猿だよっ」
苦しげな声で毒づくのが聞こえて、わたしは路地へと視線を戻した。
「……モンタさんっ!」
酷い怪我だ。
声の主はシルルに肩を貸される状態で路地から出てきたモンタさんだった。
殴られたのか、左目の上が赤く腫れている。
顎にもそこを覆う深い毛でも隠しきれない赤黒い痣があった。
「大丈夫ですかっ!」
そう言って歩み寄って、初めてモンタさんはわたしに気付いたようだった。
大きな茶色い目が見開かれて、それからすぐに気まず気に伏せられた。
それこそほんの数分にも満たないもの。
だけれど通りの真ん中でぼんやりと立ち尽くして路地を見つけるわたしは、周りからすると何をしているのかという感じだし、もっとはっきり言うならば邪魔だったのだろう。
千鳥足のおじさんに肩をぶつけられた挙げ句「邪魔だよっ!」と舌足らずに怒鳴られて、わたしはハッとした。
「すみませんっ」
とその背に頭を下げて、わたしは慌てて橋に寄る。
そのままシルルを待つべきなのだろう。
けれど、ただ待っているだけの時間はほんのわずかでもすごく長く感じてしまって。
--どうなったんだろう。
なんでもなく、ただの知り合いとのじゃれ合いなら、こんなに時間がかかるものだろうか?
何か揉め事だとかで連れ込まれていた?
だとしたらわたしはそれにシルルを巻き込んでしまったということになる。
にわかにソワソワして、モンタさんたちとシルルが消えた路地の奥が気になってしまう。
シルルはここで待っていて、と言っていたけれど。
「でも」
もし本当に揉め事なら?
シルルは騎士だし、護衛を任せられるくらいだからそれなりの腕はあるのだと思う。
普段は一人で街で情報を集めているというのだ。
つまりはいざという時一人で対応できる力があるということ。
そうも思うけれど、モンタさんを連れていたのは一人ではなかった。
パッと見えただけでも三人。
しかも全員がガタイのいい男性だった。
あまり質のよろしくなさそうな……。
いえ、そこはわたしの勝手な先入観かも知れないけれど。
ウンウンと考え込みながらわたしは路地を眺め、その場をウロウロした。
周囲にはたくさんの人。
けれどシルルたちが消えた路地に向かう人はいない。
--覗くだけ……。
路地の入口から様子を覗くだけなら。
そうして様子が怪しかったら近くにいる人たちに助けを求めればいいのではないか。
こんなにたくさんの人がいるんだもの。
きっと声をかければ助けてくれる人もいる。
そっと足を動かして路地の入口に向かう。
--と、
「ガルドの犬がッ!」
人が飛び出してきたかと思うとそう捨て台詞らしき言葉を残して離れて行く。
それを追うように残り三人の男の人たち。
うちの二人には見覚えがあった。
モンタさんを連れ込んでいたうちの二人だ。
わたしはぶつかりそうになりながらも身体をひねって危ない所で避けた。
一人と目が合って、なんとなく逸らす。
心臓がドクドクと嫌な音を立てた。
目が合った、男の目。
憎悪とか、嫌悪とか、恐怖とか。
様々な感情の入り混じったような目。
--なんだろう。
見たことがあるような気がした。
どこでだったか。
わかるのはたぶんあまり思い出したくはない記憶の中だと言うこと。
ドクドクと高鳴る心臓と、背筋を流れ落ちる冷や汗がそのことを物語っているように思う。
そうしてその思い出したくない記憶というものに、わたしは心当たりがある。
----。
「……犬じゃねーっ。猿だよっ」
苦しげな声で毒づくのが聞こえて、わたしは路地へと視線を戻した。
「……モンタさんっ!」
酷い怪我だ。
声の主はシルルに肩を貸される状態で路地から出てきたモンタさんだった。
殴られたのか、左目の上が赤く腫れている。
顎にもそこを覆う深い毛でも隠しきれない赤黒い痣があった。
「大丈夫ですかっ!」
そう言って歩み寄って、初めてモンタさんはわたしに気付いたようだった。
大きな茶色い目が見開かれて、それからすぐに気まず気に伏せられた。
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