巻き込まれた村人はガチャで無双する?

黒田悠月

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 宿に戻り本日の成果を確認する。

 討伐した魔物
 スライム×8
 ゴブリン×3
 おおネズミ×1

 採取した薬草類
 カシャの葉(安価なポーションの材料になる)品質低
 ミミズキの芽(目薬の材料になる)品質普通
 コボトボの葉(ポーションの材料になる)品質普通
 カララギの葉(マジックポーションの材料になる)品質普通

 鑑定したいと思ながら地面に生えた草花を見るとその草花の名前が上記のような解説つきで視界の隅に浮かぶ。
 色んな草が群生しているような場所なら一度にいくつもの名前や解説が浮かぶのでちょっと鬱陶しいかと思うと、ステータスウィンドウで視覚から触覚に切り替えができた。
 つまり手で触れてステータスが浮かぶようにすることもできる。 
 ギルドに冒険者登録していれば魔物も討伐部位を切り取ることで報酬を受け取ることができるらしいが、この国で登録はしないので今のところは持ち帰っていない。

 薬草類を一握りずつ種類別に仕分けると、鞄の中にしまった。
 全部で20束。
 鞄がぎゅうぎゅうずめになったが、アイテムボックスは珍しく目立つので人前では使わないことにしているので致し方ない。

 レベルも上がり、2になった。
 ・・・先は長い。


 翌日はギルドに向かうことにする。
 昨日集めた薬草を引き取ってもらうのだ。
 ちなみに直接道具屋に持っていくと相場を知らない素人は大抵買い叩かれる。

「薬草の引き取りですね。冒険者登録していない場合手数料に買取値の1割を頂きますがよろしいですか?」

 ギルドの受付は残念ながらエルフや獣耳のお姉さんではなく、妙齢のお姉さんだ。
 熟女ともいう。

 買取値は手数料を引いて金貨一枚。
 カララギの葉が結構高く売れた。
 お姉さんからは「カララギの葉はとても見分けるのが難しいはずなのに」てびっくりされた。
 確かにそばにはよく似た雑草が多く生えていて、見た目では見分けはつかなかったとカティは思う。

『鑑定スキル、使えるな』

 佑樹の言葉に小さく頷いて、ギルドを後にした。
 カティとしては本当はその場で護衛の依頼を出したかったのだが、護衛と口に出しかける度に頭の中で大音響の歌声が響き渡るもので(しかもわざとらしいダミ声で音の外れた)断念した。

 さて、引き取りが終わればまた修行である。


 夕方過ぎまで魔物を討伐して、宿に戻る。
 昨日よりも少し町から離れたからか、ゴブリンによく出会った。
 ゴブリンは一体につき2ポイントが貯まる。
 昨日と合わせてポイントが22貯まった。
 これでノーマルガチャが2回回せるわけだ。

『じゃ、回してみるか』
(ああ)

 ボロいベットに座り、ステータスウィンドウを開く。
 カティは妙に緊張して、ゴクリと咽を鳴らした。

「いくぞ」

 ガチャスキルをタッチし、ウィンドウに現れたノーマルガチャというパネルをタッチする。
 すると2つ並んで1回まわす・2回連続でまわす、というパネルが現れる。

『まんまゲームのガチャ画面だな』

 確かに、佑樹の記憶の中で見たゲーム画面そのものだ。

(連続でいいかな?)

 任せるというので、2回連続でまわすをタッチした。

 すると、床に小さな青い魔方陣が現れ、見ているとくるくると周り始めた。
 そしてまず出てきたのは白い1メートル程の長さの縄。
 なんてことはない、ただの縄である。

(・・・縄?)
『縄だな』

 取り敢えず縄を手に取ると、また魔方陣がくるくると周り出す。
 が、今度はパチパチと青い火花が散って中心部だけが赤く光り出した。

『お、今度は様子が違うぞ』
『(・・・・・・ん?)』

 カティは魔方陣を覗き込み、目を見張った。
 頭の中の佑樹も小さく声を上げている。

『(・・・これって!)』

 見覚えのある、だがこの世界にはあるはずのないあるモノが、魔方陣の中で宙に浮かんでいる。
 それは魔方陣が消えるとパタッと音を立てて床に落ちた。

 恐る恐る手を出して持ち上げてみる。
 軽い。
 佑樹の記憶の中で幾度となく手にしたそれ。
 この世界に存在するものとは段違いの製本技術で閉じられた紙の束。ツルリとしたカティからすれば現実では初体験の感触。
 色鮮やかな表紙。

『うおおおお!ワン〇ースじゃん!しかも新刊!』

 頭の中で佑樹が歓声を上げる。

(マジ?)

 魔方陣から現れたモノ。
 それはマンガだった。
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