24 / 87
24
しおりを挟む
ヤルジの町に戻る前に武器屋に寄ることにした。
ヤルジの町には回復ポーションや解毒薬等ダンジョンに必須なアイテム類は多いが武器や防具はあまりないと聞いたからだ。まあダンジョンに入ろうという冒険者ならすでに武器や防具は揃えていて当然だからだろう。
カティの使用するナイフと薄手の胸当て、籠手はすでにリューレルートで購入済みなので、今回買うのはフラウの分。
さすがに幼児向けサイズの鎧だのはないので、見るのはナイフか短剣。短剣と言ってもフラウが持てば立派な大剣だが、フラウの力ならば振り回すこともできるだろう。
(フラウどんなのがいい?)
幼児に持たせる剣を買うとはさすがにおおっぴらには言えないので、頭の中でこっそりと訪ねる。
〈大きくてかっこいいのがいいです〉
何だろう。
フラウは妙に好戦的というか、ちょっと怖いというか。
『重さはあってもいいけど、あんまりでかくはない方がいいかもな。どっちかってーと、細身なのがいいだろ』
ううむ、とカティは唸りながら壁に掛けられた剣を見て回る。
「あ、あれはどうでしょうか!かっこいいです!」
言って走り出したフラウの背を追いかける。
フラウが「これです!」と指し示したのは変わった形の、剣?
細身の柄の先にギザギザの刃がいくつも連なっている。
『変わった武器だな』
「おっ、嬢ちゃんいい趣味だな」
佑樹の声に重なるようにして店の店主が笑いながら話しかけてくる。厳つい筋肉の塊みたいなおやじだ。
「そいつは魔族がたまに使う蛇咬剣って武器でな、剣っていうより刃を繋いだ鞭だ。扱いは難しいが、威力はある。だが、使うのはそっちの坊主か?」
「あー、まあ」
「なら止めといた方がいいかもな。扱いきれん」
「そんなに難しいんですか?」
「ああ。こいつは十五個の刃を魔石鋼糸で繋ぎ合わせてある。この糸を伸ばせば鞭のように、縮めれば剣、というかノコギリのような切り方になるんだが、まあ剣として使える。だが見た目よりも重いしコツが必要な上、何より魔力操作で糸を操るんで魔力が低いと全く役にたたんという代物だよ」
ずいぶん前に魔族領で面白いと思って仕入れてきたんだが、使える人間がいないからずっと売れ残っているのだと店主は苦笑いした。
〈フラウこれがいいです!大丈夫です!魔力もあるし、使えると思うのです〉
「ええと、ちなみにいくらですか?」
「金貨10枚だが、このまま置いといても売れる気のせんものだからなぁ。買ってくれるなら金貨8枚に負けとくよ」
(高い)
『まあ、珍しい武器ならこんなもんかもな』
現在カティの懐は金貨6枚と銀貨が少し。
金貨2枚分足りない。
「すみません、持ち合わせが・・・」
「はは、まあ大金だからな。こっちの短剣とかはどうだ?これなら金貨2枚で使い勝手もいい」
そう言って店主が出してきたのはシンプルな造りの細身の短剣。
カティは悪くないように思ったのだが。
〈フラウあれが良かったです〉
しゅんとした声に、カティは貧乏でごめんねって気分になる。
だがさすがに金貨10枚のものを6枚には負けてくれないだろう。
どうしたものかと思っていると佑樹が『なあ、まだオークの爪とか皮とか売ってなかったよな?』と言いだした。
あれか、とカティも思う。
フラウが討伐したオーク。肉はいくらか料理に使ったが、それ以外はまだアイテムボックスに入れたままだ。
オークは高くはないはずだが、あれならかなりの大きさだったから、なんとか金貨2枚にはなるかもしれない。
しかも、魔石があったのだった。
魔石とは魔物の核。人間でいう心臓のようなものだが、案外脆く討伐した際にキズが付いたり割れたりする。
そうなると使い物にならないが、綺麗な状態のものは加工されて様々な用途に使われるのだ。
蛇咬剣に使われている鋼糸もそうだし、魔力を溜め込む性質があるので魔剣と呼ばれる魔法を纏った武器や騎手や貴族が使う鎧に埋め込まれていたりする。
「すみません、ちょっと後でもう一度来ますっ」
カティは店を飛び出して、ギルドへと向かう。
冒険者の中には容量の小さいアイテムボックスを持っている者はいることをドズに聞いているので、ギルドでだけは出してもいいかということにした。
討伐した魔物を鞄には入れられないから。
ただし、容量は最小サイズということにするが。
カティはギルドに飛び込むと買取カウンターに一直線に向かった。
「買取をお願いします!」
甘いと言いたければ言え。
カティはどうもフラウの、と言うか子供のおねだりに弱いらしかった。
ヤルジの町には回復ポーションや解毒薬等ダンジョンに必須なアイテム類は多いが武器や防具はあまりないと聞いたからだ。まあダンジョンに入ろうという冒険者ならすでに武器や防具は揃えていて当然だからだろう。
カティの使用するナイフと薄手の胸当て、籠手はすでにリューレルートで購入済みなので、今回買うのはフラウの分。
さすがに幼児向けサイズの鎧だのはないので、見るのはナイフか短剣。短剣と言ってもフラウが持てば立派な大剣だが、フラウの力ならば振り回すこともできるだろう。
(フラウどんなのがいい?)
幼児に持たせる剣を買うとはさすがにおおっぴらには言えないので、頭の中でこっそりと訪ねる。
〈大きくてかっこいいのがいいです〉
何だろう。
フラウは妙に好戦的というか、ちょっと怖いというか。
『重さはあってもいいけど、あんまりでかくはない方がいいかもな。どっちかってーと、細身なのがいいだろ』
ううむ、とカティは唸りながら壁に掛けられた剣を見て回る。
「あ、あれはどうでしょうか!かっこいいです!」
言って走り出したフラウの背を追いかける。
フラウが「これです!」と指し示したのは変わった形の、剣?
細身の柄の先にギザギザの刃がいくつも連なっている。
『変わった武器だな』
「おっ、嬢ちゃんいい趣味だな」
佑樹の声に重なるようにして店の店主が笑いながら話しかけてくる。厳つい筋肉の塊みたいなおやじだ。
「そいつは魔族がたまに使う蛇咬剣って武器でな、剣っていうより刃を繋いだ鞭だ。扱いは難しいが、威力はある。だが、使うのはそっちの坊主か?」
「あー、まあ」
「なら止めといた方がいいかもな。扱いきれん」
「そんなに難しいんですか?」
「ああ。こいつは十五個の刃を魔石鋼糸で繋ぎ合わせてある。この糸を伸ばせば鞭のように、縮めれば剣、というかノコギリのような切り方になるんだが、まあ剣として使える。だが見た目よりも重いしコツが必要な上、何より魔力操作で糸を操るんで魔力が低いと全く役にたたんという代物だよ」
ずいぶん前に魔族領で面白いと思って仕入れてきたんだが、使える人間がいないからずっと売れ残っているのだと店主は苦笑いした。
〈フラウこれがいいです!大丈夫です!魔力もあるし、使えると思うのです〉
「ええと、ちなみにいくらですか?」
「金貨10枚だが、このまま置いといても売れる気のせんものだからなぁ。買ってくれるなら金貨8枚に負けとくよ」
(高い)
『まあ、珍しい武器ならこんなもんかもな』
現在カティの懐は金貨6枚と銀貨が少し。
金貨2枚分足りない。
「すみません、持ち合わせが・・・」
「はは、まあ大金だからな。こっちの短剣とかはどうだ?これなら金貨2枚で使い勝手もいい」
そう言って店主が出してきたのはシンプルな造りの細身の短剣。
カティは悪くないように思ったのだが。
〈フラウあれが良かったです〉
しゅんとした声に、カティは貧乏でごめんねって気分になる。
だがさすがに金貨10枚のものを6枚には負けてくれないだろう。
どうしたものかと思っていると佑樹が『なあ、まだオークの爪とか皮とか売ってなかったよな?』と言いだした。
あれか、とカティも思う。
フラウが討伐したオーク。肉はいくらか料理に使ったが、それ以外はまだアイテムボックスに入れたままだ。
オークは高くはないはずだが、あれならかなりの大きさだったから、なんとか金貨2枚にはなるかもしれない。
しかも、魔石があったのだった。
魔石とは魔物の核。人間でいう心臓のようなものだが、案外脆く討伐した際にキズが付いたり割れたりする。
そうなると使い物にならないが、綺麗な状態のものは加工されて様々な用途に使われるのだ。
蛇咬剣に使われている鋼糸もそうだし、魔力を溜め込む性質があるので魔剣と呼ばれる魔法を纏った武器や騎手や貴族が使う鎧に埋め込まれていたりする。
「すみません、ちょっと後でもう一度来ますっ」
カティは店を飛び出して、ギルドへと向かう。
冒険者の中には容量の小さいアイテムボックスを持っている者はいることをドズに聞いているので、ギルドでだけは出してもいいかということにした。
討伐した魔物を鞄には入れられないから。
ただし、容量は最小サイズということにするが。
カティはギルドに飛び込むと買取カウンターに一直線に向かった。
「買取をお願いします!」
甘いと言いたければ言え。
カティはどうもフラウの、と言うか子供のおねだりに弱いらしかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる