巻き込まれた村人はガチャで無双する?

黒田悠月

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 それは、きれいな円形の部屋の中心にポツンとあった。
 3階層。
 幻想の青い海に沈んだ部屋の中。

「ふわあー。おっきい卵なのです!フラウと同じくらいあるのですー」
「はじめて見たけどキレイなものね」
『面白い色してるな』
「フオフオオー」
「ってかまだ孵化してないじゃないか」

 卵はつるんとした表明にいくつものヒビが入った状態で今にも割れそうではあるが、未だに中身は入ったままだった。
 様々な種類の異なる青がマーブル状に混在している色をしていてサイズはちょうどフラウの背とほぼ同じ。
 確かに卵としてはかなり大きい。

「それにしても息苦しい気がして落ち着かないな」

 実際には息は普通に出来ているのだが、視覚的には水の中である。3階層は天井まで全て幻覚の水の中にあった。
 時折床からプクプクと小さな泡が立ち、視界がゆらゆらと揺れ、滲む。

「空気はあるでしょ。気のせいよ」
「いや、そうなんだけど気分的に・・・っ!フラウっ一人であんまり近付くんじゃ」

 ない。と言いかけた声が止まった。

「・・・・・・っ」
「・・・ごぼっ!」

 突然幻であったはずの水が確かな感触と質量を持って開いた喉に流れ込む。
 発生する浮力によってわずかに足が床から離れた。

「んんんーっ」

 足をバタバタさせながらフラウの小さな指が卵を指し示す。

「んんーっ、んんんーんっ!」

 あわてて息を止めたカティの目に卵の小さく欠けた隙間から覗く青い瞳が見えた。

 パキ。
 パキパキパキ。

 ・・・パッキン!

 甲高い音を立てて殻が一斉に細かく砕け水に乗って流れていく。

「ピュリリリリー」

 藍色の鱗を持った背に羽を持ったトカゲが一声鳴いて飛び上がった。と思うと周囲から水の感触が消え肺を襲う圧迫が消える。

「ごほっ!」

 今度は急に大量の酸素が肺に流れ込むのに咳き込みながらカティは羽の生えたトカゲーいや、竜か、の姿を目で追った。

「ふわあ」
「あら」
「フモ?」
「・・・・・・え?」
『お?』

 竜は入っていた卵よりも一回り小さい。
 少し大きめのぬいぐるみサイズで、その身体よりもずっと小さなコウモリのような形の羽をバタバタと忙しなく動かしてカティたちの頭上をしばらくくるくる回っていたと思うと。

「ピュルっ♪」

 高い声で鳴いて。
 カティの頭に乗った。

「・・・は?え?」

 くるくる喉を鳴らしてカティの髪を舌で舐めている。

「ちょっ!これ、どうなって・・・?どうしたらいいんだ?」

 おろおろして皆を見回して見るが、誰も何も言わない。

「キュルル?」
「り、リリスっ!」

 リリスに助けを求めようと声をあげた、その時。
 頭が軽くなった。

「・・・へ?」

 バタバタという音とともに竜がカティの前に降り立つ。
 と、竜の姿が眩しく光ったかと思うと次の瞬間には藍色の長い髪に青い目をした裸の幼女がいた。
 幼女はカティと目を合わすと軽く小首を傾げ、

「パパ?」

 爆弾発言をした。
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