68 / 87
68
しおりを挟む
それは、きれいな円形の部屋の中心にポツンとあった。
3階層。
幻想の青い海に沈んだ部屋の中。
「ふわあー。おっきい卵なのです!フラウと同じくらいあるのですー」
「はじめて見たけどキレイなものね」
『面白い色してるな』
「フオフオオー」
「ってかまだ孵化してないじゃないか」
卵はつるんとした表明にいくつものヒビが入った状態で今にも割れそうではあるが、未だに中身は入ったままだった。
様々な種類の異なる青がマーブル状に混在している色をしていてサイズはちょうどフラウの背とほぼ同じ。
確かに卵としてはかなり大きい。
「それにしても息苦しい気がして落ち着かないな」
実際には息は普通に出来ているのだが、視覚的には水の中である。3階層は天井まで全て幻覚の水の中にあった。
時折床からプクプクと小さな泡が立ち、視界がゆらゆらと揺れ、滲む。
「空気はあるでしょ。気のせいよ」
「いや、そうなんだけど気分的に・・・っ!フラウっ一人であんまり近付くんじゃ」
ない。と言いかけた声が止まった。
「・・・・・・っ」
「・・・ごぼっ!」
突然幻であったはずの水が確かな感触と質量を持って開いた喉に流れ込む。
発生する浮力によってわずかに足が床から離れた。
「んんんーっ」
足をバタバタさせながらフラウの小さな指が卵を指し示す。
「んんーっ、んんんーんっ!」
あわてて息を止めたカティの目に卵の小さく欠けた隙間から覗く青い瞳が見えた。
パキ。
パキパキパキ。
・・・パッキン!
甲高い音を立てて殻が一斉に細かく砕け水に乗って流れていく。
「ピュリリリリー」
藍色の鱗を持った背に羽を持ったトカゲが一声鳴いて飛び上がった。と思うと周囲から水の感触が消え肺を襲う圧迫が消える。
「ごほっ!」
今度は急に大量の酸素が肺に流れ込むのに咳き込みながらカティは羽の生えたトカゲーいや、竜か、の姿を目で追った。
「ふわあ」
「あら」
「フモ?」
「・・・・・・え?」
『お?』
竜は入っていた卵よりも一回り小さい。
少し大きめのぬいぐるみサイズで、その身体よりもずっと小さなコウモリのような形の羽をバタバタと忙しなく動かしてカティたちの頭上をしばらくくるくる回っていたと思うと。
「ピュルっ♪」
高い声で鳴いて。
カティの頭に乗った。
「・・・は?え?」
くるくる喉を鳴らしてカティの髪を舌で舐めている。
「ちょっ!これ、どうなって・・・?どうしたらいいんだ?」
おろおろして皆を見回して見るが、誰も何も言わない。
「キュルル?」
「り、リリスっ!」
リリスに助けを求めようと声をあげた、その時。
頭が軽くなった。
「・・・へ?」
バタバタという音とともに竜がカティの前に降り立つ。
と、竜の姿が眩しく光ったかと思うと次の瞬間には藍色の長い髪に青い目をした裸の幼女がいた。
幼女はカティと目を合わすと軽く小首を傾げ、
「パパ?」
爆弾発言をした。
3階層。
幻想の青い海に沈んだ部屋の中。
「ふわあー。おっきい卵なのです!フラウと同じくらいあるのですー」
「はじめて見たけどキレイなものね」
『面白い色してるな』
「フオフオオー」
「ってかまだ孵化してないじゃないか」
卵はつるんとした表明にいくつものヒビが入った状態で今にも割れそうではあるが、未だに中身は入ったままだった。
様々な種類の異なる青がマーブル状に混在している色をしていてサイズはちょうどフラウの背とほぼ同じ。
確かに卵としてはかなり大きい。
「それにしても息苦しい気がして落ち着かないな」
実際には息は普通に出来ているのだが、視覚的には水の中である。3階層は天井まで全て幻覚の水の中にあった。
時折床からプクプクと小さな泡が立ち、視界がゆらゆらと揺れ、滲む。
「空気はあるでしょ。気のせいよ」
「いや、そうなんだけど気分的に・・・っ!フラウっ一人であんまり近付くんじゃ」
ない。と言いかけた声が止まった。
「・・・・・・っ」
「・・・ごぼっ!」
突然幻であったはずの水が確かな感触と質量を持って開いた喉に流れ込む。
発生する浮力によってわずかに足が床から離れた。
「んんんーっ」
足をバタバタさせながらフラウの小さな指が卵を指し示す。
「んんーっ、んんんーんっ!」
あわてて息を止めたカティの目に卵の小さく欠けた隙間から覗く青い瞳が見えた。
パキ。
パキパキパキ。
・・・パッキン!
甲高い音を立てて殻が一斉に細かく砕け水に乗って流れていく。
「ピュリリリリー」
藍色の鱗を持った背に羽を持ったトカゲが一声鳴いて飛び上がった。と思うと周囲から水の感触が消え肺を襲う圧迫が消える。
「ごほっ!」
今度は急に大量の酸素が肺に流れ込むのに咳き込みながらカティは羽の生えたトカゲーいや、竜か、の姿を目で追った。
「ふわあ」
「あら」
「フモ?」
「・・・・・・え?」
『お?』
竜は入っていた卵よりも一回り小さい。
少し大きめのぬいぐるみサイズで、その身体よりもずっと小さなコウモリのような形の羽をバタバタと忙しなく動かしてカティたちの頭上をしばらくくるくる回っていたと思うと。
「ピュルっ♪」
高い声で鳴いて。
カティの頭に乗った。
「・・・は?え?」
くるくる喉を鳴らしてカティの髪を舌で舐めている。
「ちょっ!これ、どうなって・・・?どうしたらいいんだ?」
おろおろして皆を見回して見るが、誰も何も言わない。
「キュルル?」
「り、リリスっ!」
リリスに助けを求めようと声をあげた、その時。
頭が軽くなった。
「・・・へ?」
バタバタという音とともに竜がカティの前に降り立つ。
と、竜の姿が眩しく光ったかと思うと次の瞬間には藍色の長い髪に青い目をした裸の幼女がいた。
幼女はカティと目を合わすと軽く小首を傾げ、
「パパ?」
爆弾発言をした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる