「怪奇小説」ー短編集

『むらさき』

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「うるさい音」

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毎日のように聞こえてくる奇妙な音。その出所を探すべく、部屋の隅々を調べ尽くしたが何も見つからない。耳をすますと、壁の向こうから聞こえてくるような気がする。

「まさか隣の部屋から?」

隣に住む人に聞いてみると、音については聞いたことがないとのこと。音を録音して聞かせてみるが、隣の人には聞こえないらしい。私だけが聞くことができる謎の音。

その日も音が鳴り響く。イライラしながら音の正体を突き止めるべく、壁をノックする。すると奇妙なことに、ノックの音が全く違う。空洞な音がする。
壁の向こうに何かがある。

ドアを開けると、そこには見覚えのない部屋が。奥からうるさい音が聞こえてくる。どうやら私の部屋の隣にもう一つ部屋があるらしい。

その謎の部屋に足を踏み入れると、うるさい音はいきなり止んだ。その瞬間、私の背後でドアが勝手に閉まった。
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