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ある奇妙な部屋
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明(あきら)は、大学の掲示板を眺めながらため息をついた。学費や生活費を稼ぐために、アルバイトを探し続ける日々。いくつかのチラシに目を通すが、どれも給料が低く、長時間の労働を要求するものばかりだった。
しかし、その中で一枚の紙が彼の目を引いた。
「深夜に特定のビルで部屋を開けて確認するだけで、報酬:1回につき5万円」
明はその異常な高額報酬に驚きつつも、同時に不安を覚えた。だが、金銭的な困窮は彼の理性を鈍らせ、高額報酬の魅力には逆らえなかった。チラシの連絡先に電話をかけ、約束の場所である古びたビルに向かった。
そのビルの前で、初老の男が待っていた。住吉(すみよし)という名の管理人だと名乗る男は、薄暗い照明の下で不気味な笑みを浮かべていた。
「君が明くんかね?今回の仕事の詳細を説明しよう」
と住吉は静かに語り始めた。
「君にはこのビルの5階にある特定の部屋を確認してもらう。それだけだ。ただし、絶対に中には入ってはならない。扉を開け、中の状態を見て、報告するだけだ」
住吉の言葉に不安がよぎったが、報酬の額を思い出し、明は頷いた。
◇
深夜、ビルは静まり返っていた。明は住吉から渡された鍵を握りしめ、古びたエレベーターで5階に向かった。エレベーターの音がやけに大きく感じられる。5階に到着し、目的の部屋の前に立つと、明は息をのんだ。
ドアには奇妙な紋様が彫られており、何か異様な気配が漂っていた。明は鍵を差し込み、ゆっくりと扉を開けた。部屋の中は薄暗く、古びた家具が並んでいるだけだった。特に変わった様子はなかったが、妙な寒気が背筋を走った。
「見たところ、特に異常はなさそうだ…」
明はそう思いながら、ドアを閉めようとした。
しかし、その瞬間、部屋の奥から低いうめき声が聞こえた。明は思わず中に足を踏み入れそうになったが、住吉の言葉を思い出して踏みとどまった。
「決して中に入ってはならない」
彼はすぐにドアを閉め、急いでその場を離れた。エレベーターのボタンを押し、心臓が激しく鼓動する中、1階へと降りて行った。
翌朝、報酬を受け取った明は、その晩の出来事を振り返りながらも、何とか落ち着きを取り戻していた。しかし、夜が訪れると再び仕事が待っていた。彼は何度も同じように部屋を確認し、報酬を受け取った。
だが、ある夜、明の好奇心が限界に達した。再び部屋を確認するために扉を開けると、彼は意を決して一歩中に踏み入れた。途端に部屋全体が冷気に包まれ、背後でドアが音もなく閉まった。
「いったい何が…?」
明は振り返った。しかし、ドアはもはやそこにはなかった。彼が立っていたのは、無限に続く暗闇の中だった。彼は叫び声をあげようとしたが、その声は音もなく吸い込まれていった。
◇
その後、明の姿を見た者はいなかった。住吉は新たなアルバイト募集のチラシを掲示板に貼り付ける。そして、また一人、若者がその高額報酬に惹かれ、古びたビルの前に立つのだった。
住吉の不気味な笑みが、薄暗い照明の下で一層深まった。
しかし、その中で一枚の紙が彼の目を引いた。
「深夜に特定のビルで部屋を開けて確認するだけで、報酬:1回につき5万円」
明はその異常な高額報酬に驚きつつも、同時に不安を覚えた。だが、金銭的な困窮は彼の理性を鈍らせ、高額報酬の魅力には逆らえなかった。チラシの連絡先に電話をかけ、約束の場所である古びたビルに向かった。
そのビルの前で、初老の男が待っていた。住吉(すみよし)という名の管理人だと名乗る男は、薄暗い照明の下で不気味な笑みを浮かべていた。
「君が明くんかね?今回の仕事の詳細を説明しよう」
と住吉は静かに語り始めた。
「君にはこのビルの5階にある特定の部屋を確認してもらう。それだけだ。ただし、絶対に中には入ってはならない。扉を開け、中の状態を見て、報告するだけだ」
住吉の言葉に不安がよぎったが、報酬の額を思い出し、明は頷いた。
◇
深夜、ビルは静まり返っていた。明は住吉から渡された鍵を握りしめ、古びたエレベーターで5階に向かった。エレベーターの音がやけに大きく感じられる。5階に到着し、目的の部屋の前に立つと、明は息をのんだ。
ドアには奇妙な紋様が彫られており、何か異様な気配が漂っていた。明は鍵を差し込み、ゆっくりと扉を開けた。部屋の中は薄暗く、古びた家具が並んでいるだけだった。特に変わった様子はなかったが、妙な寒気が背筋を走った。
「見たところ、特に異常はなさそうだ…」
明はそう思いながら、ドアを閉めようとした。
しかし、その瞬間、部屋の奥から低いうめき声が聞こえた。明は思わず中に足を踏み入れそうになったが、住吉の言葉を思い出して踏みとどまった。
「決して中に入ってはならない」
彼はすぐにドアを閉め、急いでその場を離れた。エレベーターのボタンを押し、心臓が激しく鼓動する中、1階へと降りて行った。
翌朝、報酬を受け取った明は、その晩の出来事を振り返りながらも、何とか落ち着きを取り戻していた。しかし、夜が訪れると再び仕事が待っていた。彼は何度も同じように部屋を確認し、報酬を受け取った。
だが、ある夜、明の好奇心が限界に達した。再び部屋を確認するために扉を開けると、彼は意を決して一歩中に踏み入れた。途端に部屋全体が冷気に包まれ、背後でドアが音もなく閉まった。
「いったい何が…?」
明は振り返った。しかし、ドアはもはやそこにはなかった。彼が立っていたのは、無限に続く暗闇の中だった。彼は叫び声をあげようとしたが、その声は音もなく吸い込まれていった。
◇
その後、明の姿を見た者はいなかった。住吉は新たなアルバイト募集のチラシを掲示板に貼り付ける。そして、また一人、若者がその高額報酬に惹かれ、古びたビルの前に立つのだった。
住吉の不気味な笑みが、薄暗い照明の下で一層深まった。
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