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PTAの肝試し
しおりを挟む夏の終わり、町内のPTAで肝試し大会をすることが決まった。普段から参加するイベントにはそれなりに協力的な私だったが、この企画だけはどうも気が進まなかった。夜の山中で子供たちを驚かせる役目を任されるなんて、気味が悪いだけでなく、疲れるだけだと思ったからだ。
その夜、私は仕方なく山の中腹にある指定の場所に向かった。霧が立ち込める中、ひんやりとした空気が肌に触れ、鳥肌が立った。懐中電灯の光がわずかに木々の間を照らし出すが、それ以上の闇が押し寄せてくるようだった。
「ここか…」
私の役割は、子供たちがやって来るのを待って、彼らを驚かせることだった。しかし、心の奥底では、ただこの夜が早く終わってほしいと願っていた。
しばらく待っていると、遠くから子供たちの笑い声が聞こえてきた。最初のグループが近づいてくる。私は息を潜め、木の陰に隠れた。懐中電灯の光が揺れながらこちらに近づいてくるのが見えた。
ところが、その光が私の近くまで来たとき、妙な違和感を覚えた。子供たちの姿が見えたが、彼らの表情は不自然なほど無表情だった。まるで操り人形のように動いている。
「どうしたんだ…?」
私は声をかけようとしたが、言葉が喉に詰まった。次の瞬間、彼らの後ろにいる男の姿が目に入った。全身黒ずくめで、顔は見えないが、その不気味な存在感が私の全身を凍りつかせた。
その男と一瞬目が合った気がした。冷たい視線が私を貫いた。その瞬間、私は恐怖で身動きが取れなくなり、腰が抜けてその場に倒れ込んでしまった。
「な…なんだ、あれは…」
子供たちはまるで私がそこにいないかのように、無表情のまま通り過ぎていった。不気味な男も彼らの後をついて行く。
「これは夢だ、夢に違いない…」
しかし、現実は冷酷だった。私は懐中電灯を握りしめながら、必死に立ち上がろうとしたが、恐怖で体が言うことを聞かない。その場に座り込んだまま、震える手で携帯電話を取り出し、助けを求めるメッセージを打ち込んだ。
その時、背後から冷たい手が肩に触れた。心臓が止まるかと思うほどの恐怖が体を貫いた。振り向く勇気もなく、私は目を閉じて、その手が消えるのを祈った。
やがて、手の感触が消えた。恐る恐る振り返ると、そこには誰もいなかった。震えながら立ち上がり、私はその場を後にした。
翌日、PTAの会議で昨夜の出来事を話すと、他の親たちは笑って軽く受け流した。しかし、あの無表情の子供たちと不気味な男の姿は、今でも鮮明に私の記憶に焼き付いている。
肝試しの夜以来、私は夜の山に近づかなくなった。そして、あの夜に見たものが一体何だったのか、未だに答えを見つけられずにいる。ただ一つ確かなのは、あの夜に感じた恐怖は決して消えることがないということだ。
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