「監査官兼執行官アッシュ・ノイマン」ーこの異世界はなにかがオカシイ

『むらさき』

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闇ギルド調査

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 ギルドの中心部にある厳重な扉の前で、アッシュ・ノイマンは自身の緊張を隠しながら立っていた。彼の心臓の鼓動が、静寂に満ちた廊下で響いているように感じられた。扉が開き、彼はギルド運営者イグナイトの居室へと足を踏み入れた。

 部屋の中央には、炎を思わせる赤い縁取りが施された円卓があり、その後ろでイグナイトが待っていた。彼の存在感は、まるで周囲の空気を支配するかのようだった。

 イグナイトはノイマンを一瞥し、声をかけた。

「アッシュ・ノイマン、ようこそ。君のことは聞いている。しかし、ここは信頼が全てだ」

 ノイマンは落ち着いて答えた。

「私はギルドのために働きたいと思っています。私の奇跡も皆さんのお役に立てればと」

 イグナイトは口元に皮肉な笑みを浮かべながら立ち上がり、手のひらを前に出すと、さりげなく火球を作り出した。それは彼の奇跡、「火球」だった。火球は彼の手の上で踊り、部屋をオレンジ色の光で照らした。

「私の奇跡はこの火球だ。ただし、私も制限がある。連続して使用することはできない。一度使えば、しばらくは再び使うことはできないのだ」

 イグナイトは、デスクに戻りながらノイマンに視線を向けた。彼の視線は計算されたもので、ノイマンを試すかのように冷ややかだった。

「アッシュ・ノイマン、君がここにいるのは奇跡の力を買われてのことだ。だが、その力がどれほどのものか、まずは見せてもらおうか」

 イグナイトは隣に立つ静かな女性に目を向けた。

「こちらがアリサだ。彼女の奇跡は特殊で、他者の奇跡を無効化することができる。なおかつ、彼女は喉を潰されており、声を発することはできない。だがそれが彼女の力をより一層、特別なものにしている」

 アリサはノイマンに一瞥もくれず、ただ静かに頷いた。彼女の瞳は深く、何かを計算しているかのように冷徹だった。

 イグナイトは言葉を続けた。

「アリサは私の側に常にいる。彼女の能力はギルドにとって不可欠なもので、私の権力を支える一翼を担っている。君もその力を理解した上で、私のギルドに入ることになるだろう」

 彼の言葉ははっきりとした警告であり、同時に彼の支配下にあるギルドの秩序をノイマンに認識させるためのものだった。イグナイトのギルドでは力こそがすべてを意味し、その力のバランスが厳格に保たれていることを示していた。

 ノイマンはアリサの存在を認識し、彼女の奇跡の重要性を理解した。彼はこのギルドで生き残るためには、イグナイトの信頼を得ることが不可欠であると感じた。そして彼の任務が、その信頼を築く第一歩であることを悟ったのだった。

 イグナイトはノイマンに命令した。

「君の忠誠と奇跡を試すために、特別な任務を用意した。成功すれば、君の地位はここで保証されるだろう」

 彼女がそこにいる限り、ノイマンの「思考の共有」の奇跡は使えない。イグナイトの次の言葉が、ノイマンにとっての試練の始まりを告げた。

 イグナイトは火球の炎を手のひらで消し、冷ややかな視線をアッシュ・ノイマンに向けた。部屋に漂う緊張が一層高まる中で、彼は言葉を紡ぎ始めた。

「我々の活動を脅かす者たちがいる。特にある伯爵家が、闇ギルドを摘発しようと動いている。君の任務はそこに潜入し、彼らの弱点を見つけ出すことだ」

 イグナイトは続けた。

「この任務は容易ではない。伯爵家の警戒は厳重だ。だが、君の奇跡ならば、誰かの心を読むことで、必要な情報を引き出せるはずだ」

 ノイマンは頷き、内心ではこの任務が彼の潜入とエクレシア・バランスの目的にどう影響するかを計算していた。

「わかりました。伯爵家に潜入し、彼らがギルドに対してどんな手を打とうとしているのか、そして彼らの弱みを探ります」

 イグナイトは満足そうに微笑んだ。

「良い。任務を完遂した暁には、報酬も手厚いものを用意しておく。しかし失敗した場合、君がどんな奇跡を持っていようと、我々の手から逃れることはできないだろう」

 ノイマンはその警告を受け入れ、イグナイトの部屋を後にした。彼は伯爵家への潜入計画を練り始めた。闇ギルド内での立場を固めつつ、エクレシア・バランスへの忠誠を守るために、彼は緻密な戦略と冷静な判断が求められる局面に直面していた。
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