「監査官兼執行官アッシュ・ノイマン」ーこの異世界はなにかがオカシイ

『むらさき』

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闇ギルド調査

4 報告

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 伯爵家の広大な屋敷の裏口から、アッシュ・ノイマンは給仕としてこっそりと潜入した。彼の新しい身分は、一介の使用人。シンプルな制服に身を包み、他の従業員と同じように振舞いながら、彼は伯爵の日常に溶け込むことに成功した。

 数日間、彼は地道に仕事をこなし、屋敷のルーティンを学び取りながら、伯爵の個人的な空間に近づく機会を伺った。そしてついに、夜の晩餐会の際に伯爵の個室に給仕として入るチャンスが訪れた。

 部屋には伯爵とその側近たちがいたが、ノイマンは彼らの会話に耳を傾けつつ、食事の準備に没頭するふりをした。そして、伯爵が一人で考えにふける瞬間を見計らい、彼の奇跡「思考の共有」を発動させた。

 伯爵の心の声が、ノイマンの意識に流れ込んできた。彼は伯爵の心の中にある不安、計画、そして闇ギルドに対する疑念を読み取った。伯爵はギルドに対抗するための秘密の会合を計画しており、その会合で重要な決定が行われることがわかった。

 ノイマンはその情報を記憶し、奇跡の効果が消える前に、さりげなく部屋を後にした。彼は誰にも気づかれることなく、屋敷を通り抜け、指定された場所に隠れて、イグナイトへの連絡を待った。

 伯爵家の秘密が、闇ギルドにとっての大きな利益となることは確かだった。

 アッシュ・ノイマンはイグナイトの隠れ家に戻り、屋敷で得た情報をギルドの運営者に伝えた。彼の報告を聞いたイグナイトの目には、危険な光が宿っていた。

「伯爵が会合を計画しているというのか...」イグナイトはゆっくりと立ち上がりながら、思案げに言葉を続けた。

「これは我々にとって絶好の機会だ」

 ノイマンはイグナイトの表情を読み取り、何か大きな計画が頭の中で練られていることを感じ取った。彼の直感は、ほどなくして現実のものとなった。

 イグナイトは冷静に命令を下した。

「この会合を、我々の敵を一掃する場に変える。伯爵たちを暗殺し、彼らの動きを根底から断ち切るのだ」

 ノイマンは一瞬、この無慈悲な計画に内心で躊躇したが、情報を提供した自分もまた計画の一翼を担っていることに変わりはなかった。彼は自分の感情を抑え、イグナイトに応じた。

「わかりました。しかし、会合は厳重に警護されています。どのようにして...」

 イグナイトは狡猾な笑みを浮かべ、ノイマンを遮った。

「その細かい計画は私が立てよう。お前には、会合の場所と時間をもう一度確認してもらい、可能ならば会場の配置や警護の詳細を探り出して欲しい」

 ノイマンは肯くと、再び伯爵家に戻る準備を始めた。イグナイトの計画は無謀であると同時に、もし成功すれば闇ギルドの力を大いに増すことになるだろう。その夜、ギルド内で暗殺計画が静かに進行していた。

 イグナイトの部屋で、彼は隣に座るアリサに向かって計画を語り始めた。

「アッシュ・ノイマンが伯爵家に潜入し、秘密の会合の情報をつかんだ。これは我々にとって大きなチャンスだ」

 アリサは黙ってイグナイトの言葉を聞いていた。彼女の目には感情はなく、ただ冷静に彼の言葉を受け止めるだけだった。

「我々はこの会合を利用し、伯爵たちを一掃する。ノイマンはそのための道具だ。彼の奇跡が、我々にとって大いに役立つ」

 イグナイトの声は冷静で、彼の目は計算高く輝いていた。彼は、自分の目的のためにはどんな手段を使っても構わないという冷酷さを持っていた。

「アリサ、お前にはノイマンの奇跡を制御する役割を任せる。彼が我々のために最大限の効果を発揮できるように、適切なタイミングで彼の奇跡を解放するのだ」

 アリサは一瞥も示さずに、ただ静かに頷いた。彼女の瞳は深く、何かを計算しているかのように冷徹だった。

(人間は道具だ。彼らがどんなに特別な力を持っていようと、その力が我々の目的に役立つなら、それ以上の価値はない。ノイマンもアリサも、他の誰もが私の目的のための道具にすぎない)

 彼の思考は冷たく、自身の権力と野望を露わにしていた。彼は人間をただの駒としか見ておらず、その駒が自分の勝利につながるなら、どんな犠牲も厭わない人物だった。アリサもノイマンも、彼の目的のために使われる存在であり、彼ら自身の価値は二の次だという事実が、イグナイトの思考からはっきりと伝わってきた。

「会合当日、ノイマンには会合場所の館で監視させる。館内の配置、警護の詳細を把握させ、その情報を我々に伝えてもらう。そして、私の奇跡である火球と、我々が用意した高価な油と火薬を使って、館を一気に爆破する」

 イグナイトの目には、計画の成功を確信するような危険な光が宿っていた。

「その爆発により、伯爵たちは一瞬にして消え去る。そして、ノイマンにはすべての罪を着せる。彼が伯爵家に潜入した使用人だという事実を利用し、彼を犯人として世間に晒すのだ」

 彼の声は低く、計画の残酷さを隠すことなく語っていた。

「そして私は闇に隠れ、ほとぼりが冷めるのを待つ。その間、ノイマンの件は我々闇ギルドの制裁だと吹聴する。これにより、我々に対抗しようとする者を警戒させ、我々の力を恐れさせるだろう」

 イグナイトの計画は、自身とギルドを守るために、無実のノイマンを犠牲にするという冷酷なものだった。しかし、彼はその事実に一切の躊躇もなく、自身の目的達成のためにはどんな手段も厭わないという冷徹さを持っていた。
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