「監査官兼執行官アッシュ・ノイマン」ーこの異世界はなにかがオカシイ

『むらさき』

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光の回廊へ

5 対話

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 アッシュ・ノイマンとジャガンが向き合っている部屋は、静寂に包まれていたが、その空気は緊張で張り詰めていた。二人の間に流れるのは、重く、厚みのある空気だ。

 アッシュは、彼の特別な奇跡「思考の共有」を使い、ジャガンに自分の内なる世界を直接伝える準備を整えていた。

 ジャガンは自信に満ちた表情でアッシュを見据えていたが、アッシュの目は深く、何か達観したような輝きを放っていた。

「ジャガン様、準備ができました」

 ジャガンはうなずいたが、彼はまだアッシュの真の意図を理解していなかった。

 ジャガンが黒い帯を外した瞬間、アッシュは、集中を深める。そして、彼の奇跡が、二人の心が繋がり始める瞬間が訪れた。アッシュの辛く、苦しい過去、自己との葛藤が、ジャガンの心に流れ込んでいく。

 最初は抵抗の意志を見せていたジャガンも、徐々に表情が変わり始める。アッシュが経験した過酷な過去や、心の傷がジャガンにも伝わり、彼の心に重くのしかかった。

 ジャガンの心は、アッシュの壮絶な過去とその深い罪悪感、自己嫌悪の感情によって、徐々に侵食されていく。彼の内面で、アッシュの苦痛が断片的に、しかし容赦なく浮かび上がり、ジャガンを精神的な苦悩の渦中に引きずり込む。

 アッシュの記憶の中で、幼少期の無力感、青春時代の孤独、成人してからの後悔と失敗が、ジャガンの心を次々と打ちのめす。それぞれの記憶が、鮮明で生々しい感情と共にジャガンに襲いかかり、彼の心はそれらの重さに耐えられずに崩れていく。

 アッシュの経験した裏切り、愛する人との別れ、信じられないほどの孤独感と絶望が、ジャガンの心を容赦なく蝕んでいく。彼は、アッシュの心がどれほどの痛みに耐え、どれほどの苦しみを抱えて生きてきたのかを、肌で感じる。

 ジャガンの自己嫌悪の感覚は、アッシュの記憶を通じて、さらに深まる。彼は、アッシュが感じてきた罪悪感、失敗への後悔、そして自己嫌悪の感情をそのまま自分のものとして追体験する。この過酷な体験は、ジャガンにとって耐えがたい苦痛となり、彼の精神を痛々しくも壮絶に引き裂く。

 ジャガンは、自分の内面でアッシュの痛みを感じながら、その苦悩の深さに圧倒される。彼の心は、アッシュが経験した悲しみ、孤独、そして絶望の感情によって、徹底的に痛めつけられる。ジャガンは、自分がこれまで他人に押し付けてきた苦痛が、実際にはどれほど残酷であったかを、この時初めて真に理解するのだった。

「これがお前が他人に与えていたものだ。自己嫌悪を煽り、解決策を提供するかのように装う。だが、真の苦悩は、お前が思っている以上に深い。お前は、自分の行為の重大さを理解していなかった」

 とアッシュは静かに語った。

 ジャガンは床に崩れ落ち、深い絶望に覆われた。彼は自身が信者たちに何をしてきたのか、その全容をようやく理解したのだ。

 アッシュがジャガンのそばを離れる時、彼は冷静に言った。

「人は、自分の行動の影響に直面しなければならない。今日、お前はその第一歩を踏み出したんだ」

 ジャガンは一人、部屋で震えていた。
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