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帰り道に元彼を見かけた
しおりを挟む土曜日の午後、晴香は郵便局で小包を出した帰り道に、見覚えのある男性の姿を見かけた。胸が高鳴る。彼は間違いなく栄太だった。別れてから一度も会っていなかった元恋人の姿が、なぜか今日、彼女の目の前に現れたのだ。
晴香は好奇心からその場に立ち止まり、栄太を尾行することに決めた。彼の後ろ姿を見つめるうちに、過去の思い出が次々と蘇ってきた。
彼との出会いは大学の図書館だった。共通の友人を通じて知り合い、自然と親しくなっていった。二人で過ごした時間は、まるで夢のように楽しかった。彼の優しさ、笑顔、そしてその腕に抱かれたときの安心感。それらすべてが今、彼女の胸に鮮明に刻まれていた。
しかし、栄太はある日突然、何の前触れもなく姿を消した。理由も告げず、ただ一言の別れもなく。晴香はその日からずっと、彼のことを忘れようとしていたが、心の奥底では未だに彼への思いを引きずっていた。
栄太の後をつけるうちに、彼が公園のベンチに腰掛けるのを見つけた。晴香は木陰に隠れながら、彼の様子を見守った。何かを考え込むようにしていた彼の顔には、かつての面影があったが、どこか遠い存在のように感じられた。
突然、栄太が立ち上がり、どこかへ向かって歩き始めた。晴香は慌てて追いかけたが、次の瞬間、彼の姿が消えてしまった。焦りと不安が交錯する中、後ろから声をかけられた。
「晴香さん?」
振り返ると、そこには栄太の母親、登美子さんが立っていた。彼女の顔には悲しみが漂っていた。
「登美子さん...どうしてここに?」
「今からお墓に行くの...実は、今日は栄太の命日なの。去年の今日、彼は病気で亡くなったのよ」
その言葉が晴香の耳に届いた瞬間、彼女の胸は痛みでいっぱいになった。まるで時間が止まったかのように感じられた。
「そんな...どうして知らせてくれなかったんですか?」
「知らせようと何度も思ったけれど、亡くなる直前まで栄太が『彼女が幸せに暮らしているなら、俺のせいでそれを壊したくない』って言ってたの」
登美子の言葉に、晴香は涙をこらえきれなかった。彼との別れが、これほどまでに深い悲しみをもたらすとは思ってもみなかった。あの時、理由を聞かずに去った彼のことを責める気持ちはもうなかった。ただ、彼のことを心から愛していたことを再認識したのだった。
「ありがとう、登美子さん。栄太のことを教えてくれて」
登美子は優しく微笑み、晴香の肩をそっと抱いた。二人はしばらくの間、静かな公園の中で過ごした。風がそよぎ、木々の葉が揺れる音だけが聞こえていた。
晴香は最後に、栄太の思い出と共に、前に進むことを決意した。彼との日々は、決して無駄ではなかったと感じることができたから。
そして、彼女はもう一度歩き出した。今度は、彼の思い出と共に、未来へと向かって。
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