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最後の絵
しおりを挟む中世ヨーロッパ、広大な領地を誇るある貴族の邸宅。そこに住む令嬢、クリスティーナは、美しい庭園を歩くのが日課だった。彼女は家柄にふさわしい教育を受け、優雅で品のある女性に育っていたが、その心には常に自由への憧れがあった。
ある日、彼女の父、領主のロバート卿が新たにパトロンになった画家、ジョージが邸宅に招かれた。彼の絵は精緻で美しく、ロバート卿はすぐにその才能を見抜いた。
クリスティーナはジョージに会うため、父の画室を訪れた。そこには、若くして才能に満ち溢れた画家がいた。彼の目には鋭い知性と温かさが混在していた。
「こんにちは、あなたがジョージですね。父があなたの作品をとても気に入っているのです」
クリスティーナは微笑みながら言った。
「お会いできて光栄です、クリスティーナ様。あなたの美しさを是非とも絵に収めさせていただきたい」
ジョージは恭しく頭を下げた。
日々が過ぎるにつれて、クリスティーナとジョージの間には深い絆が芽生えた。ジョージはクリスティーナの肖像画を描く名目で、彼女と長い時間を共に過ごした。彼らは絵を通じて心を通わせ、互いの想いを深めていった。
「ジョージ、あなたの絵を見るたびに、私の心が解放されるように感じます」
クリスティーナはある日、静かな声で言った。
「クリスティーナ、あなたが私にとってどれほど大切か、絵だけでは表現しきれないのです」
ジョージもまた、心の内を打ち明けた。
しかし、彼らの愛は秘密にされなければならなかった。貴族の令嬢と画家という身分の違いは、決して許されるものではなかったのだ。
やがて、クリスティーナの父であるロバート卿は二人の関係に気付いた。激怒した彼は、すぐにジョージを邸宅から追い出し、クリスティーナを厳しく監視するよう命じた。
「クリスティーナ、君は貴族の令嬢だ。身分の低い画家との関係は許されない」
ロバート卿の言葉に、クリスティーナは涙を流した。
「父上、どうか私たちの愛を理解してください。ジョージはただの画家ではなく、私の魂の半分なのです」
彼女の訴えは冷たく拒絶された。
ジョージは遠くへ追放され、二人の恋は無情にも引き裂かれた。
数十年が過ぎた。クリスティーナは別の男性と結婚し、家庭を築いた。しかし、彼女の心の中には常にジョージとの思い出が残っていた。
ある日、クリスティーナの父が病床に伏した。彼は死を目前にして、娘に秘密を打ち明ける決心をした。
「クリスティーナ、私にはお前に隠していたことがある。実は、ジョージは数年前に亡くなっている。彼はお前の肖像画を描き上げ、私に託していたのだ」
ロバート卿の言葉に、クリスティーナの心は深く揺れた。
「ジョージ…」
彼女は震える手で絵を受け取った。
クリスティーナの手には、彼女自身の若き日の肖像画があった。その絵には、ジョージの愛が溢れていた。彼は彼女の美しさだけでなく、その心の内まで描き出していた。
「ジョージ、あなたは私の心の中で生き続けているわ」
クリスティーナは涙を流しながら絵を見つめた。
その絵は彼女にとって、ジョージとの永遠の絆を象徴するものであった。彼女はその絵を大切にし、ジョージの愛を胸に秘めながら、残りの人生を過ごした。
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