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読み切り

仁義なき~MOMOTAROU~

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 昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでました。この二人、広島の小さな村でひっそりと暮らしておりました。

 ある日のこと、おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきました。

「おお、これはえらいこと!」

 とおばあさんは目を輝かせながら桃を持ち帰りました。お家に帰ってその桃を切ろうとしたところ、中から元気な男の子が飛び出してきました。

「オラ、桃太郎じゃけぇ!」

 子供は元気よく宣言しました。おじいさんとおばあさんはびっくりすると同時に、この子を自分たちの子として育てることにしました。

 桃太郎はあっという間に大きくなり、心優しくて、なおかつとても勇敢な青年になりました。そんなある日、桃太郎はおじいさんとおばあさんに言いました。

「おじいちゃん、おばあちゃん、おら、鬼ヶ島に行って鬼を退治しよる。みんなを困らせてる鬼をやっつけて、平和を取り戻すけぇ」

 おじいさんとおばあさんは心配しましたが、桃太郎の決意を感じて、

「気をつけて行っておいで」

 と言って、桃太郎を送り出しました。桃太郎はおばあさんが作ってくれたきびだんごを持って、鬼ヶ島へと向かいました。

 道中、犬、猿、キジが

「おらも一緒に行くけぇ!」

 と言って仲間に加わりました。

 犬は「鬼が怖がるけぇ、吠えるのが得意じゃけぇ!」、

 猿は「木登りが得意じゃけぇ、鬼ヶ島の見張りをしてやるけぇ!」、

 キジは「空からの見張りが得意じゃけぇ、情報収集しとくけぇ!」とそれぞれ自信満々に言いました。

 そして、ついに桃太郎たちは鬼ヶ島に到着しました。

 ◇ある夜のこと、桃太郎たちは、鬼が支配する街、その名も鬼ヶ島へと足を踏み入れた。

 広島の片隅、鬼が支配する街、鬼ヶ島で、桃太郎とその仲間たち――犬、猿、キジは、最後の戦いに挑んだ。この物語は、壮絶な抗争の記録である。

 夜の帳が下りた鬼ヶ島。桃太郎は黒いサングラスに袖なしの着物、腰には日本刀を差し、決意の表情を浮かべていた。犬、猿、キジも、それぞれ特徴的な装いで、桃太郎の背後に並ぶ。

「おい鬼ども、こっちの用事はただ一つ。お前らの悪事に終止符を打つことじゃ」と桃太郎は広島弁で堂々と宣言。

 大鬼が一歩前に出て、

「ほう、よう来たな。でも、ここから先はお前らには渡せんよ」と応じる。

 戦いが始まり、桃太郎たちは鬼たちと激しくぶつかり合う。犬は鬼を威嚇し、猿は敏捷な動きで攻撃をかわし、キジは空からのサポートで鬼を混乱させた。桃太郎自身も、日本刀を振るい、鬼たちと壮絶な斬り合いを展開する。

 しかし、鬼たちの力は想像以上に強大で、桃太郎たちの仲間は次々と倒れていく。犬、猿、キジは、最後の力を振り絞りながらも、鬼たちの手にかかり命を落とした。

 城の中心部で、桃太郎と大鬼は一騎打ちに。二人の間でのみ激しい斬り合いが続く。

「この街に平和を取り戻すんじゃ」

 と桃太郎が叫び、最後の力を振り絞り、大鬼に致命的な一撃を与える。その瞬間、鬼たちの支配する暗雲が晴れ、街には再び平和が訪れた。

 しかし、桃太郎の周りには、もはや仲間の姿はなかった。彼一人だけが生き残り、仲間たちの無念を背負うことになった。

 桃太郎は哀愁を帯びた独白を始める。

「犬も、猿も、キジも、みんなよう戦った。しかし、こんなにも静かで、平和な夜が戻ってくるとはな…。おじいちゃん、おばあちゃん、みんなを守れたけど、一緒に帰る仲間はおらん。この勝利、誰に語ればいいんじゃろう…」

 桃太郎は、仲間たちの遺志を胸に、ひとりで家路につく。街に平和が戻ったことを喜ぶ人々の中で、彼だけが深い寂しさを感じていた。

 


 ~~~~完~~~~~~
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