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前後編

『後編』ヤバい魔女が村を訪れました~ファイナル・デスティネーション・オブ・ザ・ウィッチ~

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 翌日、村のはずれで、一頭の馬が変わり果てた姿で発見された。その身体は奇妙な模様で覆われ、まるで何かに蝕まれたかのように見えた。この出来事は、村人たちに深い恐怖を植え付けた。エレーヌの予言を思い出し、彼女の言葉を軽んじたことを後悔する声が静かに広がった。しかし、もはや遅かった。

 次の日、さらに奇怪な現象が村を襲う。水源が突如として枯れ、作物は一夜にして枯れ果てた。家畜も次々と奇病に侵され、死んでいった。空は常に暗雲に覆われ、太陽の光は地上に届かなくなった。

 三日目の夜、エレーヌの予言した通り、避けられたはずの災害が訪れる。空からは異常なほどの赤い雨が降り注ぎ、地は大きく揺れた。そして、その揺れと共に、地下深くから何かが目覚めたような、不気味な音が聞こえた。

 恐怖に駆られた村人たちは、何とかして災害から逃れようとしたが、村の周りはすでに見えない壁のようなもので囲まれていた。どれだけ逃げようとしても、村から出ることはできない。まるで、彼らが何かによって閉じ込められているかのようだった。

 夜が深まるにつれ、村は異形の影に満ちていった。それは、人間とは思えないほど歪んだ姿をした存在たち。彼らは静かに、しかし確実に、一つひとつの家を訪れ、中の人間を連れ去っていった。抵抗しようとした者は、容赦なくその場で消滅させられた。

 最後に残ったのは、広場でエレーヌの話を聞いていた若者たちだけだった。彼らは、恐怖に震えながらも、最後の一線を守るべく集まっていた。しかし、彼らの前に現れたのは、人間の姿をしたが、目には深い闇が宿る、エレーヌその人だった。

「私は警告しました。しかし、あなたたちは聞く耳を持たなかった。これが、その結果です」

 エレーヌの言葉と共に、彼女の周りの空間が歪み、若者たちは一人また一人と消えていった。最後には、エレーヌもまた、静かな闇の中へと消えていった。

 翌朝、村は跡形もなく消え去っていた。かつてそこにあったはずの生活の痕跡は何一つ残されず、ただ広大な荒れ地が広がるのみ。村が存在したことを示すものは何もなく、まるで最初から何もなかったかのように。

 そして、遠く離れた場所で、エレーヌは新たな旅を続けていた。彼女の背後には、次なる目的地へと続く長い道。しかし、彼女の瞳に映るのは、変わらぬ深い悲しみと、止まることのない運命の輪廻だった。 
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