着いたところは異世界でした。

千野恵

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第一章  異世界にこんにちは

2.人畜無害です

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2.人畜無害です
 俺こと鈴木一郎は大地と一緒に落下したのに、全く底に着かなくいので不思議に思っていたら、白い光に包まれたまま異空間に浮いていた。

 そう、異空間。
 その白い空間の中で一人思いにふけっていた。
 
 中二病を患っていたころ、よく異世界召喚されるときの状況を空想したが、さすがにこういった状況は考えていなかった。
 異世界に召喚される時は、交通事故、が定番だろうと思っていたから、地震みたいなのに巻き込まれるとは思ってもいなかったから。

 それにしても、異世界に着くの遅くないか?
 それとも、この異空間自体が異世界だっていうんじゃないだろうな。
 ここに来てから、かれこれもう一時間は立ってるじゃないか。
 まあ、光の中に包まれてるから寒くも暑くもないし、腹も減らないからいいけど。
 しかし、この状況は何かに似ているな。
 そうか、あれだ。三十年位前のアニメの「聖戦士ダンバ〇ン」の世界みたいだ。
 施設に寄付されたビデオテープでみた。「アン〇ンマン」とか「明日の〇ョー」とかもあったけど、ロボット物のアニメは男子はみんなが夢中になって見ていた。

 その中の一つ「ダンバ〇ン」はかっこよかったことを覚えている。
 確かオーラロー〇でバイス〇ン・ウエルに行った主人公は、光の渦に巻き込まれて妖精がいる異世界に着くんだった。それで、最初は悪い奴らの陣営にいて戦うんだけど、おかしいと思って抜け出していいやつらの陣営に移って、本当の聖戦士として悪い奴らを倒していくんだ。

 最終回はどうだったんだっけ。

 あ、まずい。主人公は死ぬんだった。ライバルと相撃ちだった。
 ってか、敵も味方もみんな死ぬんだった。
 そんなのありか、って終わり方だった。

 ってことはあれか。これ、最初から死亡フラグ立ってるんじゃ。
 ヤバい。
 結局、俺の命って永くはないってことじゃねーの。
 やっぱ、短い人生だったなぁ。

 しかし、この状況、いい加減飽きたんだけど。
 ずっとこのままなのか?体が浮いたままで、異世界を漂うだけなのか?
 つらつらとそんなことを思っていたら、背中から壁に激突したような衝撃があって、死ぬかと思うくらいの痛みがきて、俺の意識は闇に沈んだ。
 やっぱり、異世界に着いた途端俺は死んだんだ、そう頭の隅で思いながら。


 目が覚めると、目の前に金髪美女がいた。
 おおっ。素晴しい。死んでない。異世界と美女。じゃあ俺は勇者か?
 うん。よし。これは幸先さきゆきがいいぞ。

 っと思ったら、思い切りひっぱたかれた。
 痛いんですけど。
 手も足もなんか知らないけれど縛られて、地面に転がされているみたいだ。
 これはなんだ?

 「*****?********、**** ! 」

 はぁ。こりゃ異世界だ。まぎれもない。
 なんて言ってるかわからん。
 およそ聞いたことの無い言語だ。

 異世界に着いたら、言葉って分るもんじゃないの?
 神様とか、妖精からなんかチートな力を貰って魔法とか使って、恰好よく戦士とか魔法使いとかになれるんじゃないの?
 誰にも会わなかったんだけど、お約束の力の譲渡はないわけ?

 それにしても、この状況から見るに、この人が俺を召還したんじゃないの?
 それなのに、なんでこんな扱いされてるわけ?
 わからん。
 ひっぱたかれた鼻がツーンとなって奥から鼻水が出てくるのが分かった。
 すすり上げると、ツンとした鉄の匂いが広がった。
 やばい。鼻血だ。
 久方ぶりに人に殴られて鼻血を出してしまった。
 小中時代にいじめられて、殴り殴られした時代があったから、痛みには慣れてるっちゃあ慣れてるけど、一方的にいきなりはなかったから単純に痛い。

 「あの~なんて言ってるか分からないんですけど。」

 俺がその人に言うと、周りがざわついた。口々に皆が皆大声で何かを言い合ってるみたいだ。
 よく見ると、老若男女交えて十数人いた。
 彼らの髪は普通に茶とか赤、金に銀といった色をしていた。
 不思議に俺のような黒髪がいない。目の色も碧とか青とか茶色とか。
 俺のような黒に近い茶色ってのは一人もいないみたいだ。
 彼らはミレーの絵のような、中世の時代の村人のような服装をしている。
 彼らが話し合って、というか怒鳴りあっているので、何となく周りを見回すとここはキリスト教の教会みたいなところだと分かった。
 教会につきもののステンドグラスが見える。
 壁には磔はりつけにされたキリスト像が・・・。
 あれ?あれぇ?
 キリストって男じゃなかったっけ。
 なんで女性なわけ?
 甲冑を着たジャンヌダルクみたいな女性が磔にされている。
 いや、磔じゃない、か、な。
 下を向いて手を広げてるんだ。後ろに十字架みたいなのはない。
 やっぱり異世界だよな。パラレルワールドでもなさそうだ。
 とにかく俺の知る地球じゃないな、ここは。

 そんなことをぼんやり思っていたら、今度は別の人が俺に声をかけてきた。質問かな。語尾が上がっているから。悔しいことに凄いイケメンで、声も深みがあって聞こえがいい。天は二物も三物もこの男に与えてるんだ。羨ましいったら。

 「 ***。************* ? 」

 ゆっくり言ってくれているのであろう口調だけれど、ゆっくり言われてもわかんないよ。

 「だから、分りませんって。僕は日本人です。ただのサラリーマンで人畜無害です。地球人です。言葉はわかりません。」

 俺もゆっくりと丁寧な口調で日本人的笑顔で、つとめて紳士的に言ってみた。

 すると、今度は周りはしんと静まり、また何か話し合っているのが分かった。
 今度はわめいている人は少なく、落ち着いて話し合っているようだ。
 二十分ばかり時間がたち、手も足もしびれ始めていた時だった。
 今度は別の筋肉ムキムキの男が来て、俺になんか高そうなグラスに水みたいなのが入ったものをくれた。
 ゼスチャーで飲むように勧めてきた。
 もちろん俺は手を縛られているから、自分で飲めるわけではない。
 グラスを慎重に口につけてくれたのだ。
 目が覚めて何も口にしていないし、緊張もあってからか、口がカラカラに干上がっていたので有難く頂いた。

 なにこれ。すごく甘くて美味しい。
 砂糖水みたいなんだけど、仄ほのかにレモンのような味もする。
 俺は一気に飲み干してしまった。

 周りはしんと静まったままで、俺をじっと固唾をのんで見つめているみたいだ。
 えと。何か問題があるのかな。
 はっ!もしかして毒とかっ。
 みんなの対応が異常だったので、俺も構えたが特に何も起こらなった。

 異世界に着いて体感では一時間ばかり。
 この先何があるんだろう。
 村人も何だか恐る恐るといった体ていではあるけど、俺の方がもっと怖いんですけど。

 次に何があるのか、アニメの主人公なら誰か助けが入るだろう展開ではあったけれど、俺にはそんな期待が出来るわけもなく、時間ばかりが過ぎていくだけだった。
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