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出会い【前編】
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津嶋製作所は典型的な町工場である。
注文の多くは金属板のカットで、その中でも打ち抜き加工が最も多い。
大体は製造メーカーの二次、三次の下請けで、近々はコストダウンの要求がきつくなり始めていた。
それでも長年勤めている職人気質の社員がいて、製品の品質と価格のバランスがよく考えられており、他社では多少無理のある注文も受けることができ、評判も中々に良かった。
その社員の下で五人ほどが働いている。その中の一人、入社六年目になる佐川アツシは仕事の内容が性に合っているのか、製作の勘どころがよく、精密加工が必要でないものはすでに一人で任されるようになっていた。
「課長、先月分の決算です」
「ありがとう。いつも速いので助かるよ」
月末が近くなってくると、事務もいろいろと業務が立て込んでくるようになる。
今、経理を任されている南方ミツ子は、中途採用であるが、優秀という言葉に充分に足るだけの力量があり、多くの社員から信用を得ていた。
次の年の新年会。
忘年会が社長の予定がどうしても合わせられなかったために、取りやめとなり、その分の予算を足した新年会が盛大に行なわれた。
忘年会は忘年会で各課や個人的グループでそれなりに行なっていたから、盛り上がりに欠けるということはなかったのだが。
会社総出の新年会が終わり、三々五々帰宅する者、二次会へ向かう者など、ばらけて行った。
二次会グループの中で、たまたま大所帯になったところがあった。営業、経理、製品の若手が集まって10人近くになったので、大手居酒屋に駆け込んだところ、運良く座敷が空いており、適宜着席した。
この時、佐川アツシの隣に座ったのが南方ミツ子だった。
仕事の上では、まったく話をする機会のなかった二人だったが、周囲とも含めて話が弾み、特に何を目的としたわけではないが、そこの数名が要するに友人グループとなった。
その後、何度か遊びに行くうちに、自然とアツシとミツ子が二人で行動することが増えた。
アツシから見て、ミツ子は二つ年上で、背もミツ子の方が高い。だが、お互いそういった点は気にしない性格で、趣味や行動的な方向性が似ているので、揃って歩く事が多くなったわけである。そうこうしているうちに、アツシの方が意識するようになった。
アツシは告白とまではいかないが、いろいろアプローチをかけるようになったのだが、ミツ子の方の反応がイマイチというか、ないに等しい状況だった。
それでも、ミツ子が嫌がっている様子はなく、例の友人グループで遊びに行く事にも積極的に参加していたし、楽しんでいるようだった。二人だけの行動になる事も避けてはいなかった。だが、状況的にはかなり仲のいい友人止まりであり、ミツ子の行動としては、深い関係になる事を避けているようにも見える。
アツシとしては漠然と、より親密になりたいという思いであったのだが、これだけ回避されると、ちょっと意地になってきて、本格的に誘うようになっていった。
それでも、仕事を疎かにするようなことはなく、あくまでプライベートとしてやることは忘れてはいなかった。だがついに、昼休みの時間を使ってアタックをかけてきた。
その日、昼休みの時間に屋上に呼び出したのは、日程的にも、どちらも忙しい案件はない事を確認してのことだった。
仕事を理由にしてその場を逃れることは阻止しようとの考えもあった。
それまでの交友から言えば、正面切って告白するというような関係ではない。少しの間、差し障りのない話題から入ってから核心に進むつもりでいたのだが、アツシが何か言おうとしたのをいきなりミツ子は手のひらを向けて止めた。
「えーと、何の話をしようかというのは、わかってるから」
機先を制されて、アツシは一瞬戸惑ったが、すぐに立ち直った。
「誰かから聞いた…とか」
「いいえ。アツシ君、誰にも今日やろうと思っていたこと話してはいないでしょ」
言われてみれば、確かに誰にも言った覚えはない。いろいろとアプローチをかけていたのを知っている人はいるだろうが、今日どういうところまで、とまでは知るものはいないはず。それならば、ミツ子がこちらから言わせてしまおうとカマをかけているとも考えられる。
「カマをかけてるわけじゃないわよ。これから話を持っていこうとしている方向を、カマかけてわざわざ言わせることは意味はないでしょ」
「わかっているんだったら、答えを聞かせてくれよ」
ミツ子の言う通りではあるが、そこまで言われるのも癪というものである。
自分の行動をことごとく読まれているみたいに思えて、アツシはつい、つっけんどんな口調になってしまう。
だがミツ子の返してきた答えは、思う方向とは全く違うものだった。
「みたい、じゃないのよ」
「じゃない…って、一体何が」
「行動が読まれているみたい、じゃなくって、読んでいるの。いや、読んでいるってのもニュアンスが違うわね。見ている。確認している。そうじゃないわね。行動を読んでいるんじゃなくて、考えている事を読んでいるのよ。正確には違うけどテレパシーみたいなものね」
「…?」
アツシはミツ子から、そんな言葉が出てきたことに、ただ困惑するだけだった。
だが、そこでアツシが思い浮かべたことを言葉にしたのはミツ子の方だった。
「変な事を言って、誤魔化そうとしてるんでもないからね」
アツシは益々困惑するばかりで、考えることもまともに行かなくなってきた。
「ああ、待って待って。そんな風に困らせようと思っていたわけじゃないのよ。私が勝手にアツシ君の思うところを止めようとは思っていたけど、変な方向に持っていっちゃったのは、間違いだったから、まずそこは謝るわ」
「う…うん」
ちょっと気持ちがどこかよそに行きかけていたアツシは、そのミツ子の言葉で我を取り戻した。
「なんでそんな方にしちゃったのかなあ…。あ、ごめん。今のは独り言」
そこでミツ子はちょっと考えに耽る。
(あいつも言ってたわね。関わるなら最後までしっかり関われって。もしかして彼はそういう相手なのかしらん)
ミツ子は改めてアツシに向き直った。
「あのね、言って信じるかどうかは、わからないけど、あたしは人間じゃないのよ」
「え…何を…」
「こういうこと」
ミツ子は、軽くトン、と踵をつけたまま右足のつま先で地面を叩いた。すると、景色が一変した。
「な、何が」
「口で言っても信じるのは無理でしょうから、体験してもらわないとね」
「森…? どこの」
二人がいる場所は、さっきまでいた会社の屋上ではなく、周囲ぐるりと樹木が生い茂った場所であった。それでも二人の周辺だけは草むらになっており低い樹木もなかった。
「別に心配することはないわ。他の人に来てもらいたくなかったから、場所を移しただけ」
「で、でも、ここって」
「まあ、地域名称的には、富士の樹海ね」
「樹海?」
「別に証拠隠滅とかじゃないから。さっきも言った通り、余人を交えずにしたかっただけだから」
「なんか、さらっと怖い事言いましたよね。でもなんで余人を…でえっ! ちょ、なんで…」
「こういうの好きなんでしょ」
ミツ子の姿というか、服装が非常に際どいものになっていた。アツシが昔やり込んでいたゲームのキャラクターのものだ。顔つきや体形もなんとなく似た感じに変わったようにも見える。
「いや、それは」
そういえば、この場所もそのキャラクターが登場するシーンに似ている。今いる所ほど、鬱蒼とはしてはいないだろうけど。
「小さな画面の向こうじゃなくて、こうして目の前にいて」
ミツ子がアツシに近づく。
「触れることもできて」
ミツ子の手がアツシの手をとる。
「匂いすら感じることができるのよ。なんなら味だって」
「あ、味…?」
ゆっくりと顔を近づけるミツ子。
「ま、待って待って」
慌てたアツシは、ミツ子の顔面に手をかけて押し返してしまう。だが、ミツ子は押し返されたまま、ふわりと浮いて後方に一回転…しただけでなく、そのまま浮いていた。
「ちょっとお、そこまで邪険にしなくても」
「いや、すいませ…浮いて、る?」
「驚かなくてもいいわよ。言ったでしょ、人間じゃないって。普通の人間じゃない、という意味じゃなくって、根本的に存在が人間じゃないの」
ミツ子はふわりと着地する。
「…何のために?」
「ん? ああ、人間じゃない者が、何で人間社会に居るかってこと?」
アツシは頷く。
「別にねえ…そういうもんだから、っていうのが一番合ってるかしら」
「そういう…?」
「うん。簡潔な答えとしては、合っている答えではあるんだけど、さすがに端折りすぎよね。アツシ君が納得できる話になるには、かなり長い話になるわよ。聞きたいかしら」
アツシは戸惑いながらも、再び頷いた。
「オッケー。じゃ、とりあえず帰りましょ」
ミツ子は今度は右足を後ろに軽く上げて爪先で地面を軽く打った。
また景色が一変した。最初にいた会社の屋上に戻ったのだった。ミツ子の服も普通に会社の制服に戻っている。
「今日か明日か…まあ急ぐことじゃないけど、定時で終わる?」
「今日は忙しくないんで大丈夫です」
「じゃあ、駅前の居酒屋の「たまのや」に6時でいいかしら」
「居酒屋でいいんですか」
「いいのよ。んじゃ、今日の6時でってことで。先に行くわね」
ミツ子は先に降りていった。
アツシは告白するつもりが随分と予想外な方向になってしまい、気持ち的にはかなり気にはなっていたが、自分であれこれ考えていても仕方ないと切り替えて、仕事は無難にこなしていた。
定時となり、約束の時間通りに二人とも「たまのや」に到着して、連れ立って店に入っていった。
二人が席についたのは、長い座敷を簡単な敷居で分けただけのところで、聞こうと思えば話は筒抜けである。注文した飲み物が来て、料理も三品ほど来た。
「まあ、まずは乾杯といきましょ。はい、かんぱーい」
ミツ子は中ジョッキとはいえ、一気にあおる。
「あー、おいしい。すいません、中生おかわり」
「あの…今日ってただの飲み会ですか」
「いいえ。ちゃんと話すわよ、昼のこと」
そう言いつつもミツ子は、お通しに箸を伸ばす。
「はあ…」
「ちょっとは飲んでたくらいが一番いいのよ。リラックスして話を聞けるからね。ま、信じる信じないはあなたの自由。まずはお酒と料理を楽しみましょう」
アツシとしても別に緊張して対峙するような仲ではない。それでも、最初は酒は少し控えめにしていた。
「さて、あたしが人間じゃないということは昼休みに言った通りなんだけど」
「唐突ですね。こんな所で言っていいことなんですか」
「うん。別に秘密にしてるってわけじゃないし。公表しようとも思わないけど」
「ここで言ってですか」
「どうせ、酔っ払いの戯言くらいにしか聞こえないわよ。実体験したあなたは、そこまでは思わないだろうけど」
アツシの脳裏に昼に行った樹海の景色が思い出された。
「アツシ君。まず、九尾の狐と言ったら何を想像する?」
「え、ええと…人を騙す狐の妖怪」
「まあ、そんなところね。妖怪じゃないけど、実在するのよ」
「それが、南方さん?」
「いやまだ早い早い。そういう存在は狐だけじゃなく、他の動物にもいろいろといるのよ」
「狼は神聖視されていた時もありましたね」
「今はいなくなっちゃったけどね。それは神仙と呼ばれる存在で、人がなったら仙人と呼ばれるわね」
「仙人とか言ったら、世捨て人みたいな印象なんですけど」
「ああ、確かに。実際仙人になった人で人間社会に戻った例は滅多にないわね。少なくとも、あたしは知らないわ。まあ話を戻して。アツシ君」
「はい?」
「あたしは何だと思う?」
ミツ子はもう三杯目のジョッキを手にしたままで笑いながら話しかける。
「何だとと言われても」
「じゃあ、いきなり大ヒント。この手の話で狐じゃないと言ったら」
「…狸?」
「ピンポーン」
だがアツシは微妙に気まずそうな表情になる。
「ええと…答えとして、狸と答えるのもどうかと思ってたんですが、なんて言うかイメージが」
「よろしくない?」
「あ…その…」
「あはははは」
急にミツ子が笑い出した。
「何か」
「だって、それ。あたしが広めたんだもん」
「はあ?」
「こう見えても、八畳狸の中でも古参の方でね。昔は以外とトラブルが多くてねえ。元々隠蔽、隠遁が得意な種族だから、静かに隠れて人の間で暮らしていこうと提案したら、なんでか知らないけど、トントン拍子に話が進んで、みんな今でも静かに暮らしてるわ。その時すでに人との関わりの中で起こってしまった事は、伝承や物語調にして、ちょっと創作で親しみを持てる感じに三枚目っぽくしたりしてね」
「はち…じょう? ちょ、ちょっと情報が多すぎて…」
「八畳狸。畳が八つの八畳に、狸。名前の由来は…」
だが、アツシは手で制した。
「なんとなく解るんで、いいです」
「えー?」
ミツ子は不満げな顔をする。
「どうせあれ言うんでしょ。狸の…」
と、アツシが別の言い回しを考えた隙をついてミツ子が続ける。
「キン○マ八畳敷き」
「言いますか」
「言いますとも…って、それは後付けよ。狸のコミカルなキャラクターに合わせた、一種の言葉遊び。本当の由来の方は…」
そこまで言ってミツ子はジョッキに残っていたビールを飲み干して、また新しいものを注文する。
「力の広がり方ね」
「力?」
「細かいところでは違うんだけど、わかりやすく言えば、気とかオーラとかかしら」
「体にみなぎる系の?」
「まあそんなところね。細かい点も端折るけど、その形が広く周囲に広がっているのが八畳狸の特徴。八という数字には大きい、とか広大な、という意味もあるのでその名前になりましたとさ」
「そう…なんですか」
「諸説ありますが」
アツシはその言葉で、話を聞くのにテーブルに掛けていた肘をズッコケさせてしまった。
「最後にそれですか」
「世の中そういうものよ。ものの文献には、神仙というのは徳を得られずに上位の存在になり損ねた悪鬼だという言われ方をしているものもあるし」
「誰が書いたんですか」
「知らない。というか興味ないし。神仙だって個々の個性はあるし、性格も様々。何かで人間に恨みを持っていれば、殺人鬼になっていたりすることもあるかもね。もしかしたら、そういうのに遭遇してしまった人か国かが記録したのかもしれないわ」
アツシはしばらく黙り込んで、考えに耽っていたが、ふと昼のことを思い出した。
「今も…僕の考えることを読んでいるんですか」
「いいえ。今日の昼のあの時以来、全然やってないわよ」
「本当に?」
「考えを読むのは難しいことではないけど、やろうと思わなければ何もわからないわ。例えて言えば、あなただって、30mくらいを10秒で走ろうと思えば簡単よね。でもそれをやろうと思っていなかったら、わざわざやらないでしょ」
「まあ、そりゃあ」
「意識して見ようとしなければ、見えないのよ。逆に明け透けにみえてしまうと、意図しない相手の思考もダダ漏れで入ってきてしまうから、煩くてしょうがないのよ。感覚的なものだから、言葉で言ってもわかりにくいとは思うけどね。でも殺気とか悪意に関しては敏感なのよ。そういったものは向こう側から強烈に発信されているものだから、感じようと意図しなくても感じ取れるの。で、そう言った悪い感情ではなく、良い感情、好意的なものとか、愛情もまた然りな訳で」
「そういう方に持ってくわけね」
「だってアツシ君、ああいう体験までしても、あたしに対する感情的なものが変わらなかったでしょう」
「まあ…って、やっぱり覗いてたんじゃないですか」
「あの直後だけよ。大したもんね。肝が据わっていると言うか、何も考えてないと言うか」
「それ、全然ちがいますよね」
アツシは魚のフライを箸で突きながら片肘をついて考えに耽った。
「それで、どうしたい?」
「どう…と言われても。そうだ、八畳の狸? 元って狸なんですか」
考えが全くまとまらないアツシは話を逸らすつもりで言った。
「それには、お答えできませーん」
「どうして?」
「だって、自分の出自よ。ルーツよ。思いっきりプライベートな内容よ」
「う…」
あまりにも正論で返されて、アツシはとまどった。
「だ・か・ら、プライベートな事を知りたかったら、プライベートを言い合えるような仲にならなきゃ。でしょ」
なにやら、ミツ子の言動が急に変わり出した。何か触れてはいけない話題だったのだろうか。
そしてまた、ミツ子はジョッキを空けた。もう何杯飲んでいるんだろう。少なくともアツシの倍以上のペースである。アツシ自身も、酔いつぶれるようなペースではないが、最初に比べればかなり速い飲み方になっていた。
「つ、つまり…」
「うーん、あたしに言わせるつもりぃ? それだけ親密な仲って言ったら、恋人? それを越えて夫婦?」
さっきまで冷静な感じに見えていたミツ子の様子がかなり違ってきている。まあ、あれだけ速いペースで飲んだら、酔うのも当たり前の話だろうけど。
「ミツ子さん?」
「あたしとそういう関係に、なりたいの? 人間じゃないのよ」
ミツ子は両手をテーブルにかけて、ぐっと顔を近づけて迫ってきた。
そう言われてアツシに戸惑いがなかったわけではないが、いろいろ考えることはすっ飛ばして、答えはすぐに出てきた。
「なりたい」
それを聞くと、ミツ子はハッとして固まった。そして目を潤ませる。
「…うれしい」
そう言って、ミツ子はテーブルに突っ伏してしまった。
(続)
注文の多くは金属板のカットで、その中でも打ち抜き加工が最も多い。
大体は製造メーカーの二次、三次の下請けで、近々はコストダウンの要求がきつくなり始めていた。
それでも長年勤めている職人気質の社員がいて、製品の品質と価格のバランスがよく考えられており、他社では多少無理のある注文も受けることができ、評判も中々に良かった。
その社員の下で五人ほどが働いている。その中の一人、入社六年目になる佐川アツシは仕事の内容が性に合っているのか、製作の勘どころがよく、精密加工が必要でないものはすでに一人で任されるようになっていた。
「課長、先月分の決算です」
「ありがとう。いつも速いので助かるよ」
月末が近くなってくると、事務もいろいろと業務が立て込んでくるようになる。
今、経理を任されている南方ミツ子は、中途採用であるが、優秀という言葉に充分に足るだけの力量があり、多くの社員から信用を得ていた。
次の年の新年会。
忘年会が社長の予定がどうしても合わせられなかったために、取りやめとなり、その分の予算を足した新年会が盛大に行なわれた。
忘年会は忘年会で各課や個人的グループでそれなりに行なっていたから、盛り上がりに欠けるということはなかったのだが。
会社総出の新年会が終わり、三々五々帰宅する者、二次会へ向かう者など、ばらけて行った。
二次会グループの中で、たまたま大所帯になったところがあった。営業、経理、製品の若手が集まって10人近くになったので、大手居酒屋に駆け込んだところ、運良く座敷が空いており、適宜着席した。
この時、佐川アツシの隣に座ったのが南方ミツ子だった。
仕事の上では、まったく話をする機会のなかった二人だったが、周囲とも含めて話が弾み、特に何を目的としたわけではないが、そこの数名が要するに友人グループとなった。
その後、何度か遊びに行くうちに、自然とアツシとミツ子が二人で行動することが増えた。
アツシから見て、ミツ子は二つ年上で、背もミツ子の方が高い。だが、お互いそういった点は気にしない性格で、趣味や行動的な方向性が似ているので、揃って歩く事が多くなったわけである。そうこうしているうちに、アツシの方が意識するようになった。
アツシは告白とまではいかないが、いろいろアプローチをかけるようになったのだが、ミツ子の方の反応がイマイチというか、ないに等しい状況だった。
それでも、ミツ子が嫌がっている様子はなく、例の友人グループで遊びに行く事にも積極的に参加していたし、楽しんでいるようだった。二人だけの行動になる事も避けてはいなかった。だが、状況的にはかなり仲のいい友人止まりであり、ミツ子の行動としては、深い関係になる事を避けているようにも見える。
アツシとしては漠然と、より親密になりたいという思いであったのだが、これだけ回避されると、ちょっと意地になってきて、本格的に誘うようになっていった。
それでも、仕事を疎かにするようなことはなく、あくまでプライベートとしてやることは忘れてはいなかった。だがついに、昼休みの時間を使ってアタックをかけてきた。
その日、昼休みの時間に屋上に呼び出したのは、日程的にも、どちらも忙しい案件はない事を確認してのことだった。
仕事を理由にしてその場を逃れることは阻止しようとの考えもあった。
それまでの交友から言えば、正面切って告白するというような関係ではない。少しの間、差し障りのない話題から入ってから核心に進むつもりでいたのだが、アツシが何か言おうとしたのをいきなりミツ子は手のひらを向けて止めた。
「えーと、何の話をしようかというのは、わかってるから」
機先を制されて、アツシは一瞬戸惑ったが、すぐに立ち直った。
「誰かから聞いた…とか」
「いいえ。アツシ君、誰にも今日やろうと思っていたこと話してはいないでしょ」
言われてみれば、確かに誰にも言った覚えはない。いろいろとアプローチをかけていたのを知っている人はいるだろうが、今日どういうところまで、とまでは知るものはいないはず。それならば、ミツ子がこちらから言わせてしまおうとカマをかけているとも考えられる。
「カマをかけてるわけじゃないわよ。これから話を持っていこうとしている方向を、カマかけてわざわざ言わせることは意味はないでしょ」
「わかっているんだったら、答えを聞かせてくれよ」
ミツ子の言う通りではあるが、そこまで言われるのも癪というものである。
自分の行動をことごとく読まれているみたいに思えて、アツシはつい、つっけんどんな口調になってしまう。
だがミツ子の返してきた答えは、思う方向とは全く違うものだった。
「みたい、じゃないのよ」
「じゃない…って、一体何が」
「行動が読まれているみたい、じゃなくって、読んでいるの。いや、読んでいるってのもニュアンスが違うわね。見ている。確認している。そうじゃないわね。行動を読んでいるんじゃなくて、考えている事を読んでいるのよ。正確には違うけどテレパシーみたいなものね」
「…?」
アツシはミツ子から、そんな言葉が出てきたことに、ただ困惑するだけだった。
だが、そこでアツシが思い浮かべたことを言葉にしたのはミツ子の方だった。
「変な事を言って、誤魔化そうとしてるんでもないからね」
アツシは益々困惑するばかりで、考えることもまともに行かなくなってきた。
「ああ、待って待って。そんな風に困らせようと思っていたわけじゃないのよ。私が勝手にアツシ君の思うところを止めようとは思っていたけど、変な方向に持っていっちゃったのは、間違いだったから、まずそこは謝るわ」
「う…うん」
ちょっと気持ちがどこかよそに行きかけていたアツシは、そのミツ子の言葉で我を取り戻した。
「なんでそんな方にしちゃったのかなあ…。あ、ごめん。今のは独り言」
そこでミツ子はちょっと考えに耽る。
(あいつも言ってたわね。関わるなら最後までしっかり関われって。もしかして彼はそういう相手なのかしらん)
ミツ子は改めてアツシに向き直った。
「あのね、言って信じるかどうかは、わからないけど、あたしは人間じゃないのよ」
「え…何を…」
「こういうこと」
ミツ子は、軽くトン、と踵をつけたまま右足のつま先で地面を叩いた。すると、景色が一変した。
「な、何が」
「口で言っても信じるのは無理でしょうから、体験してもらわないとね」
「森…? どこの」
二人がいる場所は、さっきまでいた会社の屋上ではなく、周囲ぐるりと樹木が生い茂った場所であった。それでも二人の周辺だけは草むらになっており低い樹木もなかった。
「別に心配することはないわ。他の人に来てもらいたくなかったから、場所を移しただけ」
「で、でも、ここって」
「まあ、地域名称的には、富士の樹海ね」
「樹海?」
「別に証拠隠滅とかじゃないから。さっきも言った通り、余人を交えずにしたかっただけだから」
「なんか、さらっと怖い事言いましたよね。でもなんで余人を…でえっ! ちょ、なんで…」
「こういうの好きなんでしょ」
ミツ子の姿というか、服装が非常に際どいものになっていた。アツシが昔やり込んでいたゲームのキャラクターのものだ。顔つきや体形もなんとなく似た感じに変わったようにも見える。
「いや、それは」
そういえば、この場所もそのキャラクターが登場するシーンに似ている。今いる所ほど、鬱蒼とはしてはいないだろうけど。
「小さな画面の向こうじゃなくて、こうして目の前にいて」
ミツ子がアツシに近づく。
「触れることもできて」
ミツ子の手がアツシの手をとる。
「匂いすら感じることができるのよ。なんなら味だって」
「あ、味…?」
ゆっくりと顔を近づけるミツ子。
「ま、待って待って」
慌てたアツシは、ミツ子の顔面に手をかけて押し返してしまう。だが、ミツ子は押し返されたまま、ふわりと浮いて後方に一回転…しただけでなく、そのまま浮いていた。
「ちょっとお、そこまで邪険にしなくても」
「いや、すいませ…浮いて、る?」
「驚かなくてもいいわよ。言ったでしょ、人間じゃないって。普通の人間じゃない、という意味じゃなくって、根本的に存在が人間じゃないの」
ミツ子はふわりと着地する。
「…何のために?」
「ん? ああ、人間じゃない者が、何で人間社会に居るかってこと?」
アツシは頷く。
「別にねえ…そういうもんだから、っていうのが一番合ってるかしら」
「そういう…?」
「うん。簡潔な答えとしては、合っている答えではあるんだけど、さすがに端折りすぎよね。アツシ君が納得できる話になるには、かなり長い話になるわよ。聞きたいかしら」
アツシは戸惑いながらも、再び頷いた。
「オッケー。じゃ、とりあえず帰りましょ」
ミツ子は今度は右足を後ろに軽く上げて爪先で地面を軽く打った。
また景色が一変した。最初にいた会社の屋上に戻ったのだった。ミツ子の服も普通に会社の制服に戻っている。
「今日か明日か…まあ急ぐことじゃないけど、定時で終わる?」
「今日は忙しくないんで大丈夫です」
「じゃあ、駅前の居酒屋の「たまのや」に6時でいいかしら」
「居酒屋でいいんですか」
「いいのよ。んじゃ、今日の6時でってことで。先に行くわね」
ミツ子は先に降りていった。
アツシは告白するつもりが随分と予想外な方向になってしまい、気持ち的にはかなり気にはなっていたが、自分であれこれ考えていても仕方ないと切り替えて、仕事は無難にこなしていた。
定時となり、約束の時間通りに二人とも「たまのや」に到着して、連れ立って店に入っていった。
二人が席についたのは、長い座敷を簡単な敷居で分けただけのところで、聞こうと思えば話は筒抜けである。注文した飲み物が来て、料理も三品ほど来た。
「まあ、まずは乾杯といきましょ。はい、かんぱーい」
ミツ子は中ジョッキとはいえ、一気にあおる。
「あー、おいしい。すいません、中生おかわり」
「あの…今日ってただの飲み会ですか」
「いいえ。ちゃんと話すわよ、昼のこと」
そう言いつつもミツ子は、お通しに箸を伸ばす。
「はあ…」
「ちょっとは飲んでたくらいが一番いいのよ。リラックスして話を聞けるからね。ま、信じる信じないはあなたの自由。まずはお酒と料理を楽しみましょう」
アツシとしても別に緊張して対峙するような仲ではない。それでも、最初は酒は少し控えめにしていた。
「さて、あたしが人間じゃないということは昼休みに言った通りなんだけど」
「唐突ですね。こんな所で言っていいことなんですか」
「うん。別に秘密にしてるってわけじゃないし。公表しようとも思わないけど」
「ここで言ってですか」
「どうせ、酔っ払いの戯言くらいにしか聞こえないわよ。実体験したあなたは、そこまでは思わないだろうけど」
アツシの脳裏に昼に行った樹海の景色が思い出された。
「アツシ君。まず、九尾の狐と言ったら何を想像する?」
「え、ええと…人を騙す狐の妖怪」
「まあ、そんなところね。妖怪じゃないけど、実在するのよ」
「それが、南方さん?」
「いやまだ早い早い。そういう存在は狐だけじゃなく、他の動物にもいろいろといるのよ」
「狼は神聖視されていた時もありましたね」
「今はいなくなっちゃったけどね。それは神仙と呼ばれる存在で、人がなったら仙人と呼ばれるわね」
「仙人とか言ったら、世捨て人みたいな印象なんですけど」
「ああ、確かに。実際仙人になった人で人間社会に戻った例は滅多にないわね。少なくとも、あたしは知らないわ。まあ話を戻して。アツシ君」
「はい?」
「あたしは何だと思う?」
ミツ子はもう三杯目のジョッキを手にしたままで笑いながら話しかける。
「何だとと言われても」
「じゃあ、いきなり大ヒント。この手の話で狐じゃないと言ったら」
「…狸?」
「ピンポーン」
だがアツシは微妙に気まずそうな表情になる。
「ええと…答えとして、狸と答えるのもどうかと思ってたんですが、なんて言うかイメージが」
「よろしくない?」
「あ…その…」
「あはははは」
急にミツ子が笑い出した。
「何か」
「だって、それ。あたしが広めたんだもん」
「はあ?」
「こう見えても、八畳狸の中でも古参の方でね。昔は以外とトラブルが多くてねえ。元々隠蔽、隠遁が得意な種族だから、静かに隠れて人の間で暮らしていこうと提案したら、なんでか知らないけど、トントン拍子に話が進んで、みんな今でも静かに暮らしてるわ。その時すでに人との関わりの中で起こってしまった事は、伝承や物語調にして、ちょっと創作で親しみを持てる感じに三枚目っぽくしたりしてね」
「はち…じょう? ちょ、ちょっと情報が多すぎて…」
「八畳狸。畳が八つの八畳に、狸。名前の由来は…」
だが、アツシは手で制した。
「なんとなく解るんで、いいです」
「えー?」
ミツ子は不満げな顔をする。
「どうせあれ言うんでしょ。狸の…」
と、アツシが別の言い回しを考えた隙をついてミツ子が続ける。
「キン○マ八畳敷き」
「言いますか」
「言いますとも…って、それは後付けよ。狸のコミカルなキャラクターに合わせた、一種の言葉遊び。本当の由来の方は…」
そこまで言ってミツ子はジョッキに残っていたビールを飲み干して、また新しいものを注文する。
「力の広がり方ね」
「力?」
「細かいところでは違うんだけど、わかりやすく言えば、気とかオーラとかかしら」
「体にみなぎる系の?」
「まあそんなところね。細かい点も端折るけど、その形が広く周囲に広がっているのが八畳狸の特徴。八という数字には大きい、とか広大な、という意味もあるのでその名前になりましたとさ」
「そう…なんですか」
「諸説ありますが」
アツシはその言葉で、話を聞くのにテーブルに掛けていた肘をズッコケさせてしまった。
「最後にそれですか」
「世の中そういうものよ。ものの文献には、神仙というのは徳を得られずに上位の存在になり損ねた悪鬼だという言われ方をしているものもあるし」
「誰が書いたんですか」
「知らない。というか興味ないし。神仙だって個々の個性はあるし、性格も様々。何かで人間に恨みを持っていれば、殺人鬼になっていたりすることもあるかもね。もしかしたら、そういうのに遭遇してしまった人か国かが記録したのかもしれないわ」
アツシはしばらく黙り込んで、考えに耽っていたが、ふと昼のことを思い出した。
「今も…僕の考えることを読んでいるんですか」
「いいえ。今日の昼のあの時以来、全然やってないわよ」
「本当に?」
「考えを読むのは難しいことではないけど、やろうと思わなければ何もわからないわ。例えて言えば、あなただって、30mくらいを10秒で走ろうと思えば簡単よね。でもそれをやろうと思っていなかったら、わざわざやらないでしょ」
「まあ、そりゃあ」
「意識して見ようとしなければ、見えないのよ。逆に明け透けにみえてしまうと、意図しない相手の思考もダダ漏れで入ってきてしまうから、煩くてしょうがないのよ。感覚的なものだから、言葉で言ってもわかりにくいとは思うけどね。でも殺気とか悪意に関しては敏感なのよ。そういったものは向こう側から強烈に発信されているものだから、感じようと意図しなくても感じ取れるの。で、そう言った悪い感情ではなく、良い感情、好意的なものとか、愛情もまた然りな訳で」
「そういう方に持ってくわけね」
「だってアツシ君、ああいう体験までしても、あたしに対する感情的なものが変わらなかったでしょう」
「まあ…って、やっぱり覗いてたんじゃないですか」
「あの直後だけよ。大したもんね。肝が据わっていると言うか、何も考えてないと言うか」
「それ、全然ちがいますよね」
アツシは魚のフライを箸で突きながら片肘をついて考えに耽った。
「それで、どうしたい?」
「どう…と言われても。そうだ、八畳の狸? 元って狸なんですか」
考えが全くまとまらないアツシは話を逸らすつもりで言った。
「それには、お答えできませーん」
「どうして?」
「だって、自分の出自よ。ルーツよ。思いっきりプライベートな内容よ」
「う…」
あまりにも正論で返されて、アツシはとまどった。
「だ・か・ら、プライベートな事を知りたかったら、プライベートを言い合えるような仲にならなきゃ。でしょ」
なにやら、ミツ子の言動が急に変わり出した。何か触れてはいけない話題だったのだろうか。
そしてまた、ミツ子はジョッキを空けた。もう何杯飲んでいるんだろう。少なくともアツシの倍以上のペースである。アツシ自身も、酔いつぶれるようなペースではないが、最初に比べればかなり速い飲み方になっていた。
「つ、つまり…」
「うーん、あたしに言わせるつもりぃ? それだけ親密な仲って言ったら、恋人? それを越えて夫婦?」
さっきまで冷静な感じに見えていたミツ子の様子がかなり違ってきている。まあ、あれだけ速いペースで飲んだら、酔うのも当たり前の話だろうけど。
「ミツ子さん?」
「あたしとそういう関係に、なりたいの? 人間じゃないのよ」
ミツ子は両手をテーブルにかけて、ぐっと顔を近づけて迫ってきた。
そう言われてアツシに戸惑いがなかったわけではないが、いろいろ考えることはすっ飛ばして、答えはすぐに出てきた。
「なりたい」
それを聞くと、ミツ子はハッとして固まった。そして目を潤ませる。
「…うれしい」
そう言って、ミツ子はテーブルに突っ伏してしまった。
(続)
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