君に伝えたい言葉

マキノトシヒメ

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美鈴編

五月

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 神社という環境上、学校に通っていた時はまだしも、現在ではゴールデンウィークというものは、あまり実感がないのよね。
 友達から遊びに行くお誘いが増えたので気が付いたら、ゴールデンウィークだったとか、夏休みだったとか、改めて気が付くなんてこともあったり。

 ゴールデンウィークは神社としては別に何かするということはないけど、祝日として端午の節句があるから、その関連は多少はあるかなっていう程度。他の所はよく知らないんだけど、うちでは桃の節句に比べると、あまり話は来ませんね。

 ときに、えーと、翔太とは無事正式に婚約を済ませまして、元々家族ぐるみよく知っている仲ではあるんですけど、ちゃんと両家の顔合わせも済ませました。めでたしめでたし。

 …で、終わりじゃなくって。

 なんか、大学に行った中華料理屋の息子さんが、五月病らしくて、お父さんに相談が来たのね。
 お父さんは性格はアレなんだけど、様々な方面の経験は豊富で、宗教と全く関わることのない人生相談にもよく乗ってるから、顔は広いし慕われてもいるのよね。
 私自身、好きか嫌いかで言ったら、好きではあるんだけど、それを直接言ったら、図に乗って何をするかわからないから言いませんけどね。

 お祓いというものは、信仰心のある人には、神さまに。信仰心はなくとも漠然とした畏怖する対象に自分の心のよりどころを持っていくための儀式。効能はお祓いのための目的によって様々だけど、邪念を祓う、という点は一致しているみたい。
 今回は本人が大学に進んだ目的は何であるのかという事以外の情報が通学している間に多すぎて、変な迷いになっているという事なので、基本を明確に思い出せば解決するだろうというのがお父さんの見立て。まずその前段階として、多すぎる情報を邪念という事として、お祓いを使わせてもらおうというわけ。
「神様もハサミも使いようだよ」
 だから、お父さん…。そういうことを言わなけりゃ、まだ、まともに見えるのに。

 急な話だったので、お祓いに関しての巫女役はあたし。あたしも巫女装束を着るのは二年ぶりくらいかしら。最近はアルバイトの人にまかせて裏方にまわってたから、お祓いの方は全然やってなかったのよね。
 作法そのものは、小さい時から習っていたから、忘れたりはしないけど、久々でさすがにちょっと緊張するなあ。
 このお祓いそのものは、相談者本人の気持ちを落ち着かせるのと、相談役であるお父さんに集中させるのが目的で、お祓いが終わったら話をする場所も本殿じゃなくてうちのリビングに移動してだし、話の内容に関しては、神様とか宗教めいた方向にはしないそうだから、あたしの仕事は後でお茶を出すくらいかな。
 立ち聞きしていたわけじゃないけど、途中で両方の笑い声なんかもしてたみたいだし、良さげな雰囲気で帰って行かれました。後で聞いたところでは、元気に大学に通っているそうです。
 まあ、本人には内緒で、大したもんです、とは言っておいてあげましょう。
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