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第一章 解放
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「8分で終わらせる」
クロの頭の中ではすべての作業を終わらせるのに必要な時間は6分46秒。想定外のファクターを含めても7分44秒の予定だった。そこまで考えていても、スグルの背後に隠れていた能力は想定外が過ぎた。
次の予定は迫っていたものの、「8 分」で問題ないとして、外に係員を待機させて、そうなるわけもないと踏んでいて「8 分経ったら問答無用で次の仕事にかからせるように」と命令を下しておいて臨んだ結果であった。
「ねえ。…ちょっと、スグル。浸ってるところ悪いんだけど」
背後から、ひどく情けない声が聞こえた。
「早くおろしてえ。 この拘束、先輩の理論の塊だから、私のパワーじゃ…全然解けないのよお…!」
ミケは封印殺しのような力技や山勘で動くのが得意で、クロが使うような緻密に編み込まれた術式は大の苦手なのだ。絶対無理というわけではないが、この状況から一人で抜け出すとしたら、かなり時間がかかってしまうだろう。
壁に大の字で縫い付けられたままのミケが、涙目でジタバタと足を動かして、少女の姿のまま必死に助けを求めていた。猫の姿に戻れば簡単に解けそうなものだが、クロがそのような想定をしていないわけもなく、実際、ミケは何度も猫の姿に戻ろうと変身解除をしようとしたが、拘束の波動から変身解除キャンセルの魔法陣が出現して、縫い付けられたままになっていたというわけである。
「ああ、ごめん。えっと、これどうすればいいんだ? 磨けばいいのか?」
「磨かないで! 消えちゃうから。落っこちちゃうでしょ。逆! 逆方向に撫でる感じでマナを流して!」
なんとかミケを救出したスグルは、二人でコタツに潜り込んだ。
聖域化してしまったコタツは、入るだけで肩こりと腰痛が完全に消え去り、精神に無限の安らぎをもたらす効果が発揮されてしまっている。
「…はぁ、まったりぃ…。じゃないわよ。散々な休日だったわ。でも、これでハッキリしたわね」
ミケは猫の姿に戻り、スグルの膝の上で丸くなった。その瞳は、いつになく真剣になっている。
「あんた、もう普通の『研磨術師』には戻れないわよ。MAAの監査部が目を付けたんだから、これからもっと変なのが来るわ。…覚悟しなさいよね、主」
「…俺はただ、静かに暮らしたいだけなんだけどな」
スグルが苦笑いしながらミケの頭を撫でると、その指先から微かな光が漏れ、ミケの毛並みがダイヤモンド以上の輝きを放ち始めてしまった。
「…ああん、ちょっと、変なとこ磨かないでよ。眩しくて寝られないじゃない」
…とりあえず、平穏な休日にはなった?ようではある。
第二章に続く
クロの頭の中ではすべての作業を終わらせるのに必要な時間は6分46秒。想定外のファクターを含めても7分44秒の予定だった。そこまで考えていても、スグルの背後に隠れていた能力は想定外が過ぎた。
次の予定は迫っていたものの、「8 分」で問題ないとして、外に係員を待機させて、そうなるわけもないと踏んでいて「8 分経ったら問答無用で次の仕事にかからせるように」と命令を下しておいて臨んだ結果であった。
「ねえ。…ちょっと、スグル。浸ってるところ悪いんだけど」
背後から、ひどく情けない声が聞こえた。
「早くおろしてえ。 この拘束、先輩の理論の塊だから、私のパワーじゃ…全然解けないのよお…!」
ミケは封印殺しのような力技や山勘で動くのが得意で、クロが使うような緻密に編み込まれた術式は大の苦手なのだ。絶対無理というわけではないが、この状況から一人で抜け出すとしたら、かなり時間がかかってしまうだろう。
壁に大の字で縫い付けられたままのミケが、涙目でジタバタと足を動かして、少女の姿のまま必死に助けを求めていた。猫の姿に戻れば簡単に解けそうなものだが、クロがそのような想定をしていないわけもなく、実際、ミケは何度も猫の姿に戻ろうと変身解除をしようとしたが、拘束の波動から変身解除キャンセルの魔法陣が出現して、縫い付けられたままになっていたというわけである。
「ああ、ごめん。えっと、これどうすればいいんだ? 磨けばいいのか?」
「磨かないで! 消えちゃうから。落っこちちゃうでしょ。逆! 逆方向に撫でる感じでマナを流して!」
なんとかミケを救出したスグルは、二人でコタツに潜り込んだ。
聖域化してしまったコタツは、入るだけで肩こりと腰痛が完全に消え去り、精神に無限の安らぎをもたらす効果が発揮されてしまっている。
「…はぁ、まったりぃ…。じゃないわよ。散々な休日だったわ。でも、これでハッキリしたわね」
ミケは猫の姿に戻り、スグルの膝の上で丸くなった。その瞳は、いつになく真剣になっている。
「あんた、もう普通の『研磨術師』には戻れないわよ。MAAの監査部が目を付けたんだから、これからもっと変なのが来るわ。…覚悟しなさいよね、主」
「…俺はただ、静かに暮らしたいだけなんだけどな」
スグルが苦笑いしながらミケの頭を撫でると、その指先から微かな光が漏れ、ミケの毛並みがダイヤモンド以上の輝きを放ち始めてしまった。
「…ああん、ちょっと、変なとこ磨かないでよ。眩しくて寝られないじゃない」
…とりあえず、平穏な休日にはなった?ようではある。
第二章に続く
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