双子の駆け引き〜あなたにだけは負けたくない〜

春音優月

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「待って。和葉ちゃんだよね」

 サークル棟の階段を降りようとしたところで、誰かから声をかけられた。

 振り向くと、旭陽の弟が立っている。
 優日、だったかな。

「そうだけど。どうかした?」
「旭陽たちとごはん行かないなら、オレと行かない?」
「行かない」

 軽い感じで誘ってきたので、きっぱりと断る。
 
 だけど、別にショックを受ける様子もなく、彼は平然としていた。よく分からない人。
 この人、文学に興味あるのかな。彩羽も大概だけど、どう見ても文芸サークル入りたいってタイプには見えない。

「あなた、小説に興味あるの?」

 二年生になってからサークルに入ってきた理由が気になって、不躾ながら聞いてみる。けれど、彼は笑うだけで、何も答えなかった。やっぱり興味ないんじゃない。

「和葉ちゃんさぁ、旭陽のこと好きだよね」

 少し呆れていたら、微笑みを携えた彼がいきなり切り出した。

「どうしてそう思ったの?」

 内心動揺しつつ、必死で平静さを保つ。

 初対面の人にも分かるほど、態度に出していたつもりもない。でも、もしかしてバレバレだった?

「見てたら分かるよ。さっきの和葉ちゃん、彩羽ちゃんがうらやましくてたまらないって目してた」
「もしもそうだったとしても、あなたには関係ない」

 図星をつかれて、つい言葉がキツくなってしまう。

「まあ、そうなんだけど。もしかしたら、関係なくもないかも?」
「はぁ?」

 要領を得ないふわふわとした優日の話し方に、だんだんイライラしてきた。一体何が言いたいの?
 
「オレと手を組まない?」
「手を組むって?」
「旭陽と彩羽ちゃんを別れさせる」

 突然とんでもないことを言われ、あぜんとしてしまった。

「あなたはどうしてそんなことがしたいの?」
「彩羽ちゃんが好きなんだよね」

 特にためらう素振りもなく、優日はさらりと言った。
 ということは、彩羽目当てで文芸サークルに入ってきたのかな。

「オレは彩羽ちゃんと付き合える。和葉ちゃんは、旭陽と付き合える。みんなハッピーじゃない?」

 優日はニッと笑って、親指を立てる。
 それって、私と優日にとってはメリットがあっても、旭陽と彩羽にとっては災難なだけじゃない?
 
 旭陽と彩羽が一緒にいるのを見るのは、正直辛い。でも、優日のこともよく知らないし、彩羽を傷つけたいわけじゃない。

「やめておく」

 少し考えて、結局優日からの提案は断ることにした。

「そっかぁ、残念」

 口ではそう言いながらも、顔は笑ってるし、大して残念がってるようにも見えない。やっぱり本気じゃなかったのかな。

「あ、そうだ。連絡先教えてよ」

 思いついたように言って、優日はスマホを取り出す。
 特に断る理由もなかったので、そのまま優日と連絡先を交換する。

「気が変わったら、いつでも連絡して」

 イタズラっぽく笑って、優日は先に階段を降りていった。

 何考えてるか分からないし、信用できなさそうな人。
 私は、彼の提案に乗るつもりはない。
 だけど、わざわざサークルにまで入ってきたんだから、このままあっさり引き下がりそうにもないよね。何もなければいいけど、一悶着ありそうな予感。
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