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2-1 妹は夢も奪っていく
優日が入ってきた、次のサークルの日。
少し早めに部室に来たら、優日と女の先輩三人が楽しそうに盛り上がっていた。この前は失笑されてたのに、もう仲良くなっている。よく分からない人だけど、コミュ力は高いのかもしれない。
優日たちを横目にしながら、彼らから少し離れた席に座る。
この前は全く集中出来なかったけど、今日は違う。ギリギリまで荷物を入れている大きな茶色いカバンから取り出したパソコンを開き、執筆を始める。
今書いているのは、次のコンテストに応募するための青春群像劇。プロットを先週完成させて、本文を書き始めたばかりだった。
ちょうど毎年応募しているコンテストの結果が先週発表されていて、私はいつものように落選。毎年のこととはいえ、自分なりの自信作を応募しているわけだから、やっぱり落選は落ち込む。
先週は失恋に落選も重なり、ほとんど執筆が出来なかったけど、いつまでも落ち込んでばかりもいられない。そろそろ執筆を始めないと、次に応募する予定のコンテストの〆切に間に合わなくなってしまうから。
今は趣味として小説を書いているけど、将来は商業作家になるのが私の夢。それが無理なら、書くことを仕事にしたい。夢を叶えるため、高校生の時からほぼ毎日のように小説を書いていた。
部室に人が増えてきてからも、ひたすらキーボードを叩き続ける。そうしているうちに、気がついたら一時間が過ぎていた。
画面から視線を外したタイミングで、トントンと肩を叩かれた。
「執筆中にごめんね。ちょっと聞きたいことがあって」
「そろそろ休憩しようと思ってたところだったから。何かあった?」
キーボードから手を下ろし、友人に笑いかける。
「和葉、明日提出の国際関係論のレポートやった? 先週休んじゃって、分かんないとこあるんだけど」
「もうレポート終わってるから、ノート貸そうか?」
カバンから国際関係論のノートを取り出し、友人に手渡す。
「わ。助かる。ありがとう」
友人は手を合わせて喜び、早速ノートを写していた。
役に立てて良かった。明日までのレポート、間に合うといいね。
心の中でそっと声援を送っていたら、別の友人に肩を軽くゆすられた。
「和葉~、私も民俗学の課題で詰まってる」
「そこはね――」
民俗学のノートを見せながら、下がり眉だった友人の顔がどんどん明るくなっていく。
小説ではまだ良い結果が出せていない私だけど、同じ授業を受けている友人やサークルの友人からはわりと頼りにされていた。
授業はサボらずに毎回出席しているし、レポートもきっちり提出しているからかな。勉強をして知識を広げるのは好きだし、誰かに頼られて悪い気はしない。
「和葉って頭良いし、色んなこと知ってるよね」
「和葉ちゃんは頼りにされてるんだ。オレも勉強教えてもらおうかな」
ヘラリと笑いながら、優日まで話に入ってきた。
普通に会話に入ってくるし、やっぱりノリが軽いよね。
「今年は、経済学部の子が受ける授業はとってないよ」
優日を適当にあしらってから、頼ってくれた友人との話に戻る。
「わたしも同じ授業とってるんだけどな~」
彩羽が近づいてきて、上から私たちをのぞき込む。
「彩羽は真面目に授業聞いてないでしょ」
友人は顔を上げ、笑いながら彩羽に言葉を返す。
「え~。そんなことないもん」
彩羽がムッと頬をふくらませてみせたけど、どんな顔をしても腹が立つくらいに可愛い。
毎回テスト前になると『ヤバい~』『単位落とすかも』とか騒いでるのに、結局なんだかんだ単位もらえてるのを私は知ってるよ。
「テスト前に俺のノート借りにきてたよね」
読んでいた本から顔を上げ、旭陽が呆れたように言う。
「えへへ。いつも頼りにしてまーす」
相変わらず語尾にハートが付いているみたいな話し方で、彩羽が可愛く甘える。そうしたら、旭陽も仕方ないな、みたいに笑った。
いつもと変わらないやりとり。だけど二人が付き合ってるって知ってるからか、こんな何気ないやりとりだけでも心にグサグサくる。私も彩羽みたいに甘えられたら、旭陽に好きになってもらえたのかな。
彩羽はいつだって誰かに助けてもらえるし、テキトーな生き方をしても憎まれない。彩羽は『そういう子』だって、みんなに思われてるから。
「双子なのに全然違うよね」
またいつもの『言われたくない言葉』が投げかけられる。
可愛くて、愛嬌があって、要領の良い彩羽。
とっつきにくくて、可愛くなくて、他人に甘えられない私。
どちらが生きやすいかなんて、考えなくても明確だ。
「それ、オレもよく言われる。な、旭陽」
旭陽をチラリと見て、優日が問いかける。
「うん」
さらっと答えて、読書に戻る旭陽。
優日なんてネタにしてるくらいだし、優日と旭陽は大して似ていないことを気にしていなさそう。というよりも、私ぐらいだよね。いちいち双子の妹と自分を比べて、劣等感を覚えているのは。
彩羽は彩羽、私は私。そう思って、わりきって生きていけたらいいのに。
モヤモヤを心の奥に封印して、執筆に戻る。
いちいち心を乱されないようにしないと。ここでつまづいてたら、ますます夢が遠ざかっていく。そう自分に言い聞かせ、平常心を保とうとした。
少し早めに部室に来たら、優日と女の先輩三人が楽しそうに盛り上がっていた。この前は失笑されてたのに、もう仲良くなっている。よく分からない人だけど、コミュ力は高いのかもしれない。
優日たちを横目にしながら、彼らから少し離れた席に座る。
この前は全く集中出来なかったけど、今日は違う。ギリギリまで荷物を入れている大きな茶色いカバンから取り出したパソコンを開き、執筆を始める。
今書いているのは、次のコンテストに応募するための青春群像劇。プロットを先週完成させて、本文を書き始めたばかりだった。
ちょうど毎年応募しているコンテストの結果が先週発表されていて、私はいつものように落選。毎年のこととはいえ、自分なりの自信作を応募しているわけだから、やっぱり落選は落ち込む。
先週は失恋に落選も重なり、ほとんど執筆が出来なかったけど、いつまでも落ち込んでばかりもいられない。そろそろ執筆を始めないと、次に応募する予定のコンテストの〆切に間に合わなくなってしまうから。
今は趣味として小説を書いているけど、将来は商業作家になるのが私の夢。それが無理なら、書くことを仕事にしたい。夢を叶えるため、高校生の時からほぼ毎日のように小説を書いていた。
部室に人が増えてきてからも、ひたすらキーボードを叩き続ける。そうしているうちに、気がついたら一時間が過ぎていた。
画面から視線を外したタイミングで、トントンと肩を叩かれた。
「執筆中にごめんね。ちょっと聞きたいことがあって」
「そろそろ休憩しようと思ってたところだったから。何かあった?」
キーボードから手を下ろし、友人に笑いかける。
「和葉、明日提出の国際関係論のレポートやった? 先週休んじゃって、分かんないとこあるんだけど」
「もうレポート終わってるから、ノート貸そうか?」
カバンから国際関係論のノートを取り出し、友人に手渡す。
「わ。助かる。ありがとう」
友人は手を合わせて喜び、早速ノートを写していた。
役に立てて良かった。明日までのレポート、間に合うといいね。
心の中でそっと声援を送っていたら、別の友人に肩を軽くゆすられた。
「和葉~、私も民俗学の課題で詰まってる」
「そこはね――」
民俗学のノートを見せながら、下がり眉だった友人の顔がどんどん明るくなっていく。
小説ではまだ良い結果が出せていない私だけど、同じ授業を受けている友人やサークルの友人からはわりと頼りにされていた。
授業はサボらずに毎回出席しているし、レポートもきっちり提出しているからかな。勉強をして知識を広げるのは好きだし、誰かに頼られて悪い気はしない。
「和葉って頭良いし、色んなこと知ってるよね」
「和葉ちゃんは頼りにされてるんだ。オレも勉強教えてもらおうかな」
ヘラリと笑いながら、優日まで話に入ってきた。
普通に会話に入ってくるし、やっぱりノリが軽いよね。
「今年は、経済学部の子が受ける授業はとってないよ」
優日を適当にあしらってから、頼ってくれた友人との話に戻る。
「わたしも同じ授業とってるんだけどな~」
彩羽が近づいてきて、上から私たちをのぞき込む。
「彩羽は真面目に授業聞いてないでしょ」
友人は顔を上げ、笑いながら彩羽に言葉を返す。
「え~。そんなことないもん」
彩羽がムッと頬をふくらませてみせたけど、どんな顔をしても腹が立つくらいに可愛い。
毎回テスト前になると『ヤバい~』『単位落とすかも』とか騒いでるのに、結局なんだかんだ単位もらえてるのを私は知ってるよ。
「テスト前に俺のノート借りにきてたよね」
読んでいた本から顔を上げ、旭陽が呆れたように言う。
「えへへ。いつも頼りにしてまーす」
相変わらず語尾にハートが付いているみたいな話し方で、彩羽が可愛く甘える。そうしたら、旭陽も仕方ないな、みたいに笑った。
いつもと変わらないやりとり。だけど二人が付き合ってるって知ってるからか、こんな何気ないやりとりだけでも心にグサグサくる。私も彩羽みたいに甘えられたら、旭陽に好きになってもらえたのかな。
彩羽はいつだって誰かに助けてもらえるし、テキトーな生き方をしても憎まれない。彩羽は『そういう子』だって、みんなに思われてるから。
「双子なのに全然違うよね」
またいつもの『言われたくない言葉』が投げかけられる。
可愛くて、愛嬌があって、要領の良い彩羽。
とっつきにくくて、可愛くなくて、他人に甘えられない私。
どちらが生きやすいかなんて、考えなくても明確だ。
「それ、オレもよく言われる。な、旭陽」
旭陽をチラリと見て、優日が問いかける。
「うん」
さらっと答えて、読書に戻る旭陽。
優日なんてネタにしてるくらいだし、優日と旭陽は大して似ていないことを気にしていなさそう。というよりも、私ぐらいだよね。いちいち双子の妹と自分を比べて、劣等感を覚えているのは。
彩羽は彩羽、私は私。そう思って、わりきって生きていけたらいいのに。
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