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4-1 あの子も私と同じ
優日と出かけた二週間後。二限と四限の合間に、旭陽を大学の図書館の中庭に呼び出した。この前読んだ新刊の話がしたいと言ったら、旭陽はあっさりときてくれた。
「おまたせ」
声をかけてから、大きな木の下のベンチで本を読んでいた旭陽の隣に腰かける。
「彩羽は?」
「授業受けてる」
「そっか」
聞いておいてなんだけど、火曜日の三限は旭陽は取ってなくて、彩羽が受講していることはすでに知っている。だからこそ、この時間に呼び出したわけだし。
サークルが終わった後や休日に二人きりで会いたいと言ったら、さすがに旭陽にも彩羽にも不審がられてしまう。だけど、授業の合間なら、私と旭陽の関係性の場合は二人で会っていてもそこまで不自然じゃないはず。
あれから優日と何回か打ち合わせして、この時間を選んだんだ。ちなみに優日の方は彩羽と同じ授業を一週間に二回受講してるから、そこから攻めていくみたい。
「彩羽には悪いけど、旭陽とゆっくり話したかったから良かった」
勇気を出して、旭陽との距離をわずかに詰める。
これも、優日と練習したこと。
スキンシップは手っ取り早く意識させるのに良いけど、旭陽は彼女持ちなわけだから、警戒されないように。いきなりベタベタしたり、やり過ぎたりしないようにって。
練習の段階で、事故で優日にドキドキしたりしちゃって、数回中断しちゃったけど――今はそんなこと思い返してる場合じゃなかったんだ。
ゆるく外に巻いた髪に触れ、旭陽に笑いかける。
「彩羽とは、本の話が出来ないからね。トキ先生の本をすすめてみたけど、趣味じゃないって」
旭陽はかすかに微笑み、そんな風に返してきた。
全然伝わってないみたい。まあ、今までも私の気持ちに全く気づいていなかった旭陽だし、もっとストレートに言わないと気づかないのかな。
「彩羽は恋愛小説以外読まないから」
少し出鼻をくじかれた気分になりつつ、会話を続ける。
トキ先生の作品にも恋愛要素はわりと入っているけど、恋愛が主題ではない。どちらかというと、恋愛以外の大きなテーマがあって、あくまで恋愛はおまけという扱いが先生の作品では多かった。
「言ってたね。トキ先生の本を読まないなんて、人生損してるよね」
軽く頷いてから、旭陽は穏やかに笑う。
旭陽のこの表情が、すごく好き。旭陽は自分からたくさん話すタイプじゃないし、無理に何かを聞き出したりもしない。優日のような積極性はなかったけど、旭陽はいつも穏やかに話を聞いてくれて、トキ先生の話をしている時は普段よりも少しだけ饒舌になる旭陽が好きだった。
「本当。恋愛小説でないからこそ、トキ先生の描く恋愛は尊いのに」
今日旭陽を誘った目的も忘れ、それからしばらくトキ先生の新刊の話で盛り上がった。
三限の真っ只中の中庭には、他に人も見当たらない。
散歩している人を見かけるぐらいで、あとはそよそよとふく風がわずかに木を揺らすだけ。
四月下旬の風はさわやかで心地良く、とても穏やかな時間だった。やっぱり旭陽と話すのは楽しい。ずっとこの時間が続けばいいのに。
なんて思っていても、楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、いつのまにか三限が終わるまであと十分となっていた。
「おまたせ」
声をかけてから、大きな木の下のベンチで本を読んでいた旭陽の隣に腰かける。
「彩羽は?」
「授業受けてる」
「そっか」
聞いておいてなんだけど、火曜日の三限は旭陽は取ってなくて、彩羽が受講していることはすでに知っている。だからこそ、この時間に呼び出したわけだし。
サークルが終わった後や休日に二人きりで会いたいと言ったら、さすがに旭陽にも彩羽にも不審がられてしまう。だけど、授業の合間なら、私と旭陽の関係性の場合は二人で会っていてもそこまで不自然じゃないはず。
あれから優日と何回か打ち合わせして、この時間を選んだんだ。ちなみに優日の方は彩羽と同じ授業を一週間に二回受講してるから、そこから攻めていくみたい。
「彩羽には悪いけど、旭陽とゆっくり話したかったから良かった」
勇気を出して、旭陽との距離をわずかに詰める。
これも、優日と練習したこと。
スキンシップは手っ取り早く意識させるのに良いけど、旭陽は彼女持ちなわけだから、警戒されないように。いきなりベタベタしたり、やり過ぎたりしないようにって。
練習の段階で、事故で優日にドキドキしたりしちゃって、数回中断しちゃったけど――今はそんなこと思い返してる場合じゃなかったんだ。
ゆるく外に巻いた髪に触れ、旭陽に笑いかける。
「彩羽とは、本の話が出来ないからね。トキ先生の本をすすめてみたけど、趣味じゃないって」
旭陽はかすかに微笑み、そんな風に返してきた。
全然伝わってないみたい。まあ、今までも私の気持ちに全く気づいていなかった旭陽だし、もっとストレートに言わないと気づかないのかな。
「彩羽は恋愛小説以外読まないから」
少し出鼻をくじかれた気分になりつつ、会話を続ける。
トキ先生の作品にも恋愛要素はわりと入っているけど、恋愛が主題ではない。どちらかというと、恋愛以外の大きなテーマがあって、あくまで恋愛はおまけという扱いが先生の作品では多かった。
「言ってたね。トキ先生の本を読まないなんて、人生損してるよね」
軽く頷いてから、旭陽は穏やかに笑う。
旭陽のこの表情が、すごく好き。旭陽は自分からたくさん話すタイプじゃないし、無理に何かを聞き出したりもしない。優日のような積極性はなかったけど、旭陽はいつも穏やかに話を聞いてくれて、トキ先生の話をしている時は普段よりも少しだけ饒舌になる旭陽が好きだった。
「本当。恋愛小説でないからこそ、トキ先生の描く恋愛は尊いのに」
今日旭陽を誘った目的も忘れ、それからしばらくトキ先生の新刊の話で盛り上がった。
三限の真っ只中の中庭には、他に人も見当たらない。
散歩している人を見かけるぐらいで、あとはそよそよとふく風がわずかに木を揺らすだけ。
四月下旬の風はさわやかで心地良く、とても穏やかな時間だった。やっぱり旭陽と話すのは楽しい。ずっとこの時間が続けばいいのに。
なんて思っていても、楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、いつのまにか三限が終わるまであと十分となっていた。
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