双子の駆け引き〜あなたにだけは負けたくない〜

春音優月

文字の大きさ
13 / 20

4-1 あの子も私と同じ

 優日と出かけた二週間後。二限と四限の合間に、旭陽を大学の図書館の中庭に呼び出した。この前読んだ新刊の話がしたいと言ったら、旭陽はあっさりときてくれた。

「おまたせ」

 声をかけてから、大きな木の下のベンチで本を読んでいた旭陽の隣に腰かける。

「彩羽は?」
「授業受けてる」
「そっか」

 聞いておいてなんだけど、火曜日の三限は旭陽は取ってなくて、彩羽が受講していることはすでに知っている。だからこそ、この時間に呼び出したわけだし。
 サークルが終わった後や休日に二人きりで会いたいと言ったら、さすがに旭陽にも彩羽にも不審がられてしまう。だけど、授業の合間なら、私と旭陽の関係性の場合は二人で会っていてもそこまで不自然じゃないはず。

 あれから優日と何回か打ち合わせして、この時間を選んだんだ。ちなみに優日の方は彩羽と同じ授業を一週間に二回受講してるから、そこから攻めていくみたい。

「彩羽には悪いけど、旭陽とゆっくり話したかったから良かった」

 勇気を出して、旭陽との距離をわずかに詰める。
 
 これも、優日と練習したこと。
 スキンシップは手っ取り早く意識させるのに良いけど、旭陽は彼女持ちなわけだから、警戒されないように。いきなりベタベタしたり、やり過ぎたりしないようにって。
 練習の段階で、事故で優日にドキドキしたりしちゃって、数回中断しちゃったけど――今はそんなこと思い返してる場合じゃなかったんだ。

 ゆるく外に巻いた髪に触れ、旭陽に笑いかける。
 
「彩羽とは、本の話が出来ないからね。トキ先生の本をすすめてみたけど、趣味じゃないって」

 旭陽はかすかに微笑み、そんな風に返してきた。
 
 全然伝わってないみたい。まあ、今までも私の気持ちに全く気づいていなかった旭陽だし、もっとストレートに言わないと気づかないのかな。

「彩羽は恋愛小説以外読まないから」

 少し出鼻をくじかれた気分になりつつ、会話を続ける。
 トキ先生の作品にも恋愛要素はわりと入っているけど、恋愛が主題ではない。どちらかというと、恋愛以外の大きなテーマがあって、あくまで恋愛はおまけという扱いが先生の作品では多かった。

「言ってたね。トキ先生の本を読まないなんて、人生損してるよね」

 軽く頷いてから、旭陽は穏やかに笑う。
 旭陽のこの表情が、すごく好き。旭陽は自分からたくさん話すタイプじゃないし、無理に何かを聞き出したりもしない。優日のような積極性はなかったけど、旭陽はいつも穏やかに話を聞いてくれて、トキ先生の話をしている時は普段よりも少しだけ饒舌になる旭陽が好きだった。
 
「本当。恋愛小説でないからこそ、トキ先生の描く恋愛は尊いのに」

 今日旭陽を誘った目的も忘れ、それからしばらくトキ先生の新刊の話で盛り上がった。

 三限の真っ只中の中庭には、他に人も見当たらない。
 散歩している人を見かけるぐらいで、あとはそよそよとふく風がわずかに木を揺らすだけ。
 
 四月下旬の風はさわやかで心地良く、とても穏やかな時間だった。やっぱり旭陽と話すのは楽しい。ずっとこの時間が続けばいいのに。
 なんて思っていても、楽しい時間が過ぎるのはあっという間で、いつのまにか三限が終わるまであと十分となっていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。