双子の駆け引き〜あなたにだけは負けたくない〜

春音優月

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「えっ。うそ」
 
 そのまま唇が重なるのを待っていた私の耳に誰かの高い声が届き、とっさに目を開ける。
 
 すると、そこにはあんぐりと口を開けている彩羽がいた。驚き顔の彩羽の表情は、すぐにニンマリとしたものに変わっていく。

「和葉と優日、やっぱり付き合ってたんだ~。も~言ってよ~」
「違うって。そういう関係じゃないから」

 反射的に否定してしまった。優日がちょっとショックを受けているのが目に入り、後悔する。否定しない方が良かったかな。
 
「さすがにごまかせないよ~? 今キスしようとしてたよね」
「してない」

 今さら認めるわけにもいかず、彩羽の尋問を否定し続ける。

「照れなくてもいいのに。あ、二人も付き合い始めたなら、今度ダブルデートしようよ」

 もう彩羽の中では私たちは付き合っていることになっているみたいで、楽しそうに想像を膨らませている。

 ダブルデート……?
 好きだった人と妹が仲良くしてるのをわざわざ見るために、一緒に出かけろって言うの? どこまで私をバカにしたら気が済むの。
 
「付き合ってないって言ってるでしょ。恋愛のことしか頭にないよね。簡単に付き合ったり別れたりする彩羽と一緒にしないで」

 言ってしまった後で、ハッとした。
 彩羽の表情がみるみるうちに曇り、唇をプルプル震わせ始めたから。
 
 後で反省したとしても、言葉にしてしまったものはもう取り消せない。

「そんな風に思ってたんだ……」

 彩羽は唇を噛み締め、大きな瞳に涙をいっぱい溜める。
 
「みんな、わたしがいい加減で頭の軽い女だと思ってる。和葉もみんなと同じなんだね」
「彩羽。あの、さっきのは……」

 謝ろうとしたけど、彩羽はそうさせてくれなかった。
 彩羽は涙の溜まった瞳で、キッと私をにらむ。

「だったら、自分はどうなの? 旭陽とこっそり会ってるよね。もし妹の彼氏を盗ろうとしてるのなら、サイテーだよ。おまけに、優日までたぶらかして」
「彩羽ちゃん、落ち着いて。誤解だよ」
「優日は黙ってて! 和葉と話してるの!」

 見かねて優日が仲裁しようとしてくれたけど、余計に彩羽の怒りを増幅させただけだった。

「ねぇ、どうなの? 答えて、和葉」

 いつもニコニコしている彩羽と同一人物だとは思えないくらいの勢いで、彩羽が私に詰め寄る。

「だったら、言わせてもらうけど」

 スーッと息を吸ってから、今まで溜め込んでいた不満を吐き出す。

「私が旭陽を好きだって知ってたのに、旭陽と付き合ったよね」
「知ってたよ」

 悪びれもせず、彩羽はあっさりと白状した。
 やっぱり……!

「旭陽が好きなのって聞いたら、和葉は否定したよね。そんなに旭陽が好きなら、あの時どうして本当のことを言ってくれなかったの。わたしは和葉に何でも話してきたのに、和葉はわたしに何も言ってくれない」

 彩羽を責めようと思っていたのに。
 何も返す言葉がなかった。
 
「もういいよ。そんなにわたしが嫌いなんだね」

 静かに言って、彩羽はくるりと背を向ける。そして、大学の正門の方に走っていってしまう。

「彩羽!」

 名前を呼んでも、彩羽は振り向かない。
 彩羽……。

「和葉ちゃん、大丈夫?」

 しばらく立ち尽くしていたら、優日から肩をさすられた。

 さっきまでは呼び捨てだったのに、もう呼び方が元に戻っている。

 優日とは何でもないって言ったから、距離を置かれたのかな。それとも、彩羽との言い争いなんて見せちゃったから、軽蔑されたのかもしれない。

 自業自得だけど、優日との距離を感じて、寂しさを覚えてしまう。でも、今は……。

「今日、サークル休むね。彩羽を追いかけないと」
「オレも行こうか?」

 優日が心配そうに私の顔を覗き込む。
 私は、無言で首を横に振った。

「私が話さないといけないから」

 優日の気持ちは嬉しいけど、これは私がケジメをつけないといけないこと。

「何かあったら、すぐに連絡して」

 優日は目を見つめ、私の右手を両手でぎゅっと握りしめた。
 
「ありがとう、優日」

 優日の優しい気持ちが伝わってきて、心が暖かくなった。優日がいてくれるから、私は私でいられる。強くいられるんだよ。

 最後にもう一度頷いてから、私は優日から離れる。
 そして、彩羽を追いかけた。
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