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嫌われ者
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しおりを挟むお日さまの日差しが差し込んできて、朝目を覚ました。
僕の名前は、佐藤あおい。
昔から体力がなくて、その上頭も悪い…。まさにイイトコなしのダメ人間。
だけど、そんな僕には唯一自慢できるお兄ちゃん的存在の人がいる。
「あおい、おはよう」
「お、おはよう!」
この人がそう…。僕は慌てて返事を返す。そしたら、にこって微笑んでくれた。
優しい声に、優しい表情…。その落ち着いた感じが紳士っていう言葉が似合う。
彼の名前は、新條 ゆう。一つ年上で、本当性格が良くて、容姿だってそこらのモデルよりズバ抜けてかっこいいと僕は思う。
おまけに何でもこなすし、完璧って言った方がいいかもしれない。
それとは、また別に僕はチビで容姿だって言葉もでないくらい残念だ。こんな形で生まれてきたんだから今さら恨んでもしょうがないことだと諦めている。だから、平気。
ちなみに僕とゆうは、咲紅学園の生徒で今いるところは、2年生が使用している寮でゆうの部屋。
僕は、こうやって毎日ゆうの部屋に泊めてもらっている。荷物だってほとんどこっちに置いてある。
ゆうは、成績優秀者で部屋は一人。この学園は、優秀な生徒などには一人部屋が用意されている。
僕だって、自分の部屋は一応ある。けど、僕はもちろん優秀でも何でもないから一人部屋ではない。同室者がいてその人は、ものすごく僕を嫌っている。
というか…その人以外にも、ほぼ全校生徒に嫌われてるって言った方が分かりやすいかもしれない。
クラスの人達からは、罵声を浴びせられたり、机に悪口を書かれたりと…いじめに合っている。
さすがにこのいじめのことは、ゆうは知らないと思う。というか、知ってほしくない…。
もし、知ったらゆうは優しいから、僕のことを心配してくれる。迷惑なんてかけたくないし…第一、嫌われたくない。またそれとは違った方向にいじめられている僕を軽蔑するかも。
ゆうまで離れていってしまったら、もう僕には孤独という道しか残ってない。
「そろそろ食堂行って朝食をすませようか」
準備が終わったみたいなゆうは、制服を着こなし、いつでも出れる状態だった。
「う、うん。わかった!ちょっと待って」
それから僕は、大慌てで支度をした。
「あ、眼鏡はどうしたの?」
いつも眼鏡をかけてるはずの僕がしていないことに気づいたゆうは、そう言った。
「え?あ…その…。じ、実は眼鏡壊れちゃったから、今日はこれで…」
眼鏡なしで頑張るしかない。うっかり、地面に落とし踏んづけて壊してしまった。
「……そんなのダメに決まってるでしょ?」
「え…?」
ゾクッと寒気のようなものが走り、不覚にも一瞬だけ、ゆうが怖く見えてしまった。
「それだったら、何も見えないでしょ?俺、あおいのお母さんから予備の眼鏡預かってるからそれ使って」
今度は、いつも通りのゆうに戻った。
「よ、予備の預かってくれてるの…?」
「そうだよ。俺の机に置いてあるからそれ取っておいで」
それなら、とても助かる。
「ありがとう!」
言われた通り、ゆうの机には僕が昨日まで使っていた同じ瓶底眼鏡が置かれてあった。それをすぐさまかけた。
何で僕…、あの時ゆうが一瞬だけ怖く見えたんだろ…。不思議に思いつつも、ゆうがいる所に戻った。
実は、ものすごく目が悪くてこういうレンズが厚いものじゃないとしっくりこなくてボヤける。周りからみたら、地味でダサい。
コンタクトにしようと一度は思ったけどゆうにそれはオススメしないと言われ、ずっと、こんな感じの眼鏡にお世話になっているのだ。
それに、なんかコンタクトって怖くて挑戦できる気がしない。
僕は、再度お礼をして一緒に食堂に向かった。
食堂に着いて、デカイ扉みたいのを開けると……
「キャー!!新條様、今日もカッコいいです!!」
「てか、またあのダサいのいるし」
「新條様に付きまとうな!」
黄色い声の中から、僕に向けての罵声が聞こえた。ちなみにこの咲紅学園は、男子校である。
当たり前に男子しかいないせいか、恋愛対象も同性になってしまうんだって…。そんでもって、ゆうは、この学園じゃ有名で人気者。
だから皆、その人気者とこんな取り柄もない僕が隣にいることを許さない。
「あんなのは、気にしなくてもいいからね?ほら、行こう」
「う、うん…」
相変わらず、ゆうは優しい…。人気が出るのもわかる気がする。
「メニュー何にするか決まった?」
とりあえず、空いているところに座ってゆうが僕に問いかけた。
「う、うん。僕は、サラダで…」
僕は、いつも朝はサラダしか食べない。
「わかった。じゃあ、注文するね」
ゆうは、テーブルに置かれてるパネルをタッチして僕の分まで注文してくれた。ここの注文の仕方は、豪華なことにタッチパネル式で、そう決まっている。
そしたら、早くも注文したものが運ばれてきた。
「お待たせいたしました。こちらがご注文されたサラダです」
ご丁寧に若いウェイターのお兄さんが僕の目の前に置いてくれた。
「い、いつも…ありがとうございます…」
僕は、ペコリと頭を下げお礼を言った。
ウェイターさんは、すごいや。誰に対しても平等で優しく接してくれる。そんなことを考えていたら、本日2回目の甲高い声が鳴り響いた。
「キャー!!生徒会よ」
「美しすぎます!!」
「抱いてくださーい!!」
あちこちでそう言った言葉が聞こえてくる。
…せ、生徒会…?僕が一番、恐れている集団だ。
この男子校では、当たり前に人気があって、親衛隊が百越えって聞いたことがあるくらい慕われている。
この学園のリーダーの位置にいて、生徒会メンバー全員お金持ち。
いつも退屈だからと言って、よくターゲットを決めては、遊んで楽しんでいる。
その遊びは、もちろん……いじめ。そして僕は、そのターゲットになってしまった。
ここにいる生徒のほとんどが生徒会のいうことをきく。逆らう人なんて、いないと思う。
「おい、神影。あっちにあのダサい根暗くんがいるぜ?」
「はっ?庶民の分際で、のうのうと食事してやがる」
生徒会の皆が僕を見ながら怪しくクスクス笑う。別に僕は、なんて言われようがどうだっていいんだ。
…ただ、暴力うけるより、まだマシだ。言葉だけなら痛くもかゆくもない。全然…平気。
気にせずにさっき注文したサラダを一口食べようとした時だった。
ドンッ
ガタンッ
僕達の近くまでやってきた生徒会は、テーブルを思いきり蹴った。その拍子に、上にのっていた僕のサラダが無惨にも床に落ちてしまった。
「おら、どけよ。根暗」
テーブルを蹴ったのは、会長だった。天山 神影。2年生の生徒会長。
「ゆうもおかしいよ?こんな幼なじみと食事なんかしちゃってさ」
次に会計。チャラ男で有名な來城 祥がゆうにそうを言った。
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