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嫌われ者
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しおりを挟む【坂野冬馬 side】
俺は、咲紅学園の風紀委員長をやっている坂野 冬馬。
いつものように、校舎内を見回りしている。
ちっ、めんどくせー。別にこの時間帯で、誰もヤってるとかないだろ。
ちなみにこの咲紅学園は、男子校でそれなのに男同士で性的な関係を持っている奴らが多い。
学園の風紀を乱す者を防止しないといけない。
渡り廊下を歩いていたら、すると
「ん?」
遠くの方で誰かがトイレに入って行った人影が見えた。
…たく、なんだ?俺の仕事増やすなよ。今は、授業中だろ。授業に参加しないとはますます怪しいな。当然、風紀委員長である以上、風紀を乱す者は見過ごせない。
俺は、まっすぐ一直線にそのトイレに向かう。
さっそく、そのトイレの中に入った。
「―――おい。そこで何をしている?」
学園のルールに反するものは、どんな奴であろうと決して逃さない。
「え…?」
俺は、目を見開いた。
そこには、美少女…いや、美少年がいた。
一瞬、呼吸を忘れてた。
衝撃的だった。 あまりの美しさに、可愛らしさに一瞬にして心を奪われた。生まれて初めて心から美しいと思えるものを見たと言っても過言ではないだろう。
こんなやついたか…? しかも、制服のシャツがなぜか濡れていて、ピンク色をした乳首が透けていた。
ゴクンと、不覚にも息を呑んだ。おまけに、泣きそうな顔で目が潤んでいた。
「ご、ごめんな…さい。今、すぐ出ていきま…す」
美少年の可愛い唇から発せられた声は、透き通っていて思わず聞き入ってしまった。
おっと、いけない。
「待て。質問に答えてもらおうか?」
「え…?」
俺は、自然を装い、もっと話したいので呼び止め時間を稼いだ。
「今は、授業中だぞ?校則違反だ。なぜこんなとこにいて、おまけに制服が濡れているのか説明しろ」
たくっ。エロいなその格好。いくらこの俺でも動揺してしまうほどだ。
「え、っと…その、花壇に水をあげていたら、間違えて自分に…」
なにその可愛い表情。あー、また心を乱されている。おかしいな。
「なるほど。それで制服が濡れているのか。でもなぜこんな時間に出歩いている?」
不良には到底見えないし、サボりそうな感じには見えない。
「あ、ぼ、僕は、Zクラスなので…」
耳を疑うような誰もが予想もしないありえない発言をしやがった。
「は?うそだろ」
この容姿だと確実にSクラスだろ。俺をばかにしているのか?もっと、ましな嘘をつけばいいものの、そんなわかりやすいのだったらバレバレだ。俺には通用しない。
しかし、意味がわからないような戸惑った反応を見せた。
本当に…Zクラスなのか?いやいや、ありえん。
「あ、の?」
首を傾けて、潤んだ瞳でこっちを見ている。身長差がありすぎるせいか自然と上目遣いだし。
「チッ。しょうもない嘘つかないで正直に言え」
そして、俺の嫁に来い…って違う違う!なぜか自分が壊れ始めてる。
「ほ、本当に…Zクラスです…」
眉が八の字なり困った顔をしている。嘘を言っていない様子。声はものすごく震えていた。
…怯えてる?俺が怖いのか。そんな態度をとられることは俺自身初めてだった。
それよりZクラスというのは、信じがたい。けど、嘘をつくような奴には見えないのも本当。
「じゃあ、名前は」
質問を変えることにした。Zクラスが嘘だとしても名前がわかればすぐわかることだからな。
でも、この美少年の口からまたとんでもない発言を耳にした。
「さ、佐藤…あおいです」
そう言ったと同時に、顔をうつむけた。俺は、驚きのあまり目を見開いた。
さ、佐藤あおいだと…?
はっ?また何の冗談を。
佐藤あおいは、学園で有名人だ。誰もが知っている。もちろん悪い意味の方で。しかし、俺が知ってる佐藤あおいは、こんな可愛い奴ではない。そいつは、新條ゆうをつきまとうストーカーと、聞いたことがある。
嫌われ者だ。
「証拠は?」
佐藤あおいは、この学園で一人しかいない。顔が全然違うけど、身長とか華奢のところは問題児にそっくり。
「しょ、証拠?」
「そうだな。学生証を出せ」
もう、これが最終手段だな。最初からそうすれば良かったと思った。俺は、早く出せと、手を前に出して催促する。
「は、はい…。これです」
ポケットから震えながら出しおそるおそる俺に渡した。
「…確認する」
すぐさま渡された学生証を開いて確認した。
「佐藤あおい。1年Zクラス…」
写真に写っていたのはやはり、嫌われ者の佐藤あおいだった。
嘘だろ…?
「おい眼鏡は?」
「こ、これですか … ?さっき拭いてたんです」
そう言ったら、ダサい眼鏡を出してそれをかけた。
なるほど。辻褄があった。今、眼鏡をかけたこいつは俺が知っている“佐藤あおい”だった。
…素顔やばくねぇか。ギャップがありすぎる。
俺は、しばらく放心状態になった。
「あ、あの。迷惑かけて本当にごめんなさい。それじゃあ、僕急いでるんで、これで失礼します」
頭を下げて、この場を立ち去ろうとする佐藤あおいの腕を無意識に掴んだ。
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